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2023-03-14

【相撲編集部が選ぶ春場所3日目の一番】貴景勝、好調正代に圧勝も、やや故障発生の不安残す

好調の正代に何もさせず、圧勝した貴景勝。ただ左足を気にしていたのがちょっと気がかりだ

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貴景勝(押し出し)正代

「今場所のこの相手には、けっこう手こずるのでは?」というのは、どうやらこちらの勝手な想像に過ぎなかったようだ。

好調の相手に、何もさせなかった。綱取り大関の貴景勝が、正代を一方的に押し出して連勝だ。
 
立ち合い、この日の正代は胸を出すのでなく、右でカチ上げ気味にはじきにきたが、さらにその下から、ハズに当てた貴景勝の左手が伸びた。貴景勝はすぐ頭を下げて、付きすぎず、離れすぎずの自分の距離感をキープ。相手に抱えさせることもなく、横に回ることも許さず、そのまま胸元を突き押しで攻め、青房下に押し出した。
 
昨日の玉鷲戦に続き、前に出る相撲での圧勝。この日も取組後の取材には姿を見せなかったので胸の内は分からないが、どうやら初日の黒星のショックはとりあえず払しょくできた、と考えて差し支えなさそうな内容の勝利だった。
 
ただ、少し気になるのは、勝負がついた後、二字口に戻るときに一瞬立ち止まって、左足を気にするそぶりを見せたこと。その後、土俵を降りるときも、花道を引き揚げるときも、ゆっくりと、少し左足をかばっているように見えた。取組の中では特に痛めそうな場面はなく、表情を見る限りは、大きな故障ではなさそうにも思えるが……。
 
綱取りへ体勢を立て直してきた感もある貴景勝だが、明日4日目の対戦相手は阿炎。先場所は勝っているが、昨年11月場所の優勝決定戦を含めると、この1年で4回負けている相手で、初日に星を落とした翔猿とともに、貴景勝にとっては難敵だ。横への思い切った動きもあり、もし故障が発生しているのであれば、合い口の悪さを考え合わせると、これはかなりの関門になる。
 
もし、気にしていた左足も何ともなく、この阿炎を無事に突破できれば、そのあとは、番付順に当たっていくと仮定した場合、竜電、御嶽海、錦木と、(もちろんそれぞれ実力者なので油断はできないが)比較的にマトが大きくて立ち合いまともな、思い切り当たれる相手が続くと思われるので、一気に貴景勝が「綱取り軌道」に乗ってくる可能性もあると見るが、とにかくまずは明日をみてみないと、という感じではある。
 
この日は好調を思わせた若元春、琴ノ若の両小結が敗れ、3日目を終わって、幕内の全勝は、小結の大栄翔、翔猿以下9人となった。中には優勝経験者の大栄翔、優勝争いを何度も経験している髙安、実力者の錦富士、未知数の魅力の新入幕・北青鵬などがおり、多士済々かつ、力も十分ある顔ぶれだ。貴景勝の故障の度合いが分からないと何とも言えないが、また今場所も、平幕勢まで巻き込んだ優勝争いになる可能性は低くないだろう。

文=藤本泰祐

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