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2023-03-14

【マラソン】自己新の鈴木亜由子が一夜明け会見で語った名古屋ウィメンズの収穫とMGCへの好感触「また一つマラソンランナーっぽくなった」

名古屋ウィメンズマラソンで日本人トップの鈴木亜由子(JP日本郵政グループ)

3月12日に開催された名古屋ウィメンズマラソンで鈴木亜由子(JP日本郵政グループ)が自己新の2時間21分52秒をマークし、日本人トップの2位に入った。13日には高橋昌彦監督とともに一夜明け会見を行い、地元名古屋のファンへの感謝、MGCに向けての思い、3度目のオリンピック出場を目指す上で、マラソンランナーとしての成長を語った。

練習でやってきたことをレースに結びつけられた

――改めて、日本人トップになることができた要因は何だったと思われますか。

鈴木 前半はちょっとキツさもありましたが、冷静にレースを進めることができ、中盤からは自分のリズムでしっかりと押して行けたこと、練習でやってきたことをレースにしっかり結びつけられたことが日本人1位になれた要因かなと思っています。本当に自己ベストで走りたいと思っていましたが、地元の皆さんの声援があって一緒に達成できた結果だと感じました。

――MGCに向けてはどんな考えを持っていますか。

鈴木 良いステップになったと思います。このレースで前向きに進むことかできます。監督とも戦略を練って、良い形で向かっていきたい。MGCは本当に独特の雰囲気があるので、これまでの経験を生かして勝負勘を発揮して、次にパリの切符をつかみたいと思います。

――今朝の体の状態は、これまでのマラソンと比べてどうでしょうか。

鈴木 ゴール直後は今までと比べて元気でしたが、一夜明けて、疲労、ダメージを感じています。ただ体全体の疲労出ているので、体全体が使えたのかな、と思いました。

――レースが終わって、地元のファンにどんな言葉を掛けられましたか。

鈴木 今回この地元だから挑戦したい、という気持ちがありました。万が一ダメでも悔いはないと言いますか、名古屋で失敗してもまた皆さん優しく受け入れてくださるんじゃないか、という思いもありました。出場を決断するときも支えてくれたと思っています。走り始めた後も、やっぱり地元パワーは大きいな、と感じました。走りたかったレースを走ることができて。ベルリンのときも再スタートと思いましたが、ここ愛知でも良い再スタートができましたね。皆さんと次のステージに向けて頑張りたい、と思いました。


2016年のリオオリンピックには10000mと5000mで出場。21年の東京はマラソンで出場し、19位に

――33kmの上りはどんな思いで。

鈴木 あの坂は頑張りました。負けていられない、と思って走りました。その後、さらにキツくなりましたが負けずに上りきることができました。

――パリオリンピックに出場すればオリンピックは3大会連続になります。目標はどうお考えですか。

鈴木 そこまではまだ言えませんが、皆さんパリオリンピックも楽しみにされていて、応援してくださるだろうと昨日感じられました。自分だけで頑張るのでなく、応援してくださる方たちがいるから頑張れる。皆さんが楽しみにしてくださることをパワーに変えて頑張りたい。

――昨日、暑さはどうでしたか。

鈴木 昨日は集中していたのか、それほど暑さを感じませんでした。しかし今回は初めて冬のマラソン練習だったので、(過去、寒い時期に故障することが多く)12月、1月は不安もあったのですが、勇気を持って取り組みました。

練習のきつさを一瞬で吹っ飛ばすレースの達成感、充実感

――トラックをやっていてマラソンに転向してよかったと自己分析できる部分は?

鈴木 これまでスピードを生かしきれなかったんです。でも、自分のトラックのスピードをもってマラソンを走りたい思いがすごくありました。それが少しずつでき始めたかな。これから再現していきたいです。

――こうなりたい自分をイメージすることがある、と以前お話しになっていました。今回は地元ということで、どんな自分をイメージされていましたか。

鈴木 ドームに入ってくるあのコースを走りたかったですね。それはイメージしていました。MGCに向かうにあたって、ここでもう1回練習を積んで、試して、その結果がどうなるかがすごく大事だったので、ラストを良い形でドームに入ってくることはずっとイメージしていました。

――これも以前の取材で、長距離の練習はキツいので素直に楽しいとは言えない、と話していましたが、今回で少し変わりましたか。

鈴木 (楽しいという言葉は)出てこないです(笑)。練習は9割五分きついのですが、レースはそれを一瞬で吹っ飛ばすほどの達成感、充実感があります。ランナーはそれを1回知ると、「また」となるんでしょうね。監督も今回、「苦しいのを楽しいと思えたら、もう一歩行けるよね」とおっしゃっていただいて、9割五分苦しいなかでも、楽しい意識を持とうとやりました。

――どんなところがマラソンランナーらしくなったと思っていますか。

鈴木 しっかり走ることで土台をつくった上で、質の高い練習をできたことが、今回一つ、マラソンランナーっぽくなった点だと思います。まだまだですが。

――これから、どんなマラソンランナーになりたいとお考えですか。

鈴木 え? どんなだろうな。こんなランナー? こんなランナーか?(高橋昌彦監督に向かって)任せていいですか?

高橋監督 じゃあ私が。こういうランナーになってほしい、というものが、(中学時代から全国大会に優勝していた)彼女を受け入れたときからありました。この選手を成功させることで特に子供たちに対して、夢を届けられるランナーになってほしいな、と思っています。子供たちは小さい頃に頑張ると、将来オリンピックに行けるんだ、という思いを持つ子供が多いと思います。昨日のレースを見てそう思った子供たくさんいる。うまくくいかないことがほとんどのなかで、数少ない夢を届けられるランナーだと思っています。その手伝いをできれば何より幸せで、指導者冥利に尽きる。それは私の夢でもあるんです。


右から高橋監督、鈴木、高橋尚子さん

写真・構成/寺田辰朗 写真/中野英聡、JMPA

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