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2023-01-21

【相撲編集部が選ぶ初場所14日目の一番】琴勝峰が勝ち残り、2敗は貴景勝と2人に。千秋楽結びの一番で決着へ

動きの中で、大栄翔の左手を引っ掛ける琴勝峰。持ち味の細かいうまさが果たして千秋楽結びの一番で出せるか

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琴勝峰(寄り切り)大栄翔

場所前、14日目を終えた時点でこの力士が優勝争いの先頭に立っていると予想できた人が、いったい何人いるだろう。

東前頭13枚目の琴勝峰だ。13日目まで2敗だった3人の中で最初に土俵に上がって、埼玉栄高の先輩であり、優勝経験者でもある実力者の大栄翔を寄り切り。続く一番で阿武咲が霧馬山のタイミングのいい突き落としに敗れたため、結びの一番で手負いの豊昇龍を叩き込んだ貴景勝とともに、トップに並んだ。

琴勝峰は、押し相撲をベースにしているが、立ち合いからいっぺんに相手を土俵の外に持っていく相撲はほとんどなく、一見、どこに強さがあるのかが分かりにくい力士だ。これだけ勝っている今場所も、11日目に宇良を突き落とした一番など、とっさの逆転勝ちがあったりする。

ではその強さはどこにあるのか。一言で言えば、「柔らかさ」だ。手足が長く、懐深く相手の攻めをさばいてしまうところがある。そこに、思い切った動きと、細かいところでの相撲のうまさが加わってくるのが特徴だ。

この日の大栄翔戦では、「立ち合いからよけいな力が入っていなくて、踏み込めた。不安になって力を入れて当たっちゃうと、逆に相手の手を食らっちゃったりするんで」と、立ち合いからその柔らかさを出せたのが勝因だと語っているから面白い。

この日はその立ち合いで、右を掬うようにして相手の脇にあてがい、突き放されることを防いだ。立ち合いに圧倒されることを阻止すれば、持ち前の柔らかさと相撲のうまさが生きてくる。動きの中で、さらに突いてこようとする大栄翔の左腕を引っ掛けるようにして右へと回り、相手が嫌がって振りほどこうとしたところで素早く右上手を取る。そしてそのあと、サッと体を寄せてしまったのがまたうまかった。これで距離を詰められ、もう大栄翔は突くことができない。琴勝峰はそのまま向正面へ寄り切った。

幕内下位ということで、ここまでは役力士との対戦はなかった琴勝峰だが、2人が3敗で並ぶ形になっては、さすがに千秋楽は貴景勝との対戦が組まれた。もちろん勝ったほうが優勝だ。

大関対平幕下位の対戦なので、まあ普通に考えれば大関有利だが、もしも廻しに手がかかることになれば、琴勝峰にも勝機がないわけではない。14日目と同様、先手を許さない立ち合いができるかどうかがカギだろう。

「最後の一番なんで、後悔のないように取りたいです。明日は(優勝を)意識してしまうかもしれないですけど、そのときはそのときで、しっかり気持ちをつくってやっていきたいです」と琴勝峰。千秋楽結びの一番に挑む前頭13枚目が、平常心でぶつかれるかどうか。そこに、史上初の4場所連続平幕優勝の成否がかかっている。

文=藤本泰祐

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