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2018-07-06

「ルーツ校」 立教大学ラッシャーズ、日本一への挑戦

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 アメリカンフットボール関東学生1部リーグTOP8に所属する立教大の春シーズンは、初戦の慶應大を皮切りに、東京大、同志社大に勝利するなど、4勝1敗だった。4勝の内、3勝が2ポゼッション以上の差と、内容的にも安定した試合運びを見せた。能力の高いRB陣のインサイドゾーンのランプレーを主軸に、WRへのミドル・ロングパスを展開するオフェンスは安定している。

【立教大 vs 東大】日本におけるフットボールのルーツを誇る立教大は、43年ぶりの甲子園ボウル優勝を目指して日々の練習に取り組んでいる(写真:北川直樹)

WR・RBが充実する立教

【立教大 vs 東大】雨のなかパスを投げ込む、立教大QB#3若狭彰吾(写真:北川直樹)

 今季の立教大オフェンスの特徴は、クイックネスだ。タイミングの速いランを基調に、WR#80河本(4年)、#18飯田(3年)をターゲットにしたパスもクイックで決まる。QB#3若狭(3年)は、冷静で判断が良く、ラン、パスともに安定したパフォーマンスを見せる。

 昨季TOP8で獲得ヤード2位の392ヤードをキャッチしたエースレシーバーで副将の河本は、慶應大戦でDBとのマッチアップに幾度となく競り勝ってロングパスを好捕し、2本のタッチダウン(TD)を上げた。雨天となった東大戦でも4回捕球40ヤード1TDと、少ないチャンスにも集中力を切らすことなく、存在感を示した。ここぞという場面の勝負強さは、社会人のリクルート(現オービック)でクラッチな名レシーバーとして活躍した父・晃さん譲りだ。

【立教大 vs 慶應大】今年4年となり名実ともエースとなった、立教大WR#80河本航太郎(写真:北川直樹)

【立教大 vs 慶應大】この試合で1本目のTDを奪う、立教大WR#80河本(写真:北川直樹)

【立教大 vs 慶應大】立教大WR#80河本は、抜群の勝負強さで2本目のTDをレシーブ(写真:北川直樹)

 ランでも#21林(4年)、#2荒竹(3年)らRB陣が粘り強い走りを見せる。昨秋、TOP8で荒竹はラッシング2位の508ヤード、林は8位の356ヤードと、共に実績を残しており、キックオフリターナーも務める。両選手ともタックルに強く、インサイドから独走能力もある、バランスの良いデイライトランナーだ。

 林は6月10日の東大戦で、26回走って282ヤード、2TDの大活躍。まるでゴム鞠が弾むように東大ディフェンスを弾き飛ばし、タフな走りを重ねた。東大の森HCに「21番に試合を通して走られ続け、全く止めることができなかった」と言わしめた林は、「慶應、東大と自分なりに走れたという自覚はあったが、法政や早稲田といった相手にはこうはいかないので、もっともっと向上していきたい」と貪欲だ。「絶対に日本一のランニングバックになる。関西は関学大の山口、関東だと明治の福田がライバル。負ける気はない」と言い切った。

【立教大 vs 慶應大】立教大RB#21林宗一郎は昨季TOP8ラッシング8位。抜群のボディバランスを持っている(写真:北川直樹)

【立教大 vs 慶應大】昨季TOP8でラッシング2位を記録した、立教大RB#2荒竹悠大は、タックルを外して独走する能力に長けている(写真:北川直樹)

【立教大 vs 慶應大】立教大のQB#3若狭とRB#2荒竹は、立教新座高校時からコンビ6年目(写真:北川直樹)

【立教大 vs 東大】立教大RB#21林は、雨の試合で26回走282ヤードを獲得(写真:北川直樹)

【立教大 vs 東大】立教大RB#21林は、この試合で2TDを獲得した(写真:北川直樹)

