写真上=レオ・サンタクルス
Getty Images
★WBAスーパー世界フェザー級タイトルマッチ12回戦
レオ・サンタクルス(メキシコ)対ラファエル・リベラ(メキシコ)
サンタクルス:30歳/37戦35勝(19KO)1敗1分
リベラ:24歳/31戦26勝(17KO)2敗2分1無効試合
3階級制覇、カール・フランプトン(イギリス)、アブネル・マレス(メキシコ)らとの熱闘でウェストコースト地区では指折りの人気者になっているサンタクルスが30の大台に入って初めてのファイトに臨む。一発強打はないが、闘志むき出しで、休みなくコンビネーションを打ち出すサンタクルスだが、次なるビッグマッチのターゲットがなかなか見つからない。この8ヵ月ぶりのファイトは、戦力のチューンナップを見定める意味合いを持つ。
リベラはデビュー以来、2引き分け、1無効試合を挟んで25連勝してきたが、不敗だったジョエル・ディアス、ジョエト・ゴンサレス(ともにアメリカ)に敗れた。4ヵ月前の前哨戦は格下相手に初回KO勝ちながら、どこまで勢いを取り戻しているか。
順当ならサンタクルスの連打が中盤までにストップ勝ちを呼び込むはずだ。この試合はアメリカのFOXで中継される。
◆岩佐亮佑、信頼回復へのラストチャンス
★スーパーバンタム級12回戦
岩佐亮佑(セレス)対セサール・フアレス(メキシコ)
岩佐:29歳/28戦25勝(16KO)3敗
フアレス:27歳/29戦23勝(17KO)6敗
試合にはIBF挑戦者決定戦とクレジットされている。つまり勝ったほうは、IBFが挑戦資格者とするランキング1位、2位にランクされる。キャリアの上でも前IBFチャンピオンの岩佐には大事な一戦だ。だが、それ以上に、内容に注目したい。このサウスポーの潜在能力からすれば、念願の世界タイトル獲得となった小國以載(角海老宝石)戦も含めて万全の試合内容とは言えない試合が続いている。2度目の防衛に失敗したTJ・ドヘニー(アイルランド)戦では、自ら仕掛けることなく、対戦者のアタックにあっさりとペースを奪われた。今回はそうはいかない。本来のハードでビターな左ストレートを復活させなければ、もはやあとがない。
フアレスは名うてのワイルドスインガー。アイザック・ドグボエ(ガーナ)には痛烈に倒されたが、ノニト・ドネア(フィリピン)には厳しく食い下がった。岩佐としてはペースを乱すことなく、鋭敏な感覚を持ちながら試合を管理したい。不安はいっぱいながら、戦力の絶対値からすると、負ける相手ではない。
◆アメリカのミニマム級リコナが初防衛戦
IBF世界ミニマム級チャンピオンのカルロス・リコナ(アメリカ/23歳/14戦14勝2KO)が、ディージェイ・クリエル(南アフリカ/23歳/14勝6KO1敗1分)を相手に初防衛戦を行う。
リコナはつい半年前まではほとんどノーマークの存在だった。ところが昨年12月、フィリピンの元アマチュアスター、マーク・アンソニー・バリガをクロスファイトの末に破って、アメリカ人初のミニマム級世界王者になり、ちょっとした話題になった。
ただ、今後の展開となるとどうか。ライバルが皆無に近い。今回も世界的には無名のクリエルが相手。デビュー戦を落とした以外は14連勝を記録しているが、目立った戦歴と言えば、日本で谷口将隆(ワタナベ)とクロスファイトを演じたデクスター・アリメンテ(フィリピン)に勝った星くらい。
リコナとしてはリング上でさまざまな可能性を表現しないと、トップファイトからは縁遠くなってしまう。
同じカードにはウェルター級の激闘派オマール・フィゲロア(アメリカ/29歳/27勝19KO1分)とジョン・モリナ・ジュニア(アメリカ/36歳/30勝24KO7敗)が対決。元WBO世界バンタム級王者マーロン・タパレス(フィリピン/26歳/31勝14KO2敗)、リオ五輪アメリカ代表カルロス・バルデラス(22歳/6戦6勝(5KO)も出場する。
★WBA世界ミドル級タイトルマッチ12回戦
ロブ・ブラント(アメリカ)対ハッサン・バイサングロフ(ロシア)
ブラント:28歳/25戦24勝(16KO)1敗
バイサングロフ:21歳/17戦17勝(7KO)
昨年10月、村田諒太(帝拳)からタイトルを奪い取っていったブラントが地元で凱旋防衛戦。184cmのスリムな長身からのジャブが冴え、村田のプレスを抑えきった俊才も、まだまだ未完の素材に見えた。そういう意味では、この試合も戦力を積み上げる戦いになる。
チェチェン出身でウクライナをベースに戦うバイサングロフも今回がアメリカ・デビュー戦になる。こちらも未知数名部分が多い。
ブラントはトップランクと長期契約を結んでおり、きちんとした形で勝ちたい。
この試合はESPNで全米中継される。
◆日本のライバル候補が大事なテストマッチ
