東京ガス、「逆転サヨナラ」でシルバースターを破る

アメリカンフットボールの「Xリーグ」は、5月4日、富士通スタジアム川崎で、春季東日本社会人選手権「パールボウル」トーナメントの1次リーグ戦2試合を行った。第2試合の東京ガスクリエイターズ-アサヒビールシルバースターは、延長タイブレーク(TB)の末、東京ガスが24-23でアサヒビールを破った。東京ガスはXリーグの公式戦でアサヒビールに勝ったのは初めて。

東京ガスクリエイターズ○24-23●アサヒビールシルバースター

東京ガスが、劇的な逆転勝利を挙げた。東京ガスは第1クオーター、ファンブルリカバーで得たチャンスからQBイカイカ・ウーズィーがWR大下卓哉にタッチダウン(TD)パスを決めて先制。第2クオーターにはK関根佑のフィールドゴール(FG)で加点した。アサヒビールはQB安藤和馬がTE谷田淳へ59ヤードのTDパスを決めて反撃した。第3クオーター、アサヒビールはRB濱田真悟のTDランで逆転するが、東京ガスは第4クオーター2分にRB尾花史高のランTDで再びリードを奪った。アサヒビールは同6分にK飯島良紀が45ヤードのFGを決めて同点とし延長タイブレーク(TB)に。
TB1回の表のオフェンスで、アサヒビールは安藤からRB山脇孝高に25ヤードのパスTDを決めたが、東京ガスも尾花がTDランを決めた。同点を狙ったポイントアフタータッチダウン(PAT)でホルダー岩越大地がボールを持って右に走り、2ポイントコンバージョンを決めて、激戦に終止符を打った。

◇イカイカオフェンスの可能性 板井HCも認めた人間性

東京ガスは2003年にXリーグに昇格後、初めてシルバースターから勝利を挙げた。劇的な「逆転サヨナラ勝ち」を決めたのは、岩越の2ポイントコンバージョンだが、サイドラインからの指示ではない。スナップのミスで、転がったボールを拾い上げた岩越がとっさに走ってエンドゾーンに飛び込んだ“怪我の功名"だった。
岩越は「ボールを持って走ったら、右サイドに思ったほどシルバースターのディフェンスの選手がいなかった。前にいたのは2人くらいだったので、思い切って飛び込んだ」という。チーム屈指のアスリートで本職はWRのボールを持った右腕はエンドゾーンを超えた。サイドラインから走り出たQBイカイカと岩越は抱き合って喜んだ。
スポッター席で、幕切れを見届けた板井征人ヘッドコーチ(HC)は「岩越はアスリートだし、日体大時代はQBの経験もある。崩れた場合に2ヤードくらいなら何とかできる」と考えていた。しかし「もっとすっきり勝てた。シルバースターがQBをローテーションしてくれていたので、本戦でチャンスがあった」と歴史的な勝利にも厳しい表情を隠さない。確かに、第4クオーター最終盤に相手レッドゾーンに侵入し、残り20秒余りで、決まれば決勝となる31ヤードのFGを失敗した。第2クオーターのFGも、その前のプレーでTDを狙ったイカイカのパスをレシーバーがエンドゾーン内でボールを落とした。
とはいえ、2週間前のノジマ相模原戦に比べ、イカイカを中心としたオフェンスが機能し始めたのは間違いない。パス140ヤード、ラン165ヤードで合計305ヤード、ファーストダウン18回。シルバースターのパス・ラン合計259ヤード、ファーストダウン12回を上回った。反則による罰退もなかった。
イカイカのチーム加入が正式に決まったのが3月末。練習への合流は4月に入ってからで、板井HCによると「前の試合は、イカイカを交えた練習は土日1回だけで臨んだ。可能なプレーは5つほどしかなかった」という。
板井HCは「イカイカはライズ戦で負けた後、真っ先にチームの皆に『I'm sorry』と言った」ことに驚いたという。普通の米国人選手ならOLの問題やランが出ていないことなど言い訳から入るのだが、率直に非を認めた人間性がチームの信頼につながっているという。
岩越も「イカイカの強いパスに対して僕らがもっと走り込んで捕球できるようになれば、もっとオフェンスは良くなる」と、さらなる飛躍を誓った。

（文/写真　小座野容斉）