19日、千葉・幕張メッセ イベントホールで、ケーシー・モートン(35歳=アメリカ)を圧倒してWBO女子世界スーパーフライ新チャンピオンとなった吉田実代(31歳=EBISU K’S BOX)が、一夜明けた20日、東京・五反田のワタナベジムで会見。戴冠戦を振り返るとともに、今後について語った。
上写真=加山会長とともに喜びを表す
祝勝会の後は、1ヵ月半ぶりに鹿児島から戻ってきた愛娘・実衣菜(みいな)ちゃん(4歳)を保育園に送り出す準備で早朝4時まで。そこから4時間眠ったという新チャンピオンは、あらためて「言葉にできないほどの嬉しさ。みなさんの期待に応えられてホッとしている」と、傷ひとつない綺麗な顔でにっこり。実衣菜ちゃんも、久しぶりに会う友だちや先生方に“ママ自慢できる”と嬉々として園に向かったのだという。
傷のない顔が物語るとおり、会心の勝利だった。ラフな連打を繰り出してきたモートンのブローを、しっかりとガード、ボディワークでかわし、さらにはステップバックしての距離で外した。20歳から始めた総合格闘技、キックボクシングなど他の格闘技で磨いた、接近してからの戦い。ボクシングキャリアの初期は、強いフィジカルを前面に、その距離での戦いに没頭していたが、ジャブを磨いたことで、距離をとっての戦い、距離でコントロールする術を身に着けた。
「吉田は、気持ちを前面に押し出して戦いたがる選手」と、加山利治会長は言うが、行くばかりではなく、バランスを整える技の習得を徹底した。試合中、会長から何度も「バックステップ!」の声が飛び、すかさず反応した吉田は、そこからジャブを使ってリズムを整えた。
「でも、昨日の自分のコンディション的に、ワンツーから左ボディを有効に使うほうがよかった。相手との相性としても」(吉田)
これまでの吉田だったら、そこ一辺倒に陥ってしまったかもしれないが、ワンパターンを切り崩す、ステップアウトからの流れは、彼女の可能性を大いに示すものだ。
「今回はラウンド中に気づいたことがありました。ダウンを取る定義みたいなもの。この軌道じゃダメだ、このタイミングじゃダメだと。いつもはポイントを取りたい、相手のパンチをもらいたくないとか、安全パイを選択してしまうけれど、冷静に考えて、右アッパーやシフトしてからの左ボディを打てた」。
加山会長は、「この試合に向けての練習で一気に(レベルが)上がった。左ボディも、1度打てたらそれがつかめてしまう。何度も練習をしてきて、そうやって出せると、急激にものにできることがあるんです」と、愛弟子の急成長ぶりに驚く。
KO勝利がいまだにないことを、少なからず本人も気にしているだろうが、試合中に感じることができたのは大きな収穫だ。「早く練習で試したい」と、“練習マニア”の心はうずいている。
「世界チャンピオンになったからには、本物に、この選手は強いと思われる存在になりたい。ボクシング以外でも、素晴らしいと思われるようになりたい。そういうお手本がたくさんいますから」と、リング内外で“本物志向”でありたい、と吉田はキッパリと口にした。
「本人も、『誰とでも戦う』というスタンスなので、誰とでも戦っていきます」と会長も断言する。
格闘技生活11年。吉田実代の新たな“戦い”が、ここからまた始まる。
文&写真_本間 暁
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