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2018-12-25

【ボクシング】「好戦的に行く!」 30日、伊藤に挑むチュプラコフが練習を公開

上写真=ミット打ちも軽いものだったが、まとまりのある選手という印象を与えた

30日(日)、東京・大田区総合体育館でWBO世界スーパーフェザー級チャンピオン伊藤雅雪(27歳=伴流)に挑む1位の指名挑戦者で無敗のエフゲニー・チュプラコフ(28歳=ロシア)が来日し、東京・神楽坂の帝拳ジムで練習を公開した。ミット打ち、サンドバッグ打ち、ロープ・スキッピングと軽めの練習に終始したが、「心も体も整っている。好戦的に戦って、チャンピオンになる」と自信を示した。

練習前の会見に臨んだチュプラコフは、緊張もあっただろう。ロシア人特有の寡黙さをたたえていたが、空気が一変したのは、巨体のニコライ・ポポフ・トレーナーの“ロシアンらしからぬ”底抜けの明るさから。
 チュプラコフは、大きな試合が決まると故郷のエカテリンブルクを離れ、アメリカ・ロサンゼルスに向かい、あのフレディ・ローチの師事を仰ぐ。3、4年前にはマニー・パッキャオ(フィリピン)やアミール・カーン(イギリス)のスパーリングパートナーも務めたが、「パッキャオが逃げ出したくらいさ! いやこれ冗談」とポポフ・トレーナー。爆笑する記者団につられて彼らの心もほぐれ、一気に柔和な会見となった。
 

左からアンドレイ・ナポリスキフ・マネージャー、チュプラコフ、ポポフ・トレーナー。こんな陽気なロシア陣営は初めて見た

 身重のヴィクトリア夫人を残し、2ヵ月間のLAキャンプをこなし、そのまま来日した。その間の11月30日には、第一子アリサちゃんが誕生。「トレーニングは自分の仕事だからそこは割り切って。もちろん娘のことは、写真や動画しか見ていない」。しかし、またひとつ大きなモチベーションを得たことは確かである。とここでまたポポフ・トレーナー、「ベルトを持って帰らないと、家に入れてもらえないんだって!」とジョーク。またまた大爆笑である。
 こういう冗談を言える人物は、心理面をコントロールするのが非常に上手いタイプと見る。そんな人物が言う。
「イトウと比べてエフゲニーには心理的な重荷がない。イトウにはベルトを守らなければならないという心理が必ず働くはずだ。でもエフゲニーは、失うものがない。ただベルトを奪いに行く。そこだけに集中できる」。このトレーナーがカギを握っているように思う。

力は五分程度、手の打ちも見せていないが、非常にコンパクトに打つ印象

時折、右のオーバーハンドを放り込むサービス精神も見せた

 ニックネームの“ハッピー・ギルモア”とは、「好きな映画の主人公の名前。映画も好きだし、主演した俳優も好きなので」。『俺は飛ばし屋 プロゴルファー・ギル』というアメリカの映画で、役者はアダム・サンドラ―。「ハッピーという言葉も好きなんだ。常に微笑を忘れないようにしているし、人を笑顔にさせるのが好き。ボクの試合を見て、みんながハッピーになってくれれば」との想いがこもっているのだそうだ。

 汗もかかないような軽いメニューを見た団太路・伴流ジム会長は、「思ったより小さいという印象しかありませんね」と苦笑するしかなかった。LAで、ルディ・エルナンデス氏とともに伊藤を見ている岡辺大介トレーナーは、「岡田(博喜)くん、藤本京太郎くん(いずれも角海老宝石)がロスに来ているときに、(チュプラコフを)見ました。やっぱり左ジャブが当たりそう。相手が出てくるなら打って下がらせます」と、重ねてきたトレーニングに手応えを感じている様子。

カメラマンの要求に、丁寧に応じる

 元WBO世界スーパーライト級チャンピオン、ルスラン・プロポドニコフとはかつて同じチームでいまも交流があり、「彼のボクシングスタイルも人柄も尊敬している」という。プロポドニコフといえば、猛烈なファイターで、常に激戦を演じてきた猛者。「ボクも好戦的に戦う」とチュプラコフは宣言するが、そこまでの猛進スタイルではない。ただし、「アマチュアで150戦くらいして、120くらい勝っている。アマでもプロでも1度もダウンしたことがない」というだけに、技術の確かさは間違いなくある。20戦20勝(10KO)。「突出したものはないけれど、それだけの戦績を残しているということは、きっと何かある」と伊藤が語っていたとおりだろう。

「彼は立てた作戦を忠実に遂行する。そういうことに長けている」とポポフ・トレーナー。伊藤より約10cm低い身長をどう生かすか。ハイレベルな技術戦を期待したい。

文&写真_本間 暁

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