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2023-05-27

【相撲編集部が選ぶ夏場所14日目の一番】「負けない相撲」で霧馬山も倒し、照ノ富士が休場明け場所のV決める

慎重につかまえ、そして勝負どころは逃さず。今場所最強の刺客の霧馬山も制して、照ノ富士が休場明け場所の優勝を決めた

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照ノ富士(寄り切り)霧馬山

きょうも相手を正面に置き、勝機を逃さず攻め切った。横綱照ノ富士が霧馬山も退け、休場明けの場所で1年ぶり8度目の優勝を飾った。
 
この2人の対戦成績は、ここまで照ノ富士の9勝0敗。過去の対戦では、照ノ富士が右から抱え、霧馬山は左を差して食いつく体勢までは作ることができるが、そのあとだんだんと左下手から起こされたり、右を巻き替えられて敗れるという展開が多い。したがって、霧馬山としては、ただ食いつくだけではなく、今場所9日目に照ノ富士を破った明生と同様、動き回って照ノ富士が不安を持つヒザを動かし、体が伸びる瞬間を作れるか、がカギと言えた。
 
立ち合いは、やはり霧馬山がガツンと当たり、照ノ富士は受ける形になった。霧馬山は頭を下げ、左ハズで押し込む。霧馬山の右と照ノ富士の左は差し手争いとなったが、照ノ富士はじりじりと圧力をかけて押し返しながら、右の上手を取り、左も差し込んだ。霧馬山も左下手を取り、右は相手の下手を嫌って食い下がる形は作ったが、動きはここで止められてしまった。
 
照ノ富士は上手が一枚で伸びているため、自ら攻めには出ず待ちの体勢。動きを作りたい霧馬山は右を巻き替え、チャンスを作るが、同時に左で廻しを引いた照ノ富士の次の動きが機敏だった。霧馬山が次の攻め手を繰り出す前に、すぐに右の上手を放して巻き替え、直後に霧馬山の左上手も切ってしまう。そうなるとここが勝負。胸を合わせながら一枚廻しの左上手を引き付けて一気に寄ると、最後は右手で相手の胸を押して寄り切った。

「横綱強かったですね」とは霧馬山。さすがにほかの力士よりは食い下がったが、横綱を慌てさせるには至らなかった。
 
照ノ富士のほうは「慎重にやらないとな、という感じでした」と振り返ったが、とにかく今場所は、どんな相手に対しても、慎重に相手を抱え込んで動きを止め、自分の正面に置きながら攻める「負けない相撲」を取り切った。

「いつ何が起きるか分からない状態で。復帰してからそういう思いで土俵に上がってきた。10月に手術をしてから、一日一日を無駄に過ごしたくないという気持ちでやってきた」と横綱。一日を大切に過ごしてきたその気持ちが、場所では一番を大切に取る気持ちにつながったのが今場所だった、と言えるだろう。休場した4場所分の思いが詰まった、見事な復活Vだった。

「成長している、勢いのある若い力士とやりたい気持ちは変わらない」とし、自らの休場中にさまざまな力士が優勝したことについても、「みんなが優勝は遠くないという意思でやっているから。今の力士が弱いというわけじゃない。いい相撲も多いし」と、追いかけてくる力士の成長を感じながらも、最後に「場所前に、この結果は予想していたか」と問われ、「思ってなかったら出てないね」と横綱らしい一言。やはりまだ、土俵に立つことさえできれば、ほかの力士との間には少し差があるのは間違いないだろう。
 
もちろん、ヒザに爆弾を抱えているだけに、一寸先は闇、という部分もあるが、ヒザの状態がうまく保てるという条件がクリアできるとすれば、この先もしばらく、照ノ富士の時代は続きそうだ。

文=藤本泰祐

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