close

2019-07-04

【ボクシング】王者ブラントが公開練習 「ムラタのパンチは私に当たらない」

12日、大阪市のエディオンアリーナ大阪第1競技場で行われるWBA世界ミドル級タイトルマッチで、前チャンピオンの村田諒太(帝拳)との再戦に臨むチャンピオン、ロブ・ブラント(アメリカ)が4日、東京都内の帝拳ジムで練習を公開した。昨年10月、村田に勝って世界王者となったブラントは、すでに初防衛戦もこなしており、その表情、コメントには自信がうかがえた。

写真上=笑顔で報道陣の取材に応えたブラント

「今日は私のためにたくさんの記者が集まってくれてありがとう。まずは私のほうからあいさつしましょうか?」

 笑顔を浮かべ、テナーボイスの軽快な口調でしゃべり始める。その表情には余裕も見えるのだが、わずかな疲労の影もほの見えた。試合まで1週間ちょっとという時期も影響しているのだろうか。それとも、心身ともまだ戸惑いから抜け出していないのかもしれない。「環境にフィットするために早めに来日してよかったと思う」と語ったものの、乾燥しきった砂漠の町ラスベガスから、雨が続いて湿度の高い東京に来ているのだ。

 しかし、会見ではチャンピオンらしく、雄弁なコメントに終始した。

「高地トレーニングでスタミナ強化を図ったし、ムラタの戦法に対応するテクニックも身につけてきた」というブラントの傍らで、元世界ライトヘビー級チャンピオンのトレーナー、エディ・ムスタファ・ムハマド氏は「明日でも戦える」とうそぶいた。

 ブラントの言う高地とは、ラスベガスの西にそびえる標高3600メートル超のチャールストン山とその周辺。「前回はハイペースな戦いだったが、今回はそれ以上にハイペースな戦いを見せるつもり」。1200発に及ぶ手数で村田を苦しめ抜いたが、それを超えるパンチの数を用意しているという。

「ムラタのホームで戦うことになる。最高の出来をさらに上回る出来でないと、勝つことはできないと思う」

ブラントの参謀は元世界王者のエディ・ムスタファ・トレーナー

 昨年、世界タイトルを手にする以前、ブラントの評価はさして高くはなかった。チャンスを求めて、スーパーミドル級のWBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)に出場し、何もできないまま敗北を喫したこともある。世界チャンピオンになって、生活は一変した。生まれ故郷ミネソタ州で初防衛戦を行い、家族や昔馴染み、古いファンから喝さいを浴びた。だから、この晴れがましい立場を手放したくない。

「私(のタイトル)を追いかけてくる人がたくさんいる。パーティーに明け暮れているわけにはいかない」

 だから、リベンジに向けて激しい闘志を燃やす村田にも勝たなければ意味はない。

「これまでムラタに敗れた選手は、パンチを恐れて戦ったからだろう。私はそうじゃない。ムラタは大きなパンチを狙ってくるはず。私にそれは当たらない。12ラウンド戦って、勝ってみせる」

 ゲンナディ・ゴロフキンやジャモール・チャーロなどとのビッグマッチ実現を夢見るが、「すべてはこの試合が終わってから」と野心はいったん胸にしまい込んで、大阪のリングに向かう。

この日の練習はサウスポーで通した

 会見後、リングに入ると数ラウンド分、動きを披露した。すべてが軽め。サウスポーでシャドーボクシングを行う場面もあったが、こちらもちょっと見せた程度で陽動作戦の一環かもしれない。

 ただ、ブラントが俊敏なボクサーであることは間違いない。村田はその動きをどうやって止めるのか。それがタイトル奪回への第一のカギになる。

取材◎宮崎正博

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事