上写真=左カウンターを炸裂させて、テンカウントを聞かせた 写真_佐藤伸亮
1990年から2000年にかけて、強打と甘いマスクで人気を集めた元日本スーパーフェザー級王者で、東洋太平洋フェザー級、ライト級も制した渡辺雄二さんの甥が、ワタナベジムからプロデビュー。2月26日、東京・後楽園ホールでスーパーバンタム級6回戦に臨んだ高山涼深(たかやま・すずみ)はニラン・バオノック(タイ)に3回1分38秒KO勝ち。伯父とは違い、サウスポーのルーキーは、最後は左カウンターで倒し、レフェリーが10カウントを数えた。
「最初は気づかないうちに硬くなっていた」という高山だが、「2ラウンドからはだいぶ緊張もほぐれてきた」と、上下の打ち分けからターンで体を入れ替えるなど、じょじょにうまさを見せる。
「デビュー戦なので、すぐに倒してももったいないから」と、場慣れさせるために抑え気味だったと明かした小口忠寛トレーナーが「そろそろ仕掛けろ」と声をかけたのは、3回を迎える前。パンチを交換するなかで「自然と出た」と笑みも浮かべた高山。左から切り込んできたバオノックに、これも「無意識だった」という左を合わせると、ゴロリとキャンバスに転がった。
プロのリングを「楽しかった」と振り返った高山。「早く次がやりたいですし、欲を言えば日本人と、周りに楽しいと思ってもらえるような試合をしたい」と続ける。「小っちゃいときに会場に行っていたと親から聞かされた」という1996年10月生まれの22歳に、伯父の試合の記憶は残っていない。だが、Youtubeで見た渡辺雄二の「ぶっ倒していく」姿に心を奪われたという。
「パンチはあるほうだと思っているので、僕もぶっ倒していくボクシングで伯父を超えたい」
渡辺さんの弟の次男。男ばかり4人兄弟のなかでひとり、サッカーからボクシングに転向し、中学2年の秋にワタナベジムに入門した。アマチュアでは駿台学園高から法政大で51戦35勝10KO・RSC16敗。高校1年時のインターハイベスト16が最高成績で、大学では1年からリーグ戦のレギュラーに抜擢されるも個人戦では振るわなかった。高校、大学の直系の先輩になり、ボクシングの手ほどきを受けた小口トレーナーのもとで「プロでは少なからず結果を残していきたい」という。
世界に2度挑み、ついに頂点に立てなかった「伯父を超えたい」という高山の目指すところはひとつ。憧れは渡辺雄二、大好きなのはワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)というルーキーは、「高山涼深として有名になりたい」の言葉に決意を込めた。
文_船橋真二郎
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