2月23日に発売された「BBM女子プロレスカード2018 TRUE HEART」。これまでインタビュー2本、開封動画1本をお届けしてきた発売記念コンテンツも、今回が最終回となる。
そのトリを飾るのは、ある意味、今回の商品で一番大きなインパクトを与えてくれた“鶴姫”ことMAKAIの志田光選手だ。本商品にとっても、単体選手でパッケージを作るのは大きなチャレンジだったが、それを試してみようと思うだけの存在感を、志田選手が持っているのは紛れもない事実だ。
「魔界」というプロレスとは異なるジャンルのキャラクターをなぜ、今回撮影することにしたのか。その説明の機会という意味合いも持ちつつ、志田選手にインタビュー取材をお願いしたら、思っていた以上に興味深い話を伺うことができた。
そのため、今回は前後編の2回に分けてその模様をお届けしたい。「前編」となる今回は、主に「魔界」について伺った。なぜ、彼女が昨年から「MAKAI」所属となったのか、そのあたりの部分もしっかり語っていただいている!
PROFILE
志田光(しだ・ひかる)
1988年6月11日、神奈川県高座郡寒川町出身。高校卒業後、女優業を志し芸能事務所に所属するが、映画「スリーカウント」のオーディションを受け、その合格条件がプロレスデビューであったことからアイスリボンに入団。2008年8月23日の新木場1stリング大会でデビュー戦を行った(対戦相手は星ハム子)。結果的に映画では主演を務め、その封切り後もレスラーを続けて中心選手に成長。14年3月30日にアイスリボンを卒業後は、フリー選手としてさまざまな団体で活躍するとともに、自主興行も積極的に開催した。その一方で舞台への出演も多数経験。17年2月、かねてよりレギュラー出演していた「魔界」に所属(MAKAI)することを発表した。今年、デビュー10周年を迎える。
BBM 志田選手は2008年のデビューですので、カードのご登場は09年版からです。ただ、女子プロレスカードが現在のように完全撮り下ろしで製作するようになったのは11年版からですので、そこからカウントすると昨年度版までの7年で何枚カードになっていると思いますか?
志田 えっ? 7枚じゃないんですか? う~ん、じゃあ10枚!
BBM 当てずっぽうですが正解です(笑)。では、せっかくなので振り返ってみましょう(写真参照)。
志田 わ~、なんか全然違いますね。なんで11年はこの髪型なんだろう(笑)。
BBM 12年版はちょっといまと近くなりました。そしてこの年は、藤本つかさ選手とのツーショットもありました。
志田 懐かしい! あれ、14年にこんなのありましたっけ?(藤本つかさ選手、松本都選手との「マッスルビーナス」)。すっかり忘れていました(笑)。
BBM タッグ王者としての「マッスルビーナス」は12年版で作っていたんですけど、いま思えばこのスリーショットでカードを作っておいて良かったです。この年の春、志田選手はアイスリボンを卒業されましたからね。
志田 確かにそうですね。
BBM 校了の2日くらい前に突然リングで発表されたから、裏面の原稿の差し替えなどこちらは大騒ぎでした(笑)。
志田 ご迷惑お掛けしました(笑)。
BBM そしてフリーになってからのものがあり、今年はこちらです。そしてもう1枚、鶴姫のチェックリストカード、そしてパックにもご登場と。
志田 いやぁ、スゴいですね。本当にいろんな写真を使っていただいてうれしいです。この最初の11年版から撮影もしていただき、デザインなどもがらっと変わりましたよね。写真が表に2枚使われていたのも初めてでしたし、衝撃的だったのはとても覚えています。なんか主人公になったみたいな感じで(笑)、同じ商品なんですけどこんなに変わるんだなって。でも裏の写真がどうしたのってくらいギャップある(笑)。
BBM 私服姿ですね。これは週プロのインタビュー取材のものを使用しました。まだリニューアルして最初の年でしたから、いろいろ試していたんです。いまは裏面は基本、試合写真ですけどね。
志田 でもいいですよね。私はプロレスをやりつつ、女優もやっていますから、その両方を知ってほしいという思いがあります。だから表面はコスチューム、裏は私服という形で二面性を出せるスタイルはありがたいです。
BBM いずれまた、このような形も考えたいと思います。全選手私服姿も撮影となると、いまの倍以上大変そうですけどね(笑)。
志田 確かに(笑)。改めてこう並べてみると、フリーになってからのほうがそれまでより「撮られる」ということを強く意識するようになったなと思います。見られることが仕事ですし、いかによく見せるかってことをちゃんとこだわらなきゃって思いますし。
BBM そういう意味でも志田選手は、率先して撮影に2つのコスチュームだったりガウンを持ってきてくださりますし、作り手として非常にありがたい選手です。
志田 撮っていただける機会もそう多くはないですからね。その1回ずつに全力を注がなきゃって思いますし、毎年表に2枚の写真を使ってくださるので、ならば違う格好の写真をって思いますから。
BBM 意図をご理解いただき、ありがたいです。今回も担当させていただいたカメラマンは、毎回、志田選手の撮影を楽しみにしているんですよ。ですから今回は、鶴姫の撮影もリクエストしたんです。いろいろ設備も準備しますからと。
志田 通常のコスチュームの撮影から、ライトもすべて変えてくださいましたからね。
BBM 鶴姫は商品のチェックリストとしての撮影だったのですが、実はこのチェックリストも毎回あるわけではないんです。
志田 そうなんですか?
