1日、東京・後楽園ホールで行われた日本スーパーライト級タイトルマッチ10回戦は、チャンピオンの井上浩樹(27歳=大橋)が同級8位の池田竜司(24歳=竹原慎二&畑山隆則)を2回、3回に1度ずつ倒し、5回34秒レフェリーストップによるTKOで仕留め、初防衛に成功した。
上写真=井上は、迫力のある右フックを連発し、このブローの意識づけをした
初めての防衛戦。だが、チャンピオン井上に、守る意識などさらさらなかった。そこに、さらに上を目指していく自覚があふれた。
4月に行われたチャンピオンカーニバル注目の一戦で、細川バレンタイン(角海老宝石)を完璧にコントロールし、4~6ポイント差の3-0判定で王座を奪取した。完勝といってもいい結果だが、井上浩樹のスケールを考えれば、物足りなさを感じる内容と言えなくもない。
丁寧にアウトボクシング。自ら仕掛けず、細川の気迫あふれる攻撃をいなし、ポイントをピックアップしていった。腕の負傷により、スパーリングをこなせないまま臨んだのも大きな理由だが、慎重になってしまう心の持ちようが表れたのも事実だった。
井上尚弥、拓真の“従兄”というプレッシャー。ベルトはなんとしても獲らなければならない──。それが、もともと備えるスケール感を小さくさせてしまったのだろう。
5回、池田をよろめかせた井上は、一気に連打。レフェリーが挑戦者を救った
だが、この日は表情からして闘志があふれていた。池田よりもひと回り分厚さを感じる体から、シャープで速い右のジャブを突き刺していく。ボディ狙いの池田のストレートをステップでかわし、すかさずリターン。2回には早くもロープを背負わせて連打を見舞い、左ストレートでロープまで大きくよろめかせてカウントを聞かせた。
続く3回、池田の頭が顔面にぶつかり、一瞬動きを止めかけたが、池田の左フックにインサイドからの右フックをカウンターしてヒザを着かせた。
ここも立ち上がった池田が前進し、バッティングが起こる。左眉付近をざっくりとカットし流血した池田が、強い連打を繰り返すが、井上はボディワークや堅牢なガードでこれを防いだ。
「序盤は足も動いていてよかったと思う」と井上。4回の大半は、池田のプレスを引き寄せて、右フックのカウンターを狙う。左のブローをほとんど使わず、拳を痛めたのかと疑わせたが、終盤、コーナーに詰めて左右の連打を見せると、5回早々に、「下に目でフェイントを入れて」(井上)、一瞬の間を築き、左ストレート一閃。これで腰砕けとなった池田に連打を見舞ったところでレフェリーが止めた。
“初防衛戦”に対する過度なプレッシャーはなし。攻防に持ち味を発揮した
「グラスゴーが刺激になった」と勝利会見で語る。5月、WBSS準決勝に臨んだ尚弥に同行し、“あらためてのモンスターぶり”を目の当たりにしたこと。さらに、同じく行われたスーパーライト級のWBSS準決勝で、IBF新王者となったジョシュ・テイラー(28歳=イギリス)をリングサイドで“体感”したことが大きい。
自分と同じ、サウスポーのテクニシャン、テイラーは、技術を存分に披露しつつ、パワーファイターのイワン・バランチク(26歳=ベラルーシ)をときに攻撃で圧倒したのだ。
「パンチをほとんどもらわなかった」と、大橋秀行会長(左)も及第点を与える。しかし、佐久間史朗トレーナーは、「カバーリングオンリーになってしまうところが……」と、動きを止めてしまう点を課題として挙げた
目指すのはあくまでも世界の頂点。決して軽んじるわけではないが、いまの立ち位置は通過点。3ヵ月前と大きく変わったのは、心の在処だろう。
井上の戦績は14戦14勝(11KO)。池田の戦績は23戦14勝(9KO)6敗3分。
文_本間 暁
写真_菊田義久
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