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2017-10-19

エレコム神戸、地上戦で圧倒「スターウォーズ」勝利

Xリーグは10月15日、エキスポフラッシュフィールド(大阪府吹田市)で、第5節のエレコム神戸ファイニーズ対アサヒビールシルバースターの一戦が行われ、エレコム神戸がラン攻撃でアサヒビールを圧倒して、35-9で快勝した。エレコム神戸は3勝2敗で、ジャパンXボウル(JXB)トーナメントのワイルドカード(WC)以上が確定した。敗れたアサヒビールは1勝4敗となり、トーナメント進出が厳しくなった。

【エレコム神戸vsアサヒビール】第4クオーター最初のプレーで、25ヤードを走ってTDを決めたエレコム神戸のRBカンザリ

エレコム神戸〇35-9●アサヒビール

エレコム神戸が地上戦を支配し、会心の勝利を挙げた。第1クオーター、RBジョーダン・カンザリのランで攻め込み11分にQB糟谷啓二郎がWR和田俊亮に先制のTDパス。第2クオーター4分には糟谷がスクランブルして26ヤードを走りTDを決めた。アサヒビールは直後のオフェンスでワイルドキャットフォーメーションで、QBに入った柳澤拓弥が56ヤードのビッグゲインで一気に敵陣に攻め入ったが、詰めを欠きフィールドゴール(FG)で3点を返すにとどまった。後半、雨が本降りとなる中、カンザリのランが勢いを増す。第3クオーター7分、第4クオーター冒頭と、2本のランTD、試合を決めた。アサヒビールの後半の得点は、第4クオーターにQB安藤和馬がWR林雄太に決めたTDパスだけにとどまった。

1997年のXリーグ移行後、ファイニーズが前身のサンスター時代から通算しても、秋シーズンで1部の関東チームに勝ったのは初めて。JXBトーナメントでもWCを経ない本戦からの出場が濃厚となった。

【エレコム神戸 vs アサヒビール】厳しい表情を崩さないエレコム神戸の狩野HC

◇RBカンザリが真価を発揮

エレコム神戸は、ヘルメットのデカールが同じ「星」の古豪同士の対戦に「スターウォーズ」と題したポスターを張り出すなどこの一戦にかけていた。対するアサヒビールも、有馬隼人ヘッドコーチ(HC)が、開幕前、8月23日に行われたトークバトルで、今季一番勝ちたい相手としてエレコム神戸の名を挙げていた。当初期待された米国人選手3人は登録だけでチームに合流せず。それでも、ここまで1勝ながら、富士通戦、オービック戦では果敢な攻撃を見せて、チーム力向上を感じさせてきた。

そんな両チームの対戦が、意外な大差となった。エレコム神戸のヒーローは、RBカンザリだ。先制TDのドライブでは、9、10、18ヤードとランで3回ファーストダウンを奪い、糟谷のパスを助けた。第3クオーターには15ヤードのTDランでアサヒビールを突き放すと、第4クオーターには、インターセプトで得たチャンスを1プレーでTDに結び付け、勝敗を決定づけた。175センチと大柄ではないが、ファーストヒットでは倒れない力強い走りでラン19回146ヤード2TD、パスレシーブ2回54ヤードと、チームオフェンスの半分以上を一人で稼いだ。

【エレコム神戸vsアサヒビール】ラン146ヤード2TDで、エレコム神戸のオフェンスをけん引したRBカンザリ

カンザリは、米の強豪校が揃うビッグテンカンファレンス、アイオワ大の出身だ。NFLピッツバーグ・スティーラーズとそっくりのジャージーのアイオワ大は、フットボールスタイルでもスティーラーズばりのディフェンス&ボールコントロールのハードノーズド・フットボールで知られる。そこでカンザリは4年間で2073ヤードを走り、最終学年の2015年には984ヤード、1回平均5.4ヤード、12TDという成績を残した。チームは同年12勝2敗で、ビッグテン準優勝、ローズボウル(対スタンフォード大戦)にも出場した。NFLドラフトの候補にも挙げられていたほどだ。

ポジションの違いはあれど、同じビッグテン出身のノジマ相模原QBデビン・ガードナーにも劣らない実力派として、チームからもファンからも期待されていた。しかしカンザリの来日1年目は苦い思い出しかない。2戦目のパナソニック戦の試合冒頭で左膝を負傷、シーズンエンドとなった。チームもシーズン途中から3連敗と失速し、ワイルドカードは勝ち抜いたものの、JXBトーナメント本戦ではオービックシーガルズに完敗してシーズンが終わった。

今季もなかなか走れない試合が続いたが、前節、10月9日のIBM戦でラン119ヤードを記録。敗れたとはいえ、延長タイブレークまでもつれた試合でオフェンスの主役となった。あえて米国人QBを取らずにランで勝負する狩野良太HCの意図が、ようやく実現してきた形だ。

カンザリは「(アサヒビールという)とても強いチームが来ることは分かっていた。我々はとてもハードに練習し、オフェンスがエクスキュートできた。ディフェンスも同じようにハードにプレーした」と語った。これまでの試合では、オフェンスが望むような得点を取れなかったことを自覚しており、「この試合は(得点という)結果を出さなければならなかった。我々は、このリーグの中で自分たちが良いオフェンスを持っているということを、今日このゲームで証明できて、プレーオフにも進むことができた。グレートなチームウィンだ」と笑顔を見せた。左ひざの靭帯を痛めた去年の負傷は癒えており、良い調子だという。

次節で戦うLIXILについて、「とてもよくコーチされていて、とてもハードにプレーするチーム」と認識している。「だが、我々は今日のような試合を繰り返すだけ。可能な限りハードに練習し、今日の失敗を確認して、起こさないようにする。トップゲームに対する準備をする」と力強い言葉で締めくくった。

エレコム神戸はLIXILとは2年前に対戦し、完敗した。しかし今回はまったく分からない。IBMと互角の勝負を演じ、アサヒビールに圧勝したエレコム神戸の力は、これまでとは別物と言ってよい。スケジュールもエレコムに有利だ。LIXILの第5節のゲームはこれからで、強敵IBMビッグブルーで、21日に対戦する。その後中1週でのエレコム神戸戦となる。エレコム神戸としては、中2週の期間は練習時間が取れるだけでなく、力で押すフットボールには良いリフレッシュ期間となる。

エレコム神戸が、トーナメントで台風の目となる可能性が出てきた。【小座野容斉】

【エレコム神戸vsアサヒビール】第4クオーター、エレコム神戸のインターセプト後の最初のプレーで25ヤードを走ってTDを決めたRBカンザリ

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