BBM できる限り作りたいのですが、選手が年々増えていますし、作れないときもあります。ただ、ボックスでご購入されないお客様もいますし、種類数の参考になるこのカードは作りたいんですよね。
志田 確かに便利ですよね。どの選手がカードになっているのか分かるし。
BBM でも結果的に、特別な写真が撮れたときに作る傾向にあります。というわけで11年版以降で過去のチェックリストはこんな感じです(写真参照)。
志田 えっ、3つしかないんですか!? でもみんなレアな感じがありますもんね。華名さんの普通のカードは、このメイクではないんですか?
BBM 違います。ただこの年は、この姿でもかなり試合をされていたので形として残したかったんです。紫雷美央さんのものも、所属の4団体でコスチュームを使い分けていたのですべて使いたかったんです。全部のコスチュームで別々にカードを作れませんからね。サインカードだけは4種類作ったんですけど、それでも限りはありますし。
志田 あ~、そういうこだわりたい気持ち、分かります。
BBM ですから今回もあえての鶴姫なんですよ。
志田 そうだったんですね。鶴姫も撮影したいとは言われていましたが、そういう意図があったとは聞いていなかったので、いま改めて納得しました。
BBM でも実は、鶴姫を撮りたいとはずっと思っていたんです。覚えてられないかもしれませんが、「魔界」が始まった頃に志田選手に言われたんです、「魔界の撮影はしないんですか?」って。
志田 言いましたっけ(笑)。
BBM はい(笑)。だからずっと頭の中にはありました。
志田 ありがとうございます。でもその頃からずっと、カードのように集めるものに魔界は向いているんじゃないかって思っていたんです。ですけど結果的に今回で良かったです。この鶴姫の衣装は私がデザインしたもので、クラウドファンディングで皆様にご協力いただいて完成した衣装ですから、それがカードになれてとてもうれしいんです。本当にいいタイミングでした。
BBM 裏はチェックリストですけど、このカードも差し上げますのでご活用ください。
志田 毎年、自分のカードはいただいていますが、なかなかボックスとかチェックリストとか種類を意識することはなかったので、そういう意味では今回は自分でも買ってみようかなと思いますよ。
BBM その際は是非、パックでご購入ください。書店の店員さんなどが「あれっ?」って気付くかもしれませんね(笑)。
志田 めっちゃ恥ずかしいじゃないですか(笑)。でも行こう! 買おう!
BBM せっかくですのでここからは「魔界」について伺いたいと思います。基本的に東京、新木場1stリングが拠点ですから、地方の方は「魔界」の存在をご存知でも詳しくは分からない部分もあると思うんです。
志田 そう思います。今年の4月で魔界は4年になります。そもそも何なのって言われるとその定義が非常に難しいんですけど、基本的には演劇です。私たちは「ハイブリッド・エンターテインメント」と呼んでいます。その劇中の闘いのシーンは、プロレスラーが持っている技術を駆使して表現しています。でもプロレスラー同士が闘っていますが、今年から「脱プロレス宣言」をしまして、プロレスラーが出演していますが「これはプロレスではなく演劇なんですよ」ってことをお伝えしています。
BBM 「魔界」が一つのジャンルとして成熟したんでしょうね。実際、ご出演の方々を見ても、これまで以上にプロレスラー以外の俳優さん、女優さん、アイドルの方やアーティストの方も出演されていますね。
志田 実際、私たちが目指しているものも新しいジャンルとしてハイブリッドされたものですので、レスラー、俳優、アイドル、ミュージシャンの境なく、きれいに混ざり合って区切りや分け隔てなく成立したものを作りたいなって考えていますから。実際、俳優さんでもすごく闘いのシーンを表現してくださりますし、一人が何か一つの形にこだわるのではなく、持てる力をすべて発揮するっていうところが「魔界」の形だと思っています。
BBM 志田さんの「鶴姫」も役名ですが、魔界に登場する役はどういうものなのか、教えていただけますか?