日本一になるために「変わらなければならない」こと

【立教大 vs 慶應大】スポーツ推薦枠が少ない立教大は、大型ラインマンの安定した確保が課題の一つだ(写真:北川直樹)

 立教大は2013年に6勝1敗で1部Aブロック2位となったが、現行制度となった翌14年にはTOP8で7戦全敗、BIG8に降格した。15年にBIG8で全勝し、チャレンジマッチにも勝ってTOP8に返り咲いたが、タレントを擁しているシーズンは強いが、そうでない年は苦戦という面があり、安定した戦力造りに課題がある。

 過去2シーズンは、16年の6位(3勝4敗)、17年の5位(2勝5敗)と下位に甘んじている。2年続けて開幕4連敗、9月の勝ち星がない。中央、慶應、明治といった中位校とはいい試合をする反面で、日大や早稲田、法政らとの優勝争いには食い込むことができない。この現状を打開する上で、立教には何が必要か。今季主将を務めるSF#8森上(4年)に話を聞いた。

 関学高時代に主将として日本一を経験してる森上は、立教が上位に進出するためには、まずゲーム以前に細かな日常のルールを守っていくことから始める必要があるという。例えば、集合・撤収時間の厳守を徹底すること。一見簡単なようで、昨年までのチームにはできていなかったという。ゲーム外の私生活から行動を見直していくことで、メンバーのひとりひとりが、日本一になるチームの一員であると自覚を持つことが大切と力説した。

【立教大 vs 東大】立教大の主将SF#8森上衛は、関学高時代に主将として日本一を達成。立教でも下級生時から抜群のリーダーシップを発揮して来た(写真:北川直樹)

【立教大 vs 慶應大】立教大主将の森上は、幅広い守備範囲と鋭い嗅覚で守備陣をリードしている(写真:北川直樹)

【立教大 vs 東大】東大RBにタックルする、立教大主将SF#8森上(写真:北川直樹)

 「今年の1年生には、未経験者を含め面白い素材がたくさんいる」と森上はいう。下級生の中でも特に、U-19日本代表に選出された、2年生の三隅(OL/DL#67)に期待をかけており「三隅は今後の立教を背負っていく選手になる。もっともっと積極的にチームに対して要求や発信をして欲しい」という。下級生が積極的に動き、活躍すればチームのボトムアップになり、士気やムードも自ずと上向くと考えている。

 「もちろん、フットボール面でもフィジカルやスキル、シチュエーションごとの詰めなど、クリアすべき課題は山積み。東大戦でも、4Q終盤に時間を残したまま攻撃権を渡してしまった。そういう部分で、まだまだフットボールの理解が足りない。秋の目標はあくまで日本一なので、フィジカル面でも上位相手に対等に勝負できるレベルまではもっていきたい」と語った。

【立教大 vs 慶應大】立教大#67三隅悠司は、攻撃ではLTとして出場。186cm/107kgと恵まれた体格を誇り、U-19日本代表にも選出された(写真:北川直樹)

【立教大 vs 東大】立教大#67三隅は、攻守両面で要となるラインマンとして試合に出場(写真:北川直樹)

 立教大学アメリカンフットボール部ラッシャーズは、1934年に当時の立教教授だったポール・ラッシュ博士によって創部された日本におけるルーツ校(同年に明治・早稲田も創部)だ。51年に関学大を破って甲子園ボウルで初優勝を果たし、甲子園ボウル出場6回、優勝4回という輝かしい歴史を持っている。一方で、65年の優勝(関学大と両校優勝)を最後に、42年間甲子園ボウルから遠ざかっており、43年ぶりの「古豪復権」を賭け、取り組んでいる。

【立教大 vs 慶應大】慶應大攻撃をセーブし、笑顔を見せる立教大DL#93岡と、SF#8森上(写真:北川直樹)

【立教大 vs 東大】立教大が歓喜するシーンが今秋、おとずれるか(写真:北川直樹)

【写真/文:北川直樹】

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