写真上=戸髙(左)に右を決める堀川
写真◎佐藤伸亮
日本ライトフライ級王座決定戦、1位の堀川謙一(三迫)対2位・戸髙達(レパード玉熊)の10回戦は、技巧派のベテラン、堀川が一方的に試合を支配。右目を痛めた戸髙は8回終了とともに棄権して、堀川のTKO勝ちとなった。38歳の堀川は3年2ヵ月ぶりの日本王座復帰。
「長かった。これだけ(日本王座奪回)のためにこの3年間をやってきました」
堀川は次々にわき上がる喜びを記者たちに伝える。その表情からは心の底からの満足にあふれて見えた。
環境は人をここまで変えるものか。2015年、小野心(ワタナベ)をやはりTKOに破って最初に日本タイトルにたどり着いたときも、そこには確かに感動があった。ただ、どこかに悲愴な覚悟も寄り添って見えていたものだ。初防衛戦に敗れて引退を表明。その後、上京して三迫ジムに移籍し、活動を再開した。
ときに36歳。持ち前の速い動きも、奔放に飛び跳ねたあのころから、やがて無駄のない間合いの駆け引きへと変わっていく。着地時間が長くなったぶんだけパンチに威力が増し、それまで少なかったKO・TKO勝ちが飛躍的に増えていく。実は、この日を含めて7連続KOである。
2017年に一度、WBOアジアパシフィックのベルトを手にしたこともあるが、ナショナルチャンピオンシップへの思いは人一倍だった。アジアのリージョナルタイトルはその直後、あえて挑んだ日本タイトル挑戦失敗と同時に失ってしまう。だから、堀川にとってのこの日は、待望の戦いだった。
戸髙はがんばり屋でパワフルだが、キャリア55戦目(39勝13KO15敗1分)の老練に比べると単調だったのは仕方ない。堀川は楽々と手玉に取る。懸命に追いかけてくる相手に、下がりながらの右ストレートを上下に散らす。ジグザクに位置を踏み換えながら、角度を違えたアタック。距離が狭まるとクリンチに持ち込み、うまく体をさばいてアッパーカットを突き上げる。毎ラウンドのように、ポイントは堀川へと流れていった。
中盤を過ぎるといよいよ試合はワンサイド。両者の技量、経験が生むリングの知性の差がなおもあからさまになっていく。ただし、戸髙も奮闘する。堀川の守備力に阻まれてクリーンヒットはないが、力のある左フック、右クロスを狙ってみせる。勝負は判定に持ち込まれるかに見えた8回終了時。青コーナー側の戸髙が棄権を申し出て試合は終わる。8回途中、右目が突然見えなくなったという。試合後に眼窩底骨折の疑いが判明している。
悲願叶った堀川は、むろんこれが最後の到達点ではないという。
「3月10日に39歳になります。体力も精神も自分次第だと思います」
そして次戦。
「まずはこのタイトルの防衛戦ですね」
大事なベルトを抱え込みながら言った。
取材◎宮崎正博
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