元日本ウェルター級チャンピオンで現在は同8位にランクされる有川稔男(川島)は14日、東京・後楽園ホールで安藤暢文(高崎)と6回戦を行ったが、3回2分34秒、痛烈な逆転KO負けを喫した。
写真上=3回、倒した直後に逆転の一発を食らって有川は沈んだ
ショッキングな結末だった。有川はここまで15勝のうち13KO(6敗)。34歳と若くはないが、東大中退の陸上自衛隊レンジャー部隊志願という話題性も相まって、まだまだ上位を狙ってほしい存在だった。相手の安藤は5勝(2KO)8敗2分。6回戦までしか戦ったことがなく、戦歴上は明らかに格下だ。有川側から見たとして、再浮上のための勢い作りの戦いとみるのが妥当のカード。だが、その有川が一撃でリングに横転してしまう。それもこの試合初めてのチャンスを切り開いた直後にである。こんな大きな番狂わせもあるのか、と思わせるほどの結末だった。
初回から確かに有川の動きは硬い。サウスポーの安藤を追い切れない。「サウスポーがとくに苦手という印象はない」と有川は言ったが、安藤の放つ右フックに反応しきれていなかった。ラウンド終盤にようやくプレスをかけ始めるが、2回には再び安藤のカウンターアタックに後手に回る。
3回も安藤が流れを作るが、有川の強打が一気にひっくり返す。右アッパーのボディブローで後退した安藤に、左フックから右ストレートとフォローしてダウンさせたのだ。
格の違いが明白になった。このまま終幕へ流れ込むと考えて当然だった。有川も雑な攻め口ながらも追撃を加える。だが、その手が止まった一瞬だ。ロープを背にした安藤の右フックが一閃する。ガクンと倒れ込んだ有川はなんとか立ち上がったもののダメージは深い。おぼつかない足取りのまま、レフェリーの福地勇治に抱え込まれる形で、カントアウトされた。
敗れた有川は昨年4月、矢田良太(グリーンツダ)に日本王座を奪われた一戦から、連なること3度目のストップ負け。
「練習のなかでは調子が悪いとか、衰えたというのはとくに感じなかった」というが、もう一度という気持ちはあるかの問いには「ないと思う」。KO負けの直後の発言を鵜呑みにするつもりはないが、有川が被った疵は、心も体も深い。
文◉宮崎正博
写真◉馬場高志
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