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2023-05-28

【相撲編集部が選ぶ夏場所千秋楽の一番】十両の落合が14勝。十両優勝は逃すも、デビューから所要3場所の幕内有力

本割では欧翔馬を一方的に攻めて押し出し、14勝目。これで来場所の新入幕も有力になった

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落合(押し出し)欧勝馬

横綱照ノ富士が14日目に幕内優勝を決めての千秋楽。そこでこの日、がぜんファンの注目を集めることになったのが、熾烈(しれつ)を極める十両の優勝争いだった。
 
14日目を終わって、東筆頭の豪ノ山と西8枚目の落合が13勝1敗、東8枚目の熱海富士が12勝2敗で続くという情勢。豪ノ山は豪栄道の武隈部屋初の関取で、来場所の新入幕を確実にしている実力者、落合はデビューから所要1場所で関取となり、先場所も10勝を挙げている怪物、今場所前に出る圧力が目立つ熱海富士は、一部ファンの間ではアイドル的?人気を持つ有望株と、役者も揃っている。
 
この日はそれぞれ別の相手と対戦したが、それぞれに気迫のこもった取り口で相手を圧倒した。まず熱海富士が突き押しの千代栄に対してほとんど下がらず、押し出し。
 
次に登場した落合は、四つには組めなかったが、これまた前に前にと圧力をかけて欧翔馬を圧倒し、押し出し。この時点で熱海富士が優勝圏外に去った。
 
今場所の落合は、立ち合いから先手先手で相手に圧力をかける攻めが目立ち、ますます力強さと安定感を増してきた。敗れた相撲以外では、ちょっと危なかったのは相手のハズ押しで土俵上で一回転した英乃海戦ぐらいで、相手に主導権を与えることすらほとんどなかった。この日の本割でも、その好調さをいかんなく発揮した感じだ。
 
そして十両最後の一番で豪ノ山が北の若を押し出し、十両では史上初の14勝1敗同士の優勝決定戦が豪ノ山と落合で行われることになった。
 
ただその一番では、豪ノ山の意地がさく裂した。11日目に落合に勝ったときは最初に組まれての逆転勝ちだったが、この日は立ち合いから突き放して先手を取った。そのまま一気に電車道で土俵際まで押し込む。落合も俵に足を掛けて弓なりになって踏ん張ったが、休まず攻めて押し出した。

優勝決定戦では豪ノ山に一気に持っていかれ、土俵際で懸命に残すも敗れる。この悔しさを来場所への糧にしたい
優勝決定戦では豪ノ山に一気に持っていかれ、土俵際で懸命に残すも敗れる。この悔しさを来場所への糧にしたい

十両優勝こそ成らなかったが、今場所の落合の14勝は素晴らしい出来だった。4月に痛めたという左肩にはテーピングが見られたが、動きは心配なし。先場所後半に3連敗した反省もあり、場所中にトレーナーに診てもらうなど、体のケアにも気を使った。宮城野親方(元横綱白鵬)からは「十両を2場所で通過できなかったら引退だからな」と発破を掛けられていたそうで、「まだ好きな相撲を続けられそうでホッとしています」と笑った。

気になるのはその来場所の番付だが、成績を見ると、逸ノ城が引退したほか、一山本、水戸龍、輝が陥落濃厚で、幕内の席は4つの空き。十両からは優勝した豪ノ山、西筆頭で11勝の湘南乃海、東3枚目で10勝の武将山、そして落合が昇格候補となるので、来場所の新入幕は有力だ。デビューから所要3場所で幕内となれば、遠藤と並ぶ史上最速タイになる。
 
技を仕掛ける呼吸など相撲のうまさに関してはすでにハイレベルなものがある落合だけに、あとは、十両より一回り体も大きな人が多く、かつスピードがあるといわれる幕内の立ち合いに対して先手が取れるだけのものを身に着けられるかが、来場所のカギになるだろう。そういう意味では、この日優勝決定戦に一方的に敗れて「最後に自分の弱さを叩きつけられた」と悔しい思いをしたことも、かえっていい糧にしてくれるかもしれない。
 
この日は、幕内では大栄翔が若元春に勝って二ケタ勝利、豊昇龍が関脇を卒業する霧馬山を破って意地を見せた。これで来場所の3関脇は全員が2場所連続二ケタ勝利となった。
 
3関脇による大関争いに、落合の新入幕。また名古屋も、熱い場所になりそうだ。

文=藤本泰祐

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