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2023-01-22

【相撲編集部が選ぶ初場所千秋楽の一番】貴景勝が琴勝峰の挑戦退け3度目のV。春場所で綱取り挑戦へ

土俵中央、力強い掬い投げで琴勝峰を投げ捨てる貴景勝。千秋楽結びの一番で気持ちの強さを見せつけた

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貴景勝(掬い投げ)琴勝峰

番付の権威を守った。
 
やはり大関は強かった。勝ったほうが優勝の、平幕相手の千秋楽結びの一番。貴景勝が琴勝峰を左からの掬い投げで退けて、14場所、2年2カ月ぶりの優勝を決めた。
 
立ち合いは頭からブチかました。琴勝峰も当たりは悪くなかったが、押し勝ったのはやはり大関だった。少し突いた後、貴景勝としては非常に珍しいが、流れでそうなったのか、左がスッと入った。
 
そのまま深く差し込み、ヒジを張る貴景勝。「とりあえず、差して廻しが取りたかった」琴勝峰としては、廻しには手がかからなかったが、とにかく体が密着したところが勝負だ。すぐに勝負をかけた小手投げにいったが、貴景勝の差し手の形がよかったため、全く利かず。逆に貴景勝が少し腰に乗せるようにしてそのまま掬い投げ。琴勝峰は土俵に転がった。

「いろんな人に支えてもらって、その後押しで上がっていますが、土俵に上がるのは一人なんで。最後、一番にしっかり集中しようと思いました」という、大関の気持ちの強さが、最後に勝利を引き寄せた。

「(相撲は)全然相手になっていない。気持ちの強さを出された」と琴勝峰。最後に敗れはしたが、何よりの経験をした今場所は「大器覚醒の場所」として記憶されることになるだろう。
 
勝った貴景勝は、取組後、「土俵に上がったら、力を出し切らないといけない。その勝負が終わったので。また来場所、自分も、琴勝峰関も頑張っていこうという意味で」、立ち上がった埼玉栄高の後輩の腰のあたりにポンと手をやり、健闘を称える余裕も見せた。
 
最後は余裕も見せた貴景勝だが、1横綱、1大関の番付で、横綱照ノ富士が休場し、出場力士最高位の責任がのしかかった今場所は、必死の土俵が続いた。大栄翔戦(3日目)、翠富士戦(7日目)、錦富士戦(8日目)、阿武咲戦(13日目)と、闘志むき出しで挑んでくる下位の力士に対し、鼻血を滴らせながらの激勝が続く。
 
優勝争いという面では、10日目に9勝1敗でいったん単独トップに立ちながら、11日目、12日目と連敗してその座を明け渡した。それでも「相撲は15日間の勝負。いかに気持ちを切らさず行けるか。気持ちの平衡を保って、一日一日、力を出し切っていく。その精神力の強い人が成績を残せる」と、気持ちを切らすことなく、逆襲につなげた。
 
優勝から遠ざかったこの2年間の大関としての重責も、「それを重圧ととらえるかどうか。期待してもらっていることはありがたいことなので、感謝して。誰もが大関になれるわけではないので、重圧を感謝に変えて取り組んできました」と振り返った。耐えて、そしてつかんだ優勝だった。
 
昨年九州場所後の横審で「初場所好成績で優勝すれば、内規に該当する」という話が出ていた綱取りは、3敗での優勝ということで、今場所については見送りになってしまったが、次の春場所は間違いなく綱取り場所になる。

「また明日から、私生活から、稽古はもちろん、体のケアなど、もっと相撲に謙虚になって頑張っていきたい」。その心がけがあれば、相撲の神様は振り向いてくれるはず。兵庫県出身。ご当所の関西で大願成就となるか。今場所同様、また出場者の中で番付最上位で臨まなければならない可能性もあるが、今場所見せた精神力と経験が、何よりの武器になるはずだ。

文=藤本泰祐

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