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2023-03-22

変形性ひざ関節症教室 第12回 変形性ひざ関節症の種類 患者さんのほとんどは「内側型」

 ひざは健康寿命延伸の要の関節。ところが、中高年になると、ひざ関節の軟骨がすり減り、「ひざが痛い」「水がたまる」「痛くて長く歩けない」「ひざか変形した」などといった症状に悩む方が増えてきます。本連載では、ひざの専門医・田代俊之ドクターが、ひざ関節の構造と機能、変形ひざ関節症の症状と治療について、やさしく解説していきます。今回と次回の2回にわたって、変形性ひざ関節症の種類を取り上げます。今回は、3つある変形性ひざ関節症の種類のうち、患者さんが一番多い「内側型」を紹介しましょう。

ヒトは立つことでひざの負担が増えた

 ヒトの祖先は樹の上で生活し、四足歩行をしていました。700万年ほど前に二足歩行ができるようになりました。初めはひざを曲げての歩行でしたが、直立二足歩行ができるようになり、それに伴って人類は大きな進化を遂げました。しかし、移動が後ろ脚だけに任されることになったため、脚への負担は格段に増えました。

 ひざには、歩行時に体重の2.8倍、速歩で4.4倍の荷重がかかるといわれています。ひざに過度な負担がかかると関節軟骨がだんだんとすり減り、しまいには骨や関節が変形し、痛みのために歩けなくなってきます。このような病気を「変形性ひざ関節症」といいます。


 変形性ひざ関節症は、ひざの内側の関節軟骨が摩耗する内側型、ひざの外側の軟骨が摩耗する外側型、お皿の骨の軟骨が摩耗する膝蓋大腿関節症の3つに分類されます。変形性ひざ関節症のほとんどは内側型ですが、混在したケースも珍しくありません。それでは、内側型の変形性ひざ関節症について説明していきましょう。

内側型変形性ひざ関節症

 変形性ひざ関節症の95%以上は、ひざの内側の軟骨がすり減っている内側型です。内側型が多いのは、そもそも両足で立った立位姿勢では、荷重線(レントゲン画像で大腿骨頭と足関節中心を結んだ線)がひざのやや内側を通っているからです。

 両足で立っているときは身体の重さを2本の足で支えていますが、片足立ちでは片足で支えることになり、ひざは外側より内側に大きな力がかかります。歩くことは片足立ちの連続なので、歩くたびにひざの内側に負担がかかることになります。そのため、内側の軟骨が外側より先にすり減ってくるのです。

 内側の軟骨がすり減るとO脚が進みます。O脚が進むとさらに内側への負担が増え、軟骨の変性が進みます。このように一度変形性ひざ関節症のスイッチが入ると悪循環に陥り、軟骨がさらにすり減ります。


レントゲン画像:田代俊之  イラスト:庄司猛


プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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