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2019-01-31

【海外ボクシング】ウィークエンド・プレビュー コバレフの復活なるか 厳しい条件下でアルバレスと再戦

写真上=昨年8月に行われたアルバレス(右)対コバレフ第1戦は、アルバレスが7回TKO勝ち(写真◎Getty Images)

2月2日・フリスコ(アメリカ・テキサス州)

★WBO世界ライトヘビー級タイトルマッチ12回戦
エレイデル・アルバレス(コロンビア)対セルゲイ・コバレフ(ロシア)

アルバレス:34歳/24戦24勝(12KO)
コバレフ:35歳/36戦32勝(28KO)3敗1分

 今週の目玉はなんと言ってもこのリターンマッチである。昨年8月の初戦では、コバレフがやや有利の展開から、7回にアルバレスが3度のダウンを奪って劇的な王座獲得を果たした。長らくトップコンテンダーの位置にいながら、チャンスに恵まれなかったコロンビア人は感激にむせんだものだ。

 この結果を踏まえて言えば、アルバレスが優位と見るのが妥当なところ。苦労して手に入れたタイトルだ。当然、意欲も高まっているはず。コバレフは2017年のアンドレ・ウォード(アメリカ)に続き、2年連続でストップ負けを喫したことになる。圧倒的な破壊力を誇った以前に比べると、その威圧感はいささか減退してきたようにも思える。

 さらにコバレフには大きな不安もある。昨年6月、さる婦人を殴打したとして、この1月になって逮捕されているのだ。すぐに5000ドルの保釈金を払って釈放されたが、今回のアルバレス戦が行われるかどうか、ギリギリになるまで微妙なところでうろついていた。そのせいもあってか、ジョイントイベントのふたつの世界戦はESPN本放送でオンエアされるが、このアルバレス対コバレフ戦はESPN+での中堅が予定されている。

 不安はいっぱい。状況を考えれば、コバレフは選手生命を賭けた戦いにもなる。世界王者の歓喜を初めて知ったアルバレス攻略は、確かに難しい賭けになりそうだ。

◆バルデスが11ヵ月ぶりに復活

★WBO世界フェザー級タイトルマッチ12回戦
オスカル・バルデス(メキシコ)対カルミネ・トマゾーネ(イタリア)

バルデス:28歳/24戦24勝(19KO)
トマゾーネ:34歳/19戦19勝(5KO)

オスカル・バルデス(左)
写真◎Getty Images

 バルデスにとっては昨年4月以来のリングになる。オーバーウェイトで計量した上に増量して戦ったスコット・クイッグ(イギリス)の暴挙に、試合には勝ちはしたがアゴの骨折というあまりに手痛い代償を負い、ブランクを余儀なくされた。勇猛果敢な戦いぶりで、今後のフェザー級の軸にと期待されるバルデスだが、実はKOからは2年以上遠ざかっている。攻防ともやや小ぶりという意地悪な意見もある。

カルミネ・トマゾーネ(左)
写真◎Getty Images

 挑戦者のトマゾーネは2年前、プロ活動を中断してリオ五輪に出場。初戦に勝って「プロとして五輪に初めて勝ったボクサー」として話題にもなった(同大会ではアムナット・ルエンロンも初戦を突破している)。中間距離から飛び込んでパンチをまとめ、また間合いを取る。典型的なイタリア型技巧派だが、パンチの威力はもうふたつくらい。バルデスが持ち前の馬力で追いまくって、久々のストップ勝ちを収めるというのが順当な見方か。

◆カミーの王座獲得濃厚?

★IBF世界ライト級王座決定戦12回戦
リチャード・カミー(ガーナ)対イサ・チャニエフ(ロシア)

カミー:31歳/29戦27勝(24KO)2敗
チャニエフ:26歳/14戦13勝(6KO)1敗

リチャード・カミー
写真◎Getty Images

 カミーは2年半ぶりのIBF王座獲得のチャンスになる。世界を転戦しながら不敗のレコードを守ってきたカミーは、当時のIBF王者ロバート・イースター・ジュニア(アメリカ)と互角にわたりあいながら1-2の判定負けで、タイトル獲得を逸した。その直後にはロシアに出かけ、突進型のデニス・シャフィコフとの戦いにもやはり1-2のクロス・デシジョンを落とした。ただし、昨年には22連勝15KOを続けていたアレハンドロ・ルナ(アメリカ)をTKOに破るなど強味を見せている。

 チャニエフは世界的には無名に近い。フィリピンの偉大なる拳雄フラッシュ・エロルデの孫でテストされないまま世界ランクに入っていたファン・マルティン・エロルデ、さらにはベネズエラの強打者イスマエル・バロッソにダウンの応酬の末に判定勝ち。ただ、その内容からは絶対的な力は感じられない。

 実直で堅調なカミーが宿願を果たすとみる。

◆年間最優秀新人ロペス登場

 フリスコの前座には注目の選手たちが次々に登場する。

パトリック・デイ
写真◎Getty Images

 村田諒太(帝拳)のスパーリングパートナーも務めたスーパーウェルター級パトリック・デイ(アメリカ/26歳/16勝6KO2敗1分)は不敗のロシア人イスマエル・イリエフ(25歳/11勝3KO1分)と対戦。一発の魅力はないが、堅調な攻防を見せるディがここで勝って、世界上位にまた一歩近づけるかどうか。イリエフはセルゲイ・ラブチェンコ(ベラルーシ)にも勝っているが、決め手はない。

