アメリカンフットボールの東西大学対抗戦、第4回「TOKYO BOWL(東京ボウル)」は12月10日、富士通スタジアム川崎で行われ、関東学生トップ8の3位・法政大学が24-23で、関西学生リーグの3位・京都大学に逆転勝ちした。東京ボウルで関東勢が勝つのは初めて。MVPには法大のRB桑原進之助が選ばれた。
法大が、スペシャルチームのビッグプレーで、劣勢の試合をものにした。
先制は京大。第1クオーター、ランプレーでファーストダウンを重ねて攻め込み、QB田中大輔からWR土田滉大へアウトサイドスクリーンパスが決まって20ヤードのタッチダウンとなった。追う法大は13分、QB野辺歩夢がキープしてエンドゾーンに飛び込んだ。京大は、第2クオーター4分に、K海士湧平の22ヤードフィールドゴール(FG)、前半終了間際にはQB田中からエンドゾーン奥のWR小松原一真にパスが決まり、法大を突き放した。京大はRB入山を中心としたアウトサイドのランが止まらず、前半だけでラン181ヤードを記録した。
後半、最初のドライブでも入山のランで攻め込んだ京大が第3クオーター3分に海士のFGで3点を追加、さらに直後のキックオフで意表を突くオンサイドキックが決まり、完全に流れは京大かと思われた。しかし、オフサイドの判定で京大のキャッチが無効となった。
法大は、負傷の野辺に替えて、2年生で登録上はWRの勝本将馬をQBとして送り出した。法大は、勝本と、RB桑原、岩田和樹のオプションでオフェンスのリズムをつかんで前進、勝本のTDで14-20と追いすがった。
京大は田中から小松原への36ヤードパスなどで攻め込み、海士のこの試合3本目のFGで9点差とするが、法大は直後のキックオフで、RB桑原が98ヤードのリターンTD、21-23とした。法大は第4クオーターには、京大ゴール前でRB岩田がファンブルしてボールを失ったが、ディフェンスが得点を許さず。13分に木村奎介が27ヤードのFGを決めて24-23と逆転。この試合初めてのリードを奪った。
1点を追う京大は、田中の冷静なクオーターバッキングとRB植木宏太郎の力強いランなどで確実に前進、法大ゴールまで16ヤードの地点で逆転のFGを狙った。しかし法大LB寺林翼が海士の蹴ったボールをブロックした。京大の反撃を食い止めた法大は、最後のプレーで、今季エースQBとしてチームをけん引しながら、シーズン終盤に負傷で出場できなかったQB馬島臨太郎をフィールドに送り込んでニーダウン。激戦に終止符を打った。
終了後、フィールドには両校の選手が入り混じって互いの健闘を称え合った。国内のアメリカンフットボールのゲームとしては異例だが、好勝負のボウルゲームにふさわしいエンディングとなった。
第4クオーター、90年代に回帰したかのような法大のオプションからのランに京大ディフェンスが翻弄され、残り1分40秒でついに逆転を許した。しかし、タイムアウトも3回残っており、入山らRBのランは好調、QB田中のパスもコンスタントに決まっていた。確実にボールを進めてFGの機会を作ればいい。K海士は今季FGの失敗がない。京大オフェンスは確実に前進した。法大陣30ヤードのサードダウンでは、85キロのRB植木が力強いランでファーストダウンを更新。残り23秒、法大陣16ヤードからの33ヤードFGトライ。京大の再逆転は限りなく確実に思えた。
しかし、スナップされたボールがセットされた瞬間、法大LB寺林が京大の壁の内側に入り込んでいた。寺林は海士のキックをブロックした。まさに値千金のビッグプレー、法大が最小リードを守り抜いて勝利を決めた瞬間だった。
寺林によると、法大はFGをブロックするために、ディフェンスがアンバランスで右側に選手を固めていた。法大ディフェンスの人数的なオーバーパワーに京大は対応しきれず、寺林にはブロッカーが割けなかった。フリーで入った寺林は「ド正面にキッカーが見えた。これは絶対に止められる。ここしかない」と感じたという。
1点差のリードで、京大オフェンス相手にずるずると進まれ、FGレンジに入り込まれた。しかし、FGブロックを決めたアンバランスラッシュのシステムは、何度も練習して、リーグ戦の最中でも上手く決まっていたため自信があった。
「TDだけは阻止して、FGに持ち込ませてあのシステムで止めよう」という意識があったため、ディフェンスの雰囲気は決して絶望的ではなかったという。止めた瞬間、寺林は「『MVPは貰った』と思っていたのですが、桑原さんのKR(キックオフリターンタッチダウン)がデカかったです」と笑顔を見せた。そして「このシステムを考えてくれた、スタッフのおかげだし、僕の左右で激しくラッシュしてくれて、僕をフリーにしてくれた仲間のおかげ。全員で止めたFGブロックだったと実感している」と語った。
京大の西村大介監督は「ウチのキッカーは関西ではトップ。あの場面で外れることはないと思っていた」という。キッカー、ホルダーを守る壁も今までは決壊したことがなかったという。「最後の最後にああいうことになったのは、誰が悪いというのではなくチーム全体の負けだった」と総括した。
法大の有澤玄ヘッドコーチは「フットボールは数字以外のところだと思っている」と話す。「ターンオーバーの数であったり、レッドゾーンの攻防であったり、ある程度は数字で決まる部分はあるが、しかしキッキングについては、数字に入ってこない部分がある」と選手やコーチたちには普段から言っていたという。「そういう部分が、選手たちには伝わっていたのかな」と振り返った。
来季、最上級生となる寺林は「今季は新体制でスタートして、最初はバラバラな部分もあったが、シーズンが深まるにつれて仕上がって、最後に一つになって厳しい戦いを勝ち取れるようになった。来年は今の一つになった状態のまま、最初から圧倒していきたい」と話した。「来年は、東京ボウルではなく甲子園ボウルで戦いたいね」ときくと、「いやいや、ライスボウルです。社会人を倒して日本一になります」と、目を輝かせて大望を語った。【小座野容斉】
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