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2019-06-21

【海外ボクシング】ウィークエンド・プレビュー 苦労人チャンプ、カンシオの返り討ちなるか

今週の海外ボクシングはビッグマッチこそないが、注目に値するなかなかのカードがそろう。不敗のWBA世界スーパーフェザー級王者だったアルベルト・マチャド(プエルトリコ)を番狂わせの逆転KOに破ってベルトを奪い取ったアンドリュー・カンシオ(アメリカ)はリマッチに臨む。議論を呼ぶ判定でトニー・ハリソン(アメリカ)に初黒星を喫した前WBC世界スーパーウェルター級チャンピオンのジャーメル・チャーロ(アメリカ)も因縁の再戦を行うはずだったが、ハリソンの負傷によりノンタイトル戦に変更されている。

写真上=アルベルト・マチャド

6月21日/ファンタジースプリングス・カジノ(アメリカ・カリフォルニア州インディオ)

◆順当ならカンシオの雪辱だが…

★WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦
アンドリュー・カンシオ(アメリカ)対アルベルト・マチャド(プエルトリコ)

カンシオ:30歳/26戦20勝(15KO)4敗2分
マチャド:28歳/22戦21勝(17KO)1敗
※22日、午前10時よりDAZNで生配信

 この両者による2月の対戦結果は、世界のボクシングファンの間に大きな波紋広がった。身長178センチの長身サウスポー、マチャドは切れ味鋭いパンチの持ち主で、カリブのボクシング王国プエルトリコを背負って立つ存在と考えられていた。そのマチャドがまさかのKO負けだ。それも、頑張り屋でも実力はリミットいっぱいの中堅レベルともささやかれていたカンシオ相手に。いきなりダウンを奪いながら、カンシオの粘っこいボディ攻めに抵抗できないまま崩れ落ちたマチャドの姿は、戦前には想像できないものだった。

 一方、カンシオはいきなり話題の主にと祭り上げられる。なにしろプロでは食っていけないと、一度はリング生活から身を引いた。家族のためにさまざまな仕事について懸命に働いた。昨年カムバックし、そして現在もフルタイムで働く機械技師でもある。

 再戦ではマチャドがリーチ、スピードの差をフルに活かし、カンシオを突き放しにかかるはず。前回の勝利がフロックでないことを証明するために、カンシオはマチャドが繰り出す偵察と先制を目的としたジャブ、カウンターの左スカッド砲をうまくすり抜けなければならない。それはなかなか厳しい作業にも思える。

 マチャドがきちんとアウトボクシングした末に、中盤で決着をつけるとするのが最も順当な答えかもしれない。ただ、前回の不安定な姿を見る限り、100パーセントの信用はできないが。

◆強打で存在感示したいアコスタ

★WBO世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦
アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)対エルウィン・ソト(メキシコ)

アコスタ:28歳/21戦20勝(20KO)1敗
ソト:22歳/15戦14勝(10KO)1敗

アンヘル・アコスタ

 2年前に来日した時には、田中恒成(畑中)に歯が立たなかったアコスタだが、その田中戦以外の20戦はすべてKO勝ちと、ハードパンチをほしいままにしている。そんな戦績の割には迫力に欠けるという評価もあるが、今後も京口紘人(ワタナベ)や拳四朗(BMB)のライバル王者として注目しておきたい。

 タイトル4度目の防衛戦となる今回は、相手の戦力がいまいちわからない。サウスボーダー(アメリカとの国境地帯)を中心に活動するメキシカン、ソトだが、ここまで試される相手との対戦はない。アコスタとしては手早く料理しておきたいところ。

6月23日/マンダレイベイ・リゾート&カジノ(アメリカ・ネバダ州ラスベガス)

◆チャーロはKOの味を覚えているか?

★スーパーウェルター級12回戦
ジャーメル・チャーロ(アメリカ)対ホルヘ・コタ(メキシコ)

チャーロ:29歳/32戦31勝(15KO)1敗
コタ:31歳/31戦28勝(25KO)3敗
※Showtimeで全米中継

ジャーメル・チャーロ

 3度守ったWBC王座復帰を目指す戦いが流れても、PBC(プレミア・ボクシング・チャンピオン)興行の主役は双子のチャーロ兄弟の弟がつとめる。PBCとしても、それだけの期待をこの男にかけているという証拠なのだろう。3度目の防衛戦でベテランのオースティン・トラウト(アメリカ)に手こずったが、タイトル獲得を含むそれ以前の3度の世界戦は、いずれも鮮やかなストップ劇。技で立ち回るだけと思われてきたが、大きく変身する途上で喫したハリソン戦の敗北は手痛いものだった。

 代役に選ばれたコタはレコードが示すとおりのハードヒッター。とはいえ、トップホープの一角を占めるエリクソン・ルビン(アメリカ)には痛烈に沈められている。この4月にはこれも若手の注目株ヘイソン・ロサリオ(ドミニカ共和国)に1-2判定ながら敗れている。チャーロは忘れかけているKOのコツを思い出したい。

◆スーパーテクニシャンが再びトップへ発進

★スーパーバンタム級12回戦
ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)対フリオ・セハ(メキシコ)

