
写真=10戦全勝オールKO勝利の日本王者・竹迫。腰にチャンピオンベルトが、ない……
控え室での勝利者インタビュー。さて、と椅子に座り込んだ竹迫司登(ワールドスポーツ)の腰にあるはずのものがない。チャンピオンベルトがないのだ。「忘れてきちゃいました」と。リング上でしっかり巻いていたベルトは、コミッションから借りたレプリカなのだという。勝ってしまえばそれも愛嬌。まして、ある意味、極めてセンセーショナルな勝ちっぷりでもあったのだ。
3日、東京・後楽園ホール、9戦オールKO勝ちで臨んだ日本ミドル級タイトルの初防衛戦、竹迫は最初から打ち合いに行った。5連敗から這い出て再びかつて自分が手にしていた王座を取り返そうともくろむ挑戦者の佐々木左之介(ワタナベ)が、初っぱなから仕掛ける打撃戦にも乗った。パワーで断然上回る竹迫は、豪快な右ストレート、左フックを決めて主導権を握る。右をねじ込まれてひやりとする場面もあったが、すぐに左フックで切り返してみせた。
2回も打ち合いは続くが、そんな両者のパンチの交換がポッと空いた一瞬だ。竹迫の右ストレート。佐々木は完全に効いた。下半身を硬直させる。野鳥が地面をトン、トンと跳ねるような、ちょうどそんな感じで2歩3歩と後退。満を持した竹迫が追いかけて右を打ち込む。無反応の佐々木を見て、レフェリーが即座にストップをかけた。TKOタイムは2回2分11秒だった。
「佐々木選手がいきなりきたもので、熱くなったというか。カウンターとか、練習してきたことが出せませんでした。まだまだです」となんだか殊勝なコメントの竹迫だが、その実、血は煮えたぎったまま。隣の藤原俊志トレーナーが「相手は最後のチャンス。最初からくるはずだから、それに付き合うなとは言っておいたんですけど」と“苦情”を呈しても、「あのまま(打ち合い)でも、倒したと思います」とそっとつぶやいてみせる。
いや。見事。破壊の美学を心得た、重量級スターの誕生だ。
「10連続KOになったし、日本タイトルを守ったりしながら、当面は連続KO記録を狙いたい。最終的な 目標は世界ですけど」
ポスト村田諒太と話が飛んでいく前に、しかし、陣営は素早く遮った。
「まずはチャンピオンカーニバルでの防衛戦です。東洋太平洋ランキング1位ですから、その後はそこを狙うかもしれません。パンチ力は半端ではないです。まだまだ伸びる選手だと考えています」(齊田竜也会長)
なにせ、竹迫が挑むのはミドル級という大舞台。急ぐ事なかれ。けれど、それまでの道程から、しっかりと見続けていきたい選手であるのは間違いない。
文_宮崎正博
2025-11-24
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