19日(水)、千葉・幕張メッセ イベントホールでWBO女子世界スーパーフライ級王座決定戦10回戦(対ケーシー・モートン=35歳、アメリカ)に臨む吉田実代(31歳=EBISU K’S BOX)が14日、同ジムで練習を公開。シャドーボクシング、ミット打ち、サンドバッグ打ちを披露し、順調な調整ぶりをアピールした。
上写真=戦闘モードに入ると、表情がガラリと変わる
間断なく浮かべる笑顔が、好調さと世界挑戦の喜びを物語る。保持する日本とOPBF(東洋太平洋)ふたつの王座はいずれもバンタム級で、1階級下での世界挑戦となるが、「バンタム級ではほとんど減量がなかった」というから、体重調整も問題なし。「明日にでも試合をしたいくらい」と、待ち遠しい様子なのである。
一戦ごとに、進化を示してきた。「当初は格闘技経験を活かしたフィジカルの強さばかりが目立っていた」(加山利治会長)が、体の使い方を学び、出入りのボクシングを、さらにジャブの使い方を覚えた。現役時代、ワタナベジム所属だった加山会長の、ジムの後輩にあたる元WBA世界スーパーフェザー級チャンピオン内山高志さんに、多彩な左ジャブや右のパンチを学んできた。元日本ウェルター級王者の加山会長も、ジャブをベースにした綺麗なボクサーで、内山さんとの指導方針もバッチリかみ合う。「みんながひとつの方向を向いているので、とてもやりやすいです」(吉田)と、“英才教育”が施されているのだ。
そして、学んだことを実戦に生かす。世界5階級制覇の藤岡奈穂子(竹原慎二&畑山隆則)、IBF女子世界アトム級王者・花形冴美(花形)、元WBA女子アトム級王者・宮尾綾香(ワタナベ)らとスパーリングを積み、「世界のレベルを肌で感じた」。
対するモートンは吉田の身長(161cm)を6cmほど下回る、「ガードが堅く、好戦的」(加山会長)で、「ポイントを取れるボクシングをする」(吉田)選手。小柄な花形や宮尾は“仮想モートン”として、適任だったはずだ。
「映像を見るかぎり、モートンはボディがあまり強くなさそう。吉田は左のボディブローを打てるようになってきたので、それが当たればおもしろい」と加山会長。吉田自身は、「先に当てることと距離感がカギ」と語る。軽めの公開練習だったが、ワンツーから返す左ボディブローは、シフトウェイトされており強力。これまでKO勝ちのない吉田だが、決してパワーレスではなく、十分期待できよう。
4歳の愛娘・実衣菜(みいな)ちゃんを育てるシングルマザー。ジムでのパーソナルトレーナーがメインだが、整体の経験なども生かし、企業や保育園などでストレッチや体づくりの先生としても活躍。JFA(日本サッカー協会)のプロジェクト、『夢先生』にも名を連ね、小学生を相手に授業をすることもあるなど、多忙を極めながら、自らのトレーニングに励んできた。
「同じような境遇で頑張るお母さんたちに、自分が頑張ることで夢を与えることができれば嬉しいです」。世界チャンピオンになることは、もちろん実衣菜ちゃんと自分のためだが、頑張る女性たちへのアピールにもなる。それはプレッシャーではなく、モチベーションになると、吉田は語る。
同じ女性たちに、その戦いぶりを見てほしい。
文&写真_本間 暁
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