BBMカードの制作スタッフが、カード編集にまつわる思いを綴る連載コラム。今回は阪神のチームパックについてです。ルーキーコンビ“キナチカ”の活躍をきっかけに振り返る、あのときのお話。
今季のタイガースでは木浪聖也&近本光司のルーキーコンビ“キナチカ”が話題です。開幕戦に木浪が一番・ショート、近本が二番・センターでスタメン出場した際に「阪神のルーキー2人が開幕スタメンに名を連ねるのは1972年の中村勝広、望月充以来47年ぶり」という報が出て、大変なつかしかったです。
中村勝広は同年ドラフト2位で入団した二塁手。早大時代に主将を務めていたこともあって、早い段階から「将来の幹部候補生」と目されていたのですが、期待に違わず90~95年の6シーズンにわたって監督を務め、92年には亀山努、新庄剛志の台頭もあってリーグ優勝を争いました。
一方の望月は、当時の人気野球マンガ『侍ジャイアンツ』の主人公・番場蛮のライバル・眉月光を彷彿させるような名前が印象的でした。こちらは立大から大昭和製紙を経てドラフト3位で阪神入り。外野の準レギュラーとして活躍したあと、75年オフに江夏豊とともに南海に移籍し、引退後は長くホークスでスコアラーをされていましたが、阪神時代に同僚だった田淵幸一がダイエーの監督に就任した90~92年は打撃コーチも務められました。
そういえば、この2人、ルーキーイヤーからオールスターにも出ていたんだよなあ~と思って、当時の週刊ベースボールを見返してみたところ、思わぬ発見があったので少し長くなりますが、書き記しておきたいと思います。
中村、望月の両ルーキーはオープン戦で好調だったことから、ともに開幕スタメンに起用されたようなのですが、シーズンをスタートしてからはなかなか調子が上がらず、オールスター前までの成績は中村が打率.190、2本塁打、望月も打率.190で7本塁打と苦戦していました。
それにもかかわらず、中村は二塁手部門で、望月は外野手部門でともに同年のファン投票で1位となっているのです。望月の14,092票はセ・リーグ全体で4番目の得票というのですから驚かされます。外野の2位は池田祥浩(阪神)、3位は高田繁で、同年球宴まで首位打者だった若松勉(ヤクルト。こちらも新人)が4位と続きます。全体的に阪神勢が上位に付けている印象で阪神ファンが頑張って投票していたようです。
昨年2018年のオールスターのファン投票の総数が212万票に対して47年前の72年は63万票にしか過ぎなかったので、組織的に投票すると、それが有効に作用していたようなのです。
さらに、この年は前年の75万票から大きく票を落としているのですが、その原因というのが、71年から採用されたファン投票方法が不評だったことと、72年からハガキ代が値上がりしたためだったそうなのです。
70年以前はハガキ1枚でセ・パ9名ずつ18名を連記できていたのですが、71年からは「セ・パ同一ポジションの2名連記方式」となったそうなのです。どうして、そういう方式になったかというと「集計の手間を省き、結果を早く正確に出す」ためだったのだとか…。それまでハガキ1枚で済んでいたのが、18名を選出しようとするとハガキが9枚必要となります。さらに、この年からハガキが7円(!)から10円(!)に値上がりしていたのでした。
ところで、今回参照した「週刊ベースボール」の72年7月31日号は「オールスター特集号」と銘打たれており、18ページにわたって特集記事が書かれていたのにも驚かされました。この号の発売時点では、まだ試合は行われておらず、結果詳報は次号なのに、その前あおりだけでこのページ数を費やすというのは現在では考えられないことです。当時のオールスターゲームのステイタスがそれだけ高かったということなのでしょう。
そうした大抜擢で選ばれた中村、望月でしたが、実際の試合の方はというと、中村が1打数無安打、望月も2打数無安打と結果を残せませんでした。今年のオールスターでは近本がセ・リーグの外野手部門で2位につけており、選出される可能性が高そうですが、本戦での活躍を期待したいですね。(しゅりんぷ池田)
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