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2019-01-10

【ボクシング】田中恒成vs.田口良一 “幻の対戦”が、1年のときを経て3月に実現!

上写真=田中恒成(左)と田口良一。ファン熱望の対戦がついに実現!

“幻の対戦”が、とうとう実現へ──。WBO世界フライ級チャンピオン田中恒成(23歳=畑中)と、元WBA&IBF世界ライトフライ級統一チャンピオンで現WBOフライ級4位の田口良一(32歳=ワタナベ)が、3月16日(土)、岐阜メモリアルセンター で愛ドームで激突する。10日、愛知県名古屋市のCBCテレビで発表会見が開かれ、田口も東京から駆けつけて会見に臨んだ。
 15日(火)発売『ボクシング・マガジン2月号』の特集「読者が選んだ2019今年中に見たいドリームマッチベスト10」で、読者&ファンの投票多数。上位にランクされた超人気カードが早くも実現する──。

左から父・斉トレーナー、恒成、畑中会長、田口、芳野一貴マネージャー。田中のベルトが3本。田口のベルトが2本。計5本のベルトがずらりと並んだ。

紆余曲折の果てに──

 両者は田口がWBA、田中がWBOのライトフライ級王者だった2017年に、相思相愛で対戦が内定。年末に王座統一戦が実現するはずだったが、同年9月、田中が2度目の防衛戦で両目眼窩底骨折を負い、泣く泣くキャンセルするはめになった経緯がある。特に熱烈にアピールしていた田中が、東京のワタナベジムまで出向き、ジムの階下で田口の出待ちをし、直接謝罪するということもあった。
「律儀で知的な好青年」と田口も田中に対してさらに好感を抱いたのだという。
 今回の両者顔合わせは、当初、実現しないとアナウンスされたが、きっとあのときの田中へのお返しの意味も込めて、田口は名古屋までやってきたのだろう。

田中戦が流れた田口は、その想いをメリンドにぶつけた 写真_馬場高志

 田中戦が流れた田口は、同年5月に八重樫東(大橋)を初回で下し、IBF王座を獲得したミラン・メリンド(フィリピン)との統一戦へ。見事判定で勝った田口は、井岡一翔(WBC&WBA世界ミニマム級)に次ぐ、2人目の日本人統一世界チャンピオンとなった。

 だが、昨年5月、国内史上初の統一王座防衛戦に臨んだ田口は、ヘッキー・ブドラー(南アフリカ)に判定負け。両王座を一気に手放すことになったのだ。
「負けたら引退と思っていたけれど、日が経つにつれてリベンジしたい気持ちが強くなった」(田口)。しかし、ライトフライ級リミットを保つには、減量は限界だった。とどまるか、フライ級に上げるか、迷いながらの9月20日の復帰会見だった。

世界中が「コウセイ・タナカ」を認めた木村戦 写真_早浪章弘

 その4日後、田中恒成は、WBO世界フライ級チャンピオン木村翔(青木)に挑み、気持ちと気持ちが真っ向からぶつかり合う激烈なバトルをフルラウンドにわたって繰り広げて勝利。世界最速12戦で3階級制覇を達成したが、この歴史的な名勝負は日本のファンにとどまらず、海外のファン、関係者をも虜にし、WBOは年間最高試合に選出。また、先ごろ、アメリカの専門サイト『BoxingScene.com』でも同賞を受賞した。

「あんな試合を見せてもらって、気持ちをつかまれた」という田口。
そして、自分の“失態”で試合を流してしまった負い目を抱きつつも、田口戦への想いがどうしても捨てきれなかった田中。1度は“幻”と化したファン待望のビッグマッチは、ふたたび相思相愛となって一気に決定へと運んだのだ。

井上尚弥の存在

井上尚弥の地元・座間に赴いて挑戦を受けた。打たれても決してひるまず打ち返した姿は、高校生だった恒成の心をわしづかみにしたのだ 写真_BBM

「プロになる前、田口選手と井上尚弥選手の試合を見に行ったんです。そのときに、田口さんの強さが印象に強く残っていて……」(田中)
 2013年8月、日本ライトフライ級王者だった田口が、すでに話題となっていた“モンスター”井上尚弥(大橋)の挑戦から逃げず、試合でもまったく引かず、判定で敗れはしたものの堂々と打ち合ったあの試合──。
「あの試合があったから、僕は世界チャンピオンになれた」と田口はのちに公言してはばからないが、その3ヵ月後に高校3年でプロデビューした田中の心には、「いつか田口さんと戦いたい」という強烈な想いが宿ったのだった。そして田中の心を読むならば、「あの人は本当に凄い」とその存在の大きさを認め、追いかける井上尚弥と真っ向勝負した田口と戦いたい。そういう想いもきっと強いはずだ。
 井上尚弥と田中恒成。努力するふたりの“天才”と拳を交わす。田口は「不思議ですよね。天才のふたりと相まみえる、戦えるというのはボクサー冥利に尽きます」と静かにその喜びをかみしめた。

情熱と情熱がクールに火花散らす

「様々な気持ちを込めて戦います。そして倒します」(田中)

 念願の田口戦が実現することの喜びと同時に、田中にとっては、「今度こそ」の想いも強烈だ。前戦の木村戦は、「名勝負間違いなし!」と戦前から言われていたものの、テレビの生中継は地元CBCのみ。全国で放映されたなら、「田中恒成」の名は日本中の一般ファンにまで轟いたはずだった。ボクシングファン、関係者の間では、その上質さは当然熟知しているが、世間の認知度は、まったくそれに見合うものではない。われわれも歯がゆい思いを続けてきたが、当然、本人の悔しさはそれ以上だろう。だから、今回の全国生中継は、悲願のビッグチャンスなのである。
「前にできなかった想いとか、対戦したいと言ってくれた田口選手への感謝の気持ち、絶対勝ちたいという気持ち、いろんな気持ちを含めて、心で戦いたい。
 今回も、強い気持ちを準備の段階でしっかりつくった上で、気持ちだけじゃなくて、ボクシングのレベルの高さを見せれるような試合をしたい。勝つだけじゃなく、もちろん今回、倒しにいきます」
 田中恒成は、クールに、でも、情熱的な言葉をほとばしらせた。

「見ているみんなが震えるような試合を」(田口)

 そして田口──。
「いきなりフライ級に上げての世界戦。賛否あるかもしれないけれど、ライトフライでは正直、減量苦があったので、パフォーマンスはいいものを出せると思う。
 より強くなった田中選手に勝つことで、より自信が深まるし、より成長できる。自分との戦いもきっとあるので、気持ち対気持ちの戦いになる。
 熱く、みんなが震えるような試合をしたい」
 こちらも、いつものポーカーフェイスに炎を包み込んだ。

 当日午後4時からTBS系で全国生中継。
でも、ふたりの男の熱情を同じ場所、空間で感じたい。超満員の大歓声を、彼らに降り注ぎたい。

文&写真_本間 暁

田中恒成は3階級目のフライ級王座初防衛戦。田口は2階級制覇のかかる試合となる

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