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2023-06-03

【陸上】日本選手権展望<女子5000m>田中希実の独壇場か。二冠を阻むライバルは?

日本選手権女子5000mで連覇と世界選手権標準記録突破に注目が集まる田中

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大阪市のヤンマースタジアム長居で開催されている日本選手権が6月4日、最終日を迎える。女子5000mは田中希実(New Balance)が2年連続3度目の日本選手権者となるのか。それとも廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)が2年ぶりの王座に返り咲くのか。

レース後半に自信が持てるように

田中希実(New Balance)が日本新記録(14分52秒84)も視野に、世界選手権標準記録(14分57秒00)突破に挑む。

田中は大会2日目の1500mを4連覇。優勝記録は4分08秒29で自身の日本記録や世界選手権標準記録とは開きがあったが、2位との差は9秒37で、(手元で調べられた)2012年以降では最大差だった。

「今日はラスト800m(残り2周)にこだわってスパートしよう。そう決めてスタートラインに立ちました」

スパートして200mで、後続に30m以上の差を付けた。残り800 mから残り400mまでの周回は65秒弱、最後の1周は61秒前後だった。

「今までラスト2周でスパートしたときは、最初の1周で飛ばしすぎて、最後の1周は止まることが多かったんです。今日は2周目に入っても加速できてよかったです」

20~21年に日本新記録を連発していた頃は、イーブンペースで押し切る形が多かった。今年はここまで、前半のスピードはそこまで出ていないが、後半で上げるパターンに変えつつあった。それを突き詰めた形が今回のラスト2周だった。

そのレースパターンができるようになったのは、昨年からジョグの練習が質量ともに上がり、レース後半に自信を持てるようになったからでもある。「5000m仕様になっている」と、父親でもある田中健智コーチも認めている。

そして4~5月の米国遠征中のフラッグスタッフでの高地トレーニングから、かなり満足できる練習ができるようになり、帰国後に2回行った御嶽合宿(高地)ではさらに良くなった。定番となっている田中コーチとの激しい議論も、2回の合宿ではまったくなかったという。

5000mに向けては次のように、1500mレース後に話している。

「スタミナ練習をしてきたからこそ、今日のラスト800mが持ったと思うので、そのスタミナを5000mでも活かす走りをしたいと思っています。(自分だけ出場した)1500mのスピードは5000mの他の選手にはないと思うので、それも発揮できれば」

田中は過去に自己新を出したレースで、ラスト1000mは2分50秒を切っている。今大会の4000m通過が12分10秒前後でも、14分57秒00の標準記録を破る可能性は十分ある。12分00秒ちょっとの通過でも、日本記録の14分52秒84に届くかもしれない。

ハイペースになれば廣中が有利か

だがライバルも強い。

廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)、五島莉乃(資生堂)、木村友香(同)ら日本代表経験選手に加え、加世田梨花(ダイハツ)、山本有真(積水化学)らも15分前後のハイペースに挑んでくるだろう。

4000m通過が12分を切るようなハイペースになれば、10000m日本歴代2位記録を持つ廣中が有利になるかもしれない。逆にスローペースになったときは、ラスト勝負に強い木村にもチャンスが生じる。

田中がラストで圧倒的な強さを示すのか、田中の独壇場となることを他の選手たちが阻止するのか。最終日も日本選手権は盛り上がる。

左から廣中、五島、木村。それぞれ得意のレース展開に持ち込みたい
左から廣中、五島、木村。それぞれ得意のレース展開に持ち込みたい

文/寺田辰朗 写真/上野弘明、黒崎雅久

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