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2023-03-15

【相撲編集部が選ぶ春場所4日目の一番】貴景勝2敗。阿炎の動きについていけず、綱取りに暗雲

阿炎の横への動きについて行けず、土俵を飛び出す貴景勝。綱取りへ暗雲たれ込める2敗目となった

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阿炎(叩き込み)貴景勝

昨日痛めたと思われる左ヒザには、ガッチリとテーピングを施して臨んだが、やはり状態はよくなさそうだ。
 
貴景勝が阿炎の叩きに2敗目を喫した。立ち合いは左足から思い切って踏み込んだが、「当たって動くと決めていた。動きで、速さで勝とうと思っていた」という阿炎は、小さく突いてその勢いを止めると、すぐに貴景勝の首の後ろに手を当て、思い切った引き。阿炎にそのまま体をかわして右へと回られると、貴景勝はたたらを踏むようにして土俵の外へと飛び出していった。
 
出場力士で唯一の大関という責任も背負ってのことだろう。師匠(元小結隆三杉の常盤山親方)には「大丈夫です」と報告し、気丈に土俵に上がった大関だが、相手の横の動きについていくことができなかったこの日の内容は、単に4日目での2敗目、という以上に、綱取りへの暗雲が広がったことを感じさせるものだった。
 
この時点で2敗となっては、大関の立場としては、もう星勘定を考えずに、目の前の一番一番で勝利を重ねていく以外にないことになった。昨日も触れた通り、このあとは明日5日目が竜電、そのあとは御嶽海、錦木と、立ち合いはまともに当たってくるタイプの力士との対戦が予想されるが、とはいえこの日の阿炎戦の内容は相手も当然チェックするはずで、立ち合いはまともに当たってくるかもしれないが、そのあとは、イナすなり、廻しを取っての出し投げを狙うなり、横への動きを狙ってくることは明らか。どこまでその動きについていくことができるか。「日にち薬」が左ヒザに劇的に効いてくれればいいが、かなり大変な道のりになることは間違いなさそうだ。
 
3日目まで9人いた幕内の全勝力士は、この日を終わって大栄翔、翠富士、髙安、錦富士、北青鵬の5人となったが、この日は5人が5人とも好内容だった。北青鵬は攻めながら相手の上手を切り、スケールの大きさのみならず小技のさえも見せてくれたし、錦富士は一山本の突っ張りを跳ね上げて辛抱し、最後はモロ差しで食いついて寄り倒した。髙安は琴勝峰の、先場所つかんだであろう右からあてがって横を向かせようとする攻めをものともせず突き出し。翠富士はハズから左、右と低くモロ差しで入って北勝富士に何もさせず。大栄翔は一度引きを交えたものの、突きまくって御嶽海を突き出した。

この5人の内容を見ていると、すぐに大きく崩れる可能性はあまり感じられず、今場所は中日折り返しのあたりまでは小結以下に好成績者がけっこう何人も残っていそうな気がする。当面は、これから歯ごたえのある上位戦が多くなるであろう大栄翔、翠富士がどれだけ星を残していくかと、平幕下位の好調同士の対戦で誰がサバイバルに成功するか、という流れになるか。また、三役陣では霧馬山が若元春との次期大関候補同士の勝負に勝って1敗をキープ、優勝争いの上でも重要な存在に浮上してきた。

文=藤本泰祐

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