日本フライ級チャンピオンで、世界4団体のランキングに名を連ねる(WBC3位、WBO4位、IBF12位、WBA14位)“ホープ”、中谷潤人(21歳=M.T)が1日、東京・後楽園ホールのメインイベントに登場。スーパーフライ級10回戦でフィリピン・バンタム級8位のフィリップ・ルイス・クエルド(23歳)を左ボディブロー一発で初回1分23秒KO。戦績を19戦19勝(14KO)とした。
上写真=ものの見事なボディブローが決まり、クエルドは数分間起き上がれず
「1発で相手を倒すパンチがほしい」。
全日本新人王、日本ユース王座、そして日本王座と順調に冠を獲得し、世界ランキングも上位に名を連ねた中谷は、さらに上を目指すにあたり、必要な戦力として「パワーパンチ」を掲げていたが、それがものの見事に披露された試合だった。
当初、中野ウルフ(35歳=橋口)を相手に日本タイトルの初防衛戦に臨むはずだったが、中野が目を負傷したため、ひと月前にキャンセル。挑戦者の代役は現れず、やむなくノンタイトル戦に変更。1階級上のフィリピン・ランカーが用意された。
クラスでは1階級下の中谷が170cm。クエルドが165cm。サウスポー同士の一戦は、日本王者がシャープで力強い右ジャブで、クエルドのガード間を簡単に突き破っていく。かねてから「ジャブも課題」と言ってきた中谷は、これでクエルドにガードを絞らせると、右フック、左ストレートと、相手の目先を変えるブローを立て続けに打ち込んでいき、ガードを上げさせたところで、ストレートの軌道から手首を返す左ボディブロー──。
「抜けるような感じで、あれで倒れるとは思わなかった」と本人はびっくりしたが、これがものすごい打撃音を場内に轟かせてレバー(肝臓)に突き刺さり、クエルドはキャンバスに倒れこんで悶絶。数分間、起き上がれなかった。
完璧に見えた圧巻のKOにも、「反省するところも少しある」と中谷。「相手の正面に立ちすぎた。もっとサイドを取って、攻撃していきたい」と、会心の勝利に酔いしれることはない。さらに、「もっと組み立てをしていかなければ」とも……。
ジャブからの組み立て、KOパンチの後に右アッパーカットをきちんと返しているなど、引き出しや厚みを披露したのだが、彼が見ているのはもちろん“この先”。どんな試合でも、反省点を見つけ、それをひとつずつ潰していく。そういうカウントダウンに入っている状態なのだ。
「“世界”はタイミングがあることですから。できれば少しでも早く挑戦したいですけど」と、傷ひとつないきれいな顔をほころばせる。大舞台への準備は、着々と整いつつある。
文_本間 暁
写真_会田忠行
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