上写真/ブラント(右)の速い攻撃に村田は立ち上がりから後手に回った
写真◎ゲッティイメージズ
10月20日(日本時間21日)、アメリカ・ネバダ州ラスベガスのパークシアターで行われたWBA世界ミドル級タイトルマッチ12回戦、チャンピオンの村田諒太(帝拳)対3位の指名挑戦者ロブ・ブラント(アメリカ)の一戦は、速い身のこなしからジャブ、ストレートと繰り出すブラントに、村田が序盤からペースを巻き取られる形で進行し、そのまま本領を発揮できないまま大差の判定で敗れた。村田は2度目の防衛とともに海外初の防衛にも失敗した。
村田のペースメイクの失敗、あるいは読み違いが勝敗を分けたすべてだ。1回、2回と相手に攻めさせて、間合いとタイミングを計るのはいつものとおり。3回から圧力をかけ、重い右を投げ込むのもこれまた同じ。ただし、計算どおりにことが進んだのはここまで、あるいは4回の途中までだった。以降、その攻撃は中途半端なまま。早くも息が上がりかけていたブラントを立ち直らせてしまう。
中盤戦以降は混戦が続いたが、右にこだわるあまり単調になりすぎた村田は、どうしてもポイントまで届かない。中間距離からポンポンと軽打を飛ばすブラントに次々とラウンドを奪われた。右を連発した11回は逆に左フックでぐらつかされ、圧力をぐっとかけた12回も、逆襲にさらされて、ダメ押しのポイントを失った。
控え室に帰った村田は記者団を自室に招き入れて会見に応じた。あざだらけの顔に無念をにじませながら、日本のヒーローは記者の問いかけに冷静に答えた。
「判定を聞くまでもなく、負けていると思った。倒せるチャンスにきちんと倒せなかった。ブラントは思ったよりずっと速かったし、スタミナもあった。ボディブローは効かせたと思うが、その後はインテリジェンスに戦われてしまった。自分のボクシングの幅が小さいからのこの結果でしょう」
プロモーターのボブ・アラムが来春、東京で再戦の話を持ち出していたがと問われるが、敗戦の直後に答えはない。
「再戦を要求できる内容ではなかったと思うし、今後のことはわからない。これだけのチャンスを与えてもらっての結果だから」
ときおり、込み上げる感情を押し殺しながらの言葉が数珠つながりとなった。
「村田は強かった。試合が終わったとき、勝ったと思ったけど、世界チャンピオンになるにはチャンピオンを完全に打ちのめさなければならないから、最後のコールまでわからなかった」
勝ったロブ・ブラントは幸せの絶頂に見えた。傷にまみれた顔をずっとほころばせなから続ける。
「自分でもこんなに戦えるなんて信じられない。途中でな諦めかけたときもあったけど。最後までこんなに動けるなんて」
4ヵ月前からついているエディ・ムスタファ・ムハマド・トレーナー(元世界ライトヘビー級王者)に鍛え抜かれたおかげだといった。
「とにかく走らされた。つらくて投げ出しそうになったときも、走れ走れで。ついてきてよかった」
村田との再戦にも前向きだった。
「来春に再戦? 大丈夫 。だけど、遠征の長旅、コンディション作りは大変だ。その点、それを克服してきた村田は立派だと思う」
勝者は最後まで殊勝だった。
取材◎宮崎正博
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