志田 すべて歴史上、伝承上の人物なんです。その魂がプロレスラーに憑依するというのがそもそもの物語の始まりで、私に憑依したのが鶴姫(戦国時代、伊予の国=現在の愛媛県=にいたとされる人物)でした。でもいまは、役そのものが生きてきて、歴史や伝承に沿った流れだけでなく、さらに魔界で発展した姿を楽しんでいただけるんじゃないかと思います。
BBM 1話完結ではなくこれだけ続いていますから「いまから観に行ってもお話についていけないんじゃないか」と思っている方も多いのではありませんか?
志田 そうなんですよ! もう40回以上続いていますからね。でも最初からご覧になっていても、すべてを完全に理解するのは難しいんじゃないかなって思います。なので詳細を知らず、何も分からずに観に来られても、その場で起きていることを観るだけで十分に楽しめると思います。誰が悪い人で誰はいい人、あの人とあの人は仲がいいといったことは観ていただければすぐ分かりますからね。前回のストーリーとか考えず、わぁすごい、ぎゃー怖いって逃げ惑うみたいな感じで楽しんでいただければなと思います。実際、そういう方のほうが多いと思いますし。
BBM まずは観て、その場を楽しむのが一番だと。
志田 そういうことです。お客さんも普段、私が出場しているプロレス会場とは層が異なるといいますか、半々なんですよね。プロレスが好きな方、ミュージシャンや俳優の皆さんが好きな方、本当にいろいろで。女性のお客さんも多いですし。
BBM お稽古も大変なのではありませんか?
志田 普通の舞台でしたら毎日稽古をできるんですが、魔界の場合は皆さん、いろんな世界で活動されていますから、なかなか全員が揃えないんですよね。ですから週に一度、2時間くらいという限られた中でやっているので、集中力がすごいんです。
BBM 戦闘シーンも大変そうですね。
志田 プロレスの試合と違ってあくまでもシーンなので、すべて流れが決まっています。それを覚えるのも大変ですし、いまはバックに流れている音楽のスタートと同時に闘いが始まり、終わりで闘いも終了という形をやっているので、この歌詞のときにこの技がとか細かく決めねばなりません。しかも殺陣ではないので、レスラー同士ですからちゃんと当てるんですよ。
BBM 頭も身体も大変ですね。
志田 男子選手の技は、ボディスラム一つにしてもかなり腰に響きますし……。
BBM でも、いますごく充実されているんだろうなと感じますよ、お話を伺っていても。
志田 してますね(笑)。他では絶対に作れないものを私たちはやっているって自信を持っていますから。魔界に出会ったとき、私がやりたかったものはこれだったんだって思ったんです。もともと私は演劇をやりたかったですし、この世界に入ってからはプロレスも続けたいし。そんな志田光の生き方に一番近い世界が魔界だったんです。でも、フリーの選手として活動していたら、参戦させていただくどの団体さんも分け隔てなくプッシュしていかねばならないですからね。だから昨年、「MAKAI」の所属になるという道を選んだんです。正直、どこかにまた所属するとは思っていなかったんですけどね。
BBM これまで、なかなか報道などでは伝わらなかった志田選手の本音が伺えて、とても興味深いです! 魔界はいま、月に一度開催で会場は新木場ですよね。
志田 そうです。魔界の時だけは、新木場1stリングは「魔界アリーナ」って呼び名にしていただけて、入口にも魔界の垂れ幕を設置させていただけるんです。
BBM 東京以外のファンの方からは、地方でもやってほしいって言われるんじゃないですか?
志田 言われます。本当によく言われるんですが、是非とも新木場にお越しいただきたいんです。Facebookで動画を配信し始めてから、どの国に行っても「魔界、知ってるよ」って言っていただけるようになりましたし、国内のどの地方に行っても「魔界を一度、生で観たいんです」って言われるんです。例えば「大阪でもやってください」とか。でも、出演者、スタッフ合わせると50人以上ってことになるので……。だからってクオリティを下げてお届けするのもやっぱり違うと思いますし。
BBM とても分かります。ですから今回、改めて興味を持たれた方は新木場にお越しいただきたいですね。
志田 本当にそう思います。先日、台湾に行ったときも「今度、休みを取って日本に行くから、そのときは必ず魔界を観たい」って言ってくださったり、ありがたいことだと思います。
<後編に続く>
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