写真上=正規王者の新藤(左)と暫定王者の渡部はドローで両者「防衛」
写真◎佐藤伸亮
「試合が終わったあとは、精いっぱい戦ったというだけで、採点は分からなかったですね」
負傷休養から復帰した新藤寛之(宮田)は20日、東京・後楽園ホールで日本スーパーウェルター級王座統一戦を行い、タイトルを守った。ジャッジ3者の採点は三者三様。暫定チャンピオンの渡部あきのり(角海老宝石)との統一戦は引き分けだった。
同じサウスポーの渡部相手に、数こそ少なかったが右ジャブを当て、左ストレートをロングレンジから、あるいはクリンチ際から手際よくヒットした。ただ、何がジャッジの印象を悪くしてしまったのかも理解できていた。
「相手は打ち合いに巻き込んでくるから、それに乗ったらやばい。ジャブを当てながら、自分の間合いで打ち合いたいと考えていたんですけどね。でも、思いどおりにはそんなにいかなかったかな」
7回には自ら打撃戦に転じ、打ち勝ってみせた。ただ、終盤、ボディブローを不用意に食って上体を折り曲げる。それが大きなマイナスポイントにもなった。最終回、バッティングではあったが渡部は右目下を大きく腫れ上がらせ、おそらく視界を失っていた。それでも、新藤は決定的なパンチを決めることはできなかった。
ベルトを守り、ホッとした表情の新藤
写真◎ボクシング・マガジン
引き分けという結果は、正規チャンピオンも暫定チャンピオンも防衛になるという。それでは暫定という仮のチャンピオンに正規チャンピオンと同等の権威を認めることにならないかという懸念も残るが、それがJBCのルールである。何はともあれ、新藤にチャンピオンベルトは残ったのは紛れもない事実である。
ただし、今後はどうなる? チャンピオンカーニバルでは1位・松永宏信(横浜光)の挑戦を約束させられている。暫定王者との統一戦はそれ以降となると、来年の夏あたりまでチャンピオン並立状態が続くことになる。
「自分としては、ダイレクトの再戦でも、指名防衛でも、どちらでもかまいません」
渡部は花咲徳栄高校ボクシング部時代の1年先輩にあたる。あのころ、力の差は段違いだった。インターハイ準優勝した先輩とは、当時スパーリングさえしたことがない。
「(渡部は)下の面倒を見てくれる、いい先輩でした。でも、プロですから関係ありません。どんな形でも戦います」
はるか高みの先輩に追いついた。けれど追い抜けない。それでも、新藤は今、手元にあるベルトを守ることがもっとも大事なのだと言う。
取材◎宮崎正博
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