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2019-03-31

【ボクシング】東洋太平洋ミニマム級 小浦翼、痛恨の最終回TKO負け

東洋太平洋ミニマム級チャンピオン、小浦翼(E&Jカシアス)は31日、横浜大さん橋ホールで4度目の防衛戦を行ったが、13位リト・ダンテ(フィリピン)に最終12回1分18秒TKOで敗れ、王座から陥落した。ダンテが仕掛ける打ち合いに序盤から巻き込まれた小浦は、普段のシャープなボクシングをついに見せることなく、完敗となってしまった。

写真上=ダンテ(右)の右クロスが小浦を襲う
写真◉馬場高志

 14戦全勝9KOでこの日を迎えた小浦にとって、気負いを生むには十分すぎる条件がそろっていた。初めての地元・横浜での試合。それもボクシング興行では初めて使われる大桟橋上の会場は港湾都市横浜を象徴する。そして所属するE&Jカシアス・ジム開設15周年のイベントで、カシアス内藤こと内藤純一会長の実の息子、律樹を差し置いて主役を務める。 なおも言うなら、いい結果を勝ち取れば、もっと上のタイトルを狙える位置にいる。世界のメジャー4団体すべてのランキングでトップ15に入る。ことにWBCでは3位というランクである。谷口将隆(ワタナベ)、田中教仁(三迫)、冨田大樹(堺東ミツキ)と日本のトップ級をことごとく破ってきた。このダンテにいい形で勝っていれば、「世界に飛躍」と堂々と口にできたはずだ。

 だからこそか。小浦が軽やかな足取りで、伸びやかなジャブ、ストレートを見せたのは最初の1分だけ。ダンテが投げ込む右クロスをヒットされてひるむと、その後はどうしてもペースを奪い取れない。

 29歳のダンテはここまで15勝7KO10敗4分。マイナー団体のIBO世界タイトルに南アフリカで挑戦したこと(判定負け)もあるが、ここ5戦で2勝3敗と星は挙がらず、フィリピン・ランクは6位。ダウンの経験はないというタフネスだけは要警戒でも、さしたる難敵とは思えなかった。だが、その挑戦者がとにかくしぶとい。先に先と攻めて出て、右クロスを中心に左フック、右アッパーとたたみかけてくる。小浦は効果的なボディショットを決めても、すぐに巻き返されながらラウンドを重ねていく。5回、右をカウンターで浴びて、小浦がふらついてからはことさらに一方的になった。

 ともに消耗しながら迎えたラストラウンド。ダンテは最後の力を振り絞って出る。決め手になったのはやはり右クロス。ロープに体を預ける形で崩れた小浦は、同じパンチを立て続けにフォローされて、ロープ伝いに逃げた赤コーナーで大きく腰を崩す。レフェリーの飯田哲也はここでストップをかけた。

15戦目で初黒星の小浦。心身ともに深いダメージを受けた(写真◉馬場高志)

「嬉しい。小浦はとても強いと聞いていて、実際に強かったから勝てる気はしなかった。でも、強い気持ちで戦った」とダンテが語った一方、小浦は試合後の取材に断りを入れた。心と体に受けたダメージを考えれば仕方ない。この敗北を経験として、今後の成長につなげられるかどうか、それは小浦次第。まだ24歳。時間は十分にある。

取材◉宮崎正博

 

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