アメリカンフットボールの「Xリーグ」は、5月20日、富士通スタジアム川崎で、春季東日本社会人選手権「パールボウル」トーナメントの1次リーグ戦2試合を行った。第1試合のオービックシーガルズ―富士通フロンティアーズは、オービックが21-6で富士通を破って、Aブロックを2勝で勝ち上がり、準決勝(6月10日、富士通スタジアム川崎)に進出した。準決勝ではLIXILディアーズと対戦する。
オービックが前半の得点を守って逃げ切った。オービックは第1クオーター1分、RB李卓の14ヤードランタッチダウン(TD)で先制、第2クオーター開始早々にはQBスカイラー・ハワードからWR木下典明に53ヤードのTDパスが決まった。スカイラーは第2クオーター11分にもWR野崎貴宏に26ヤードのTDパスを決めた。富士通は前半は2本のフィールドゴール(FG)だけにとどまった。後半は3回フォースダウンギャンブルを試みたがすべて失敗するなど決め手を欠いた。オービックは2014年6月のパールボウル以来の富士通戦勝利となった。
Xリーグの中でも自他共に認め会うライバルのオービックと富士通。しかし、このところの対戦成績は2014年の秋以降、オービックの6連敗中だった。なんとしても勝ちたいオービックは、春とはいえこの一戦に深く期すところがあったようだ。その斬り込み役を担ったのが新QBスカイラーだ。オープニングのドライブで54ヤードのロングパスをWR水野太郎に決めて、フィールドの雰囲気を変えた。オービックはこのチャンスを逃がすことなく、副将のRB李がTD。スカイラーはさらにチームの柱、木下にもリードボールのロングボム、全速力で走る木下は、Xリーグ屈指のCB石井悠貴のカバーを振り切ってTDを決めた。昨年まで富士通のQBコービー・キャメロンに決められていたオフェンスを裏返したような展開に、オービックの応援席は盛り上がった。
キャメロンだけでなくRBジーノ・ゴードンも引退した富士通オフェンスは、4月の第1戦に続いて、この日もRBにトラショーン・ニクソンを起用。ニクソンは力強い走りで112ヤードを稼ぎ期待に応えたが、LBとしての働きが無くなったのを考えるとチーム全体ではプラスとは言い切れない。特に走力もあるスカイラーのようなQBに対しては、LBニクソンがいればと思うシーンが度々あった。
前半、テンポよく点を奪ったオービックオフェンス陣だが、後半は一転、攻めあぐんだ。しかし看板のディフェンス陣が勝負どころで、QBサックやロスタックルを連発した。特にDEケビン・ジャクソンは3サックの活躍。ルーキーのSブロンソン・ビーティーもスナップミスにつけ込んで19ヤードのロスタックルを決めた。オービックは、富士通にTDを許さなかったが、富士通にとっては2012年11月の秋季リーグセカンドステージの鹿島戦以来、5年6か月ぶりにTDゼロのゲームとなった。オービックとしては昨年11月の準決勝で喫したチーム史上初の完封負けへのささやかなリベンジとなった。
古庄直樹ヘッドコーチ(HC)は「当然、ライバルであり、意識しているチーム。ただ毎年チームが変わっているので、勝ちたいと思っているのはいつものこと」と、4年ぶりの勝利を特に意識はしていなかったと話す。「新戦力が加わって、この試合の中でも成長して、次のステップに進むために富士通を倒せたのは大きい」。後半失速したオフェンスには「そこが、勝ったり負けたりして、最後は負けてしまう去年のようなチームということ。まだまだ勝ち切れるチームになっていない」という。とはいえ、ディフェンスの仕上がりには手ごたえを感じている。特にルーキーのブロンソンには「ただ上手いとかそういうことではなく、体力的な面も含めて社会人の中で十分にやっていける。近い将来間違いなくフィールド上でリーダーになる」という。
次戦のLIXIL戦に向けて「シーガルズ、また強くなったな、と思ってもらえるよう、この20日間でしっかり鍛えて準備していく」と締めくくった。【小座野容斉】
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