上写真=右の強打は脅威だったが、サルダールは強弱を使い分ける巧さも披露して、ポイントアウト
26日、東京・後楽園ホールで行われたWBO世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦は、チャンピオンのビック・サルダール(28歳=フィリピン)が、世界初挑戦のサウスポー、同級2位の谷口将隆(25歳=ワタナベ)を右の強打と自分の距離をキープする巧みさで翻弄。118対110、117対111×2の3-0判定で退け、初防衛に成功した。
谷口は、テーマのひとつとしていた左ボディブローでの攻撃を随所に見せた。互いの後ろ手の攻撃を引きずり出し、それをかわし、カウンターを狙い合い、王者サルダールの右を外して左ボディを突き刺した。
しかし、次の攻撃につながらない。サルダールは、サッと離れたかと思えば、スッとサイドに動き、あるいはジワリと体を寄せ、挑戦者の二次攻撃を防いでしまうのだった。
連打できない谷口は、一撃で決めようというパターンに陥っていっそう単発となり、さらにサルダールの動きを見極めようとする時間が長くなる。そうなると、王者は右の強打を封印し、リードブローとしてモーションを小さくしてダブルで放つ。あるいは、左フックを強く叩きつける。谷口がリターンを放とうとすれば、同じ位置からは姿を消してしまうのだった。
ともにプロデビューした京口紘人が、ずば抜けた威力やタイミング、角度を持つ左アッパーカットを武器に、2階級制覇を達成したが、谷口は、出入りやサイドからの攻撃を主体とする技巧派。だが、この日は、左のパワーパンチを当てようとするあまり、正面からの攻撃に終始してしまった。
もっとも得意とする、相手の左サイドに滑り込み、左ボディから右フックにつなげるコンビネーションは皆無だった。
「私が持っていたプランの想定どおりだった。私がタニグチをコントロールしたんだ」
試合後、サルダールはこう言って胸を張った。谷口が左サイドを取ろうとすると、王者は小さなステップで右へ移動し、谷口の正面に立つ。
強打を打ち込もうとするあまり、正面に立ってしまうパターンと、サルダールが谷口を正面から動かさなかったパターン。いずれにしても、谷口がこのポジションから脱せなかったことが、試合の趨勢を決めたように思う。
序盤に左ストレート、あるいはアッパーで王者のボディを捉え、その手応えを感じ取ってしまったからこそ、ワンパターンにハマってしまった。柔らかく、サイドへのステップインを繰り返すスタートができていれば、あるいは……。
キャリア最高のシャープさを準備していただけに、残念でならない。
文_本間 暁 写真_佐藤伸亮
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