リゴンドー:38歳/20戦18勝(12KO)1敗1無効試合
セハ:26歳/35戦32勝(28KO)3敗

ギジェルモ・リゴンドー

 アマチュア史上最大級のレジェンド、リゴンドーの今後を占う大事な戦いだ。ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)との戦いであっさり棄権して、このままフェードアウトかと観測されたのだが、PBCと契約。この1月、13ヵ月ぶりの試合に初回KO勝ちして帰ってきた。そして今回は一段違う相手を選んだ。

 セハのキャリア前半期は、軽量級王国メキシコの新たなトップランナーと期待されるに十分な勢いだった。ところがジェイミー・マクドネル(イギリス)に敗れて『?』がつき、ウーゴ・ルイス(メキシコ)との再戦で初回ストップの憂き目にあって、今度は赤信号がともった。そして、昨年、フランクリン・マンサニジャ(ベネズエラ)に棄権TKO負け。現在もWBCランク1位ながら、もう1年も試合をしていない。

 やや動きに重さのあるセハは、リゴンドーのスピードについては行けまい。キューバ人のシャープなパンチがヒットして前半戦をすぎないうちに決着がつくこともあり得る。

◆19歳の人気者スペンサー

ジョーイ・スペンサー

 前座のラインアップには若手ホープが並ぶ。アテネ五輪金メダルのヤン、2階級制覇席王者ランセスを兄に持つ不敗のライト級レデュアン・バルテレミー(キューバ/29歳/14勝7KO1分)、ニューヨーク期待のフェザー級、クリス・コルバート(アメリカ/22歳/11戦11勝4KO)、2017年パンアメリカン選手権ライトミドル級銀メダリストのクィントン・ランドール(アメリカ/28歳/3戦3勝1KO)。さらに人気というならもはやトップにも迫るミドル級のスラッガー、ジョーイ・スペンサー(アメリカ/19歳/7戦7勝6KO)も登場する。早い時期からホープを追いかけたいファンには、いずれも見逃せないメンバーだ。

◆スーパーウェルター級で身長2メートル越え

 21日、アメリカ・アイオワ州のカジノタウン、スローンでは若手中心のテレビカード『SHO BOX』(Showtime)が行われる。メインイベントはスーパーウェルター級10回戦。セバスチャン・フンドラ(アメリカ/21歳/12戦12勝8KO)とエクトール・マヌエル・セペダ(メキシコ/21歳/17戦17勝4KO)の不敗同士の対戦になる。

 注目はフンドラ。キューバ人の父を持つこの若手の身長はなんと201センチ。ニックネームの “タワーリング・インフェルノ” そのまま。しかもサウスポーときている。パンチの切れもあり、プロキャリア3年で到達したテレビカードのメイン。本領を見せつけたいところだ。

 同じカードにはアメリカ初登場のライト級4人が対決する8回戦がふたつ。マイケル・リベラ(ドミニカ共和国/21歳/15戦15勝10KO)対レネ・テジェス・ヒロン(メキシコ/20歳/13戦13勝7KO)。それにメキシコ経由でやってきたジェイス・ガブリエル・ソラノ(コロンビア/26歳/14戦14勝10KO)対エリアス・ダミアン・アラウヨ(アルゼンチン/32歳/20勝8KO1敗)。なかでも昨年、北京五輪銀メダリスト、ヤンキール・ロペス(キューバ)をTKOに破っているリベラをしっかり見ておきたい。

◆スペインのスターでトリプルメインイベント

 22日、イベリア半島北部スペイン・カンタブリア州トレラベーガでは、元世界ミドル級チャンピオン、セルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)がプロモーターをつとめるトリプルメインイベントが開催される。

セルヒオ・ガルシア(右)

 最大の売り物はEBUヨーロッパ・スーパーウェルター級タイトルマッチ。チャンピオンのセルヒオ・ガルシア(スペイン/26歳/29戦29勝13KO)は、セルゲイ・ラブチェンコ(ベラルーシ/33歳/29勝22KO4敗)との対戦となる。ラブチェンコは強打者として売り出したが、トニー・ハリソン(アメリカ)、ケル・ブルック(イギリス)とトップ選手にはストップ負け。ただ、ガルシアも対戦相手を圧倒しきれておらず、不安は残る。

ホン・フェルナンデス(右)

 残る2組はEBU=EUタイトルマッチ。スーパーフェザー級戦に出場するホン・フェルナンデス(スペイン/23歳/17勝15KO1敗)、フェザー級戦のカルロス・ラモス(スペイン/23歳/10勝7KO1敗)とも昨年のアメリカ遠征では、ローカルホープに敗れており、いまひとつ信頼感はない。このタイトル戦から調子を上げていきたいところ。

 なお、マルチネスは現役時代からスペインのマドリードに居住し、活動している。

◆スコットランドの新たな星が英連邦タイトル防衛戦

リー・マクレガー

 スコットランドのバンタム級ホープ、リー・マクレガー(イギリス/22歳/6戦6勝5KO)は22日、イギリス・グラスゴーで同じくスコットランド出身のスコット・アラン(26歳/9勝3敗1分)と英連邦バンタム級タイトルの初防衛戦12回戦を行う。

 プロわずか5戦目でこのタイトルを手に入れたマグレガーは、イギリス軽量級では屈指のホープ。果敢なアタックが自慢だ。

 この試合は新勢力MTKグローバルのプロモート。トップランクとも提携しており、ESPN+でアメリカにストリーミング中継される。

文◎宮崎正博
写真◎ゲッティ イメージズ

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