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2023-06-02

【陸上】日本選手権展望<男子400m>44秒台突入へ。日本記録は32年ぶりに更新されるのか

左から中島、佐藤拳、佐藤風。45秒の壁を突破できるか

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注目は2人の佐藤と中島

今年の日本選手権は大阪市のヤンマースタジアム長居開催。過去100m、110mHなど直線種目だけでなく、400mHや中・長距離など周回種目でも素晴らしい記録が誕生してきた。大会4日目に決勝が行われる男子400mでは、日本人2人目の44秒台の期待を複数選手に持てる。

今季のシーズンリストと日本歴代リストは以下の通り。

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▼2023年シーズン45秒台選手
45秒31 佐藤拳太郎(富士通) 5/03
45秒31 中島佑気ジョセフ(東洋大4年) 5/21
45秒52 佐藤風雅(ミズノ) 5/21
45秒65 今泉堅貴(筑波大4年) 5/06
45秒76 地主直央(法大4年) 5/21
45秒85 伊東利来也(住友電工) 5/03
45秒95 小渕瑞樹(登利平AC) 5/03 
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▼日本歴代10傑
44秒78 高野 進(東海大教)91/06/16 
45秒03 山村貴彦(日大3年)00/09/09 
45秒05 小坂田 淳(大阪ガス)00/09/09
45秒13 W・J・ジュリアン(富士通)19/10/2
45秒16 金丸祐三(法大4年)09/05/09
45秒18 山口有希(東海大2年)03/10/29
45秒31 佐藤拳太郎(富士通)23/05/03
45秒31 中島佑気ジョセフ(東洋大4年)23/05/21
45秒33 簡 優好(富士通)98/05/09 
45秒40 佐藤風雅(那須環境)22/05/08
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44秒台候補筆頭は中島佑気ジョセフ(東洋大4年)だろう。

静岡国際(5月3日)45秒46、木南記念(同6日)45秒39、セイコーゴールデングランプリ(同21日)45秒31と徐々に記録を短縮している。静岡国際こそ別の組で走った佐藤拳に敗れて2位だったが、すべてトップでフィニッシュしてきた。

今季の中島は前半を、以前と同じスピードで、いかに楽に走るかを課題にしてきた。

「世界選手権の決勝進出という目標を考えたら、良い動きで前半を突っ込んで、いかにラストをキープできるかが重要になります。世界で戦って行くには最低でも(200mを)21秒台前半で入っていかないと置いて行かれます」

冬期トレーニングの課題として「接地の際に一度沈む動きになると、タイミングが遅れてスピードが出ない」ことを改善してきた。

ゴールデングランプリは本気で44秒台を狙って走ったが、6週連続レースで若干の疲労もあった。それでも「レースを重ねてタイムを上げていくタイプ」であることはアピール。中2週間で出場する日本選手権が好条件に恵まれれば、中島のタイムは44秒台まで上がる。

静岡国際で45秒31と、8年ぶりに自己記録を更新した佐藤拳太郎(富士通)も44秒台が見えてきた。木南記念では総合順位では中島に敗れたが、組1位でフィニッシュ。静岡国際の45秒31は中島と並ぶ今季日本最高タイムだ。

強化方針も中島と同じで、200mを過去の45秒台時と同じタイムで通過しても、余力を持つ走りを追求してきた。200~300mの区間タイムを上げることで400 mのタイムが向上する。それをデータの収集と分析で明らかにした。「(44秒台は)今年中には出せると思います」と言えるほど、今季の手応えは良い。

果たして、歴史は動くのか

昨年の日本選手権優勝者の佐藤風雅(ミズノ)は静岡国際、木南記念と46秒を切ることができず、明らかに出遅れていた。しかしゴールデングランプリでは45秒52で3位。自己記録に0.12秒差と迫り、日本選手間で不敗を続けた昨シーズンの状態に戻ってきた。

佐藤風にとってヤンマースタジアム長居は、大学3年時に自身初の45秒台(45秒99)を出した競技場である。日本選手権の予選だった。しかし、よく言うところの“出ちゃった記録”で、そのタイムを出しても決勝に進めなかった。

更新するまで4年の月日を要したが、400 mという競技や自身のことを深く考えるきっかけになったし、その記録を超えた先に世界選手権準決勝まで進む成長があった。同じ長居で44秒台を出すことになっても不思議ではない。

佐藤拳が44秒台への手応えを持っていることに言及したが、「その先に高野先生の日本記録(44秒78)がある」と、日本記録も明確に口にした。中島もゴールデングランプリのレース後に、日本記録への強い意気込みを口にした。

高野進が現在のにほんきろくを樹立したのは1991年の日本選手権だった
高野進が現在の日本記録を樹立したのは1991年の日本選手権だった

「日本選手権まで2週間あるので、今回はトレーニングを積むこともできます。今日のレースを分析して、ダメだったところを改善して挑みたい。日本選手権では日本新記録を狙っていきます」

高野進の44秒78はトラック種目で、男女を通じて唯一残っている20世紀の日本記録。高野は1991年世界選手権と92年五輪の決勝に残り、その後の日本短距離界の発展に多大な影響を与えた。その功績は永遠に色褪せることはない。

だが記録に関しては、現役選手たちの頑張りで歴史が動く雰囲気になってきた。

文/寺田辰朗 写真/毛受亮介、椛本結城、BBM

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