アンダーカードのWBCコンチネンタルアメリカ・バンタム級タイトルマッチ12回戦では、シカゴのホープジョシュア・グリーア・ジュニア(アメリカ/24歳/19勝11KO1敗1分)がジョバンニ・エスカネル(フィリピン/28歳/19勝12KO3敗)と対戦。
カギ型に落とす左手からのフリッカージャブを攻防の口火にする、いわゆるデトロイトスタイルの使い手グリーアは、歯切れのいい連打が持ち味。スケール感アップが課題か。エスカネルはこのところ8連勝。前戦ではやりにくいレネ・ダッケル(フィリピン)を棄権に追い込んでいるだけに、おもしろい戦いになりそうだ。
女子フェザー級8回戦にはミカエラ・メイヤー(アメリカ/28歳/9戦9勝4KO)が出場
する。リオ五輪代表から、トップランクと契約してプロ転向し、急ピッチでキャリアを積んでいる。マチュア時代は雑な面も多かったが、プロでの完成を目指している。
大手ペイテレビのSHOWTIMEでは定期的に若手有望株を集めたカードを提供している。15日、カンザス州マルベインから中継するカードのメインイベントは、かなりの注目だ。スーパーライト級10回戦でショージャホン・エルガチェフ(ウズベキスタン/27歳/15戦15勝14KO)とマイカル・フォックス(アメリカ/23歳/19戦19勝5KO)が対戦する。
15世紀中央アジアの軍神ティムールをあだ名に持つエルガチェフは戦績が示すとおりサウスポーの強打者。突き刺すような左ストレートも強烈だが、返しの右フックがとんでもなく強い。6度もウズベキスタン王者となったアマチュア時代、202勝(14敗)の「ほとんどがKO勝ちだった」というのもうなずける。
対するフォックスは父がトレーナー、兄もミドル級の有力選手アランテスの恵まれた環境で育った。優れたアウトボクサーだが、まだはっきりと線の細さが残る。ただ、エルガチェフを13cmも上回る192cmとこのクラスでは飛び抜けた長身。中央アジアの新星は、この距離を潰せるか。
セミファイナルのスーパーバンタム級10回戦、ホセ・アンヘル・エルナンデス(アメリカ/28歳/12勝7KO1敗)と、初めてイギリスから出て戦うトーマス・パトリック・ウォード(24歳/25戦25勝4KO)のカードにも注目が集まっている。
このほかにも東欧の精鋭がラインナップに並ぶが、この日、2戦目を迎えるイズム・イズバキ(カザフスタン/24歳/1戦1勝1KO)にも注目。身長198cmの巨人は地元ではキックボクサーとして活躍していたが、ニューヨークの若手プロモーター、ドミトリー・サリタ(元スーパーライト級世界ランカー)と契約してボクシングに転向してきた。期待どおりの戦いはできるのか。
◆ボクシング帝国復活の狼煙?
かつてあれほどの隆盛を誇ったドイツだが、最近はすっかり勢いを失って小ぶりな興行が多いと、このコーナーでも書いたはず。その人気復活をかけて、伝説の名プロモーター、ウィルフリード・ザウアーラントが手がけるのが、16日、ラインラント=プファルツ州コブレンツでの興行だ。
最大の目玉になるのはスーパーウェルター級のアバス・バロー(ドイツ/24歳/4戦4勝2KO)だ。アフリカ・トーゴ出身の両親を持ち、アマチュアで活躍。2017年に世界選手権3位、ヨーロッパ選手権優勝と立て続けに実績を残した。世界選手権を観戦したデビッド・ヘイやウラジミール・クリチコからも賞賛された。その後、ザウアーラント・プロモーションと長期契約を結び、プロ転向。最初からタフなマッチメイクで育てられ、わずか5戦目で対戦するのは元IBF世界スーパーウェルター級チャンピオン、カルロス・モリナ(メキシコ/35歳/29勝8KO10敗2分)。176cmのバランスの取れた体からシャープな左フック、右ストレート、アッパーを打ち込むバローにとっては、しぶとさには定評のあるモリナとの試合は将来的に価値のある戦いになりそう。
同じカードでは昨年、イワン・バランチク(ベラルーシ)とのWBSS1回戦で初黒星を喫したスーパーライト級のアンソニー・イート(スウェーデン/27歳/21勝7KO1敗1分)がカムバック戦、マーシャルアーツのチャンピオンシップを5度も握ったジョマ・セイディ(ドイツ/25歳/14戦14勝6KO=スーパーウェルター級)、やはりアマチュアスターだったレオン・バン(ドイツ/23歳/12戦12勝7KO=ライトヘビー級)らが登場する。
もうひとり注目は女子フェザー級のソフィー・アリシュ(ドイツ)だ。まだ17歳で迎えるデビュー戦になる。オーストリアで少女時代を過ごし、13歳のときにベルリンに帰ってからボクシングを始めた。ドイツ史上最年少15歳でドイツ選手権に優勝するなど、天才少女と言われた。今後は五輪などにも野心を見せているとも言われるが、将来を考えてのプロデビューとなった。
文◎宮崎正博
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