ヤニベク・アリムハヌリ
写真◎Getty Images

 2013年のアマチュア世界選手権チャンピオンでリオ五輪ベスト8のミドル級ヤニベク・アリムハヌリ(カザフスタン/25歳/4戦4勝1KO)は相変わらず急ピッチでキャリアを作っている。今度の相手は一度はホープと見なされたこともあるスティーブン・マルチネス(アメリカ/28歳/18勝13KO4敗)。スリムなサウスポーで、好戦的に組み立てた技巧が魅力のアリムハヌリだが、今度はパンチの威力も見せてほしい。

 この2試合以上に注目はテオフィモ・ロペス(アメリカ/21歳/11戦11勝9KO)が12戦目にして挑むNABF北米、WBO北米、USBA全米の3つのタイトルをかけた戦いだ、多くのアメリカ・メディアから昨年の最優秀新人に選出されたロペスは抜群のセンスとハードパンチを持つ。かかったローカルタイトルはそれぞれWBC、WBO、IBFの直下に置かれたものだけに、3本ベルト獲得は、そのまま世界タイトルへ一気に近づくことにもつながる。世界挑戦経験もあるディエゴ・マグダレノ(アメリカ/32歳/31勝13KO2敗)はスケール感こそないが、厳しいプレッシャーから試合を作ってくる。ロペスはどんな形で跳ね返していくのだろう。

◆イギリスで2019年シーズンが本格的にスタート

 イギリス、フランスでは伝統的に1月と8月はボクシング興行はお休みになる。よほどの大型企画でない限り、ボクシングイベントはまず行われない。だから、2月最初の週末はいきなりの興行ラッシュになる。

ローレンス・オコリー
写真◎Getty Images

 土曜日、イギリス・ロンドン・グリニッジのO2アリーナのメインイベントはヨーロッパ(EBU)スーパーウェルター級タイトルマッチ12回戦。スペインを初めて出て戦うチャンピオンのセルヒオ・ガルシア(26歳/28戦28勝13KO)のマネージャーは、今はスペインに住アルゼンチンの偉大なる元世界ミドル級チャンピオン、セルヒオ・マルチネス。挑戦するのはユースのアマチュアスターだったテッド・チーズマン(イギリス/23歳/15戦15勝9KO)だ このカードにはエディ・ハーン傘下の若手がずらりと登場する。英連邦ミドル級王座決定戦にはフェリックス・キャッシュ(イギリス/25歳/10戦10勝6KO)、WBAコンチネンタル・ライトヘビー級王座決定戦にはジェイク・ボール(イギリス/26歳/12勝9KO1敗)、同クルーザー級タイトルマッチにはローレンス・オコリー(イギリス/26歳/10戦10勝7KO)。いずれも2年以内に世界タイトル戦にからむ可能性が高い逸材ばかりだ。

 ハーンは抜かりなくさらにその次のラインナップもそろえてくる。この夜もそんな若手を惜しみなく投入する。

スコット・フィッツジェラルド
写真◎Getty Images

ジョン・ドーチェティー
写真◎Getty Images

チャールズ・フランクハム
写真◎Getty Images

 英連邦大会金メダリストのスーパーウェルター級スコット・フィッツジェラルド(イギリス/27歳/11戦11勝8KO)、英連邦ユース金、ヨーロッパ・ユース銀のスーパーミドル級ジョン・ドーチェティー(イギリス/21歳/2戦2勝2KO)。さらにこの日デビュー戦を迎えるスーパーフェザー級のチャールズ・フランクハム(イギリス/19歳)は英連邦大会、ヨーロッパ選手権優勝。これだけタレントがそろえば、そりゃ、大きな興行もできるはずだ。

◆次世代の世界ヘビー級チャンピオン?

 金曜日にはShowtime恒例の若手を中心にしたカードが行われる。こちらにも精鋭がずらり。不敗のスーパーフェザー級が激突するアブラハム・ノバ(アメリカ/25歳/14戦14勝10KO)対オルワセーン・ジョシュア・ワハブ(ナイジェリア/28歳/18戦18勝11KO)戦やスーパーミドル級のロナルド・エリス(アメリカ/29歳/15勝10KO2分)、ライト級のトーマス・マティセ(アメリカ/28歳/13勝10KO1分)ら見逃せない選手ばかり。

 ただ、もうひとり、ヘビー級4回戦に出場するロドニー・ハインズ(アメリカ/23歳/3戦3勝3KO)はさらに注目だ。ことによるとアンソニー・ジョシュアやでデオンテイ・ワイルダーの次の世代の世界ヘビー級チャンピオンになるかもしれない。昨年の全米ゴールデングローブ優勝の2ヵ月後にプロ入り。身長197cmの長身でパンチはとにかく鋭い。動きも実にスムーズだ。試されなければならない点はいっぱいながら、こと素材としてみるならば、とんでもないスケールを感じるのだ。

文◎宮崎正博

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