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2024-07-17

変形性ひざ関節症教室 第37回(最終回) Q&A 運動療法・療養編

 ひざの名医・田代俊之ドクターに、変形性ひざ関節症について、多岐にわたり詳しくご紹介いただいている本連載「変形性ひざ関節症教室」は、今回で最終回です。最終回も患者さんからの質問にお答えいただきます。

Q よくなったら運動療法はやめていいですか?
A 運動療法を続けてコンディション維持に努めましょう

 運動療法を行うと症状は軽くなりますが、残念ながら軟骨が増えて変形性ひざ関節症が治るわけではありません。あくまでもコンディションを良好にして、症状を軽くしているだけです。運動療法をやめると痛い状態に逆戻りするため、症状がよくなってからも運動療法を続ける必要があります。

Q 運動療法をしないほうがいいケースはありますか?
A 安静時や就寝時に痛むようなときは避けましょう
 
 変形性ひざ関節症の運動療法には、ひざに負担のかからない運動を採用しています。そのため、ひざに痛みがあっても行うことができます。しかし、安静時や就寝時にひざが痛むときや、ひざが熱を帯びて腫れぼったいときには、症状の悪化が懸念されるので避けたほうがいいでしょう。
 また、ひざが引っかかって十分に伸びないときには、半月板損傷が疑われます。運動療法の前に主治医に相談しましょう。

Q 手術後は安静にしていたほうがいいですか?
A 手術翌日からリハビリテーションを開始します


 手術の治療成績はリハビリに左右されます。リハビリをしっかり行えばよい結果が得られます。手術後のリハビリは、手術直後から関節可動域訓練、筋力トレーニングを開始し、歩行訓練とつながっていきます。これらのリハビリは退院後も続けることが重要です。入院中はやり方を教わって、退院後に自宅でも自分でできるようにしておく気持ちで、リハビリに臨みましょう。

Q 変形性ひざ関節症でもスポーツはできますか?
A 無理のない範囲で続けてもいいでしょう

 運動はひざの痛みや負担を減らすことにつながるので、ひざを捻ったり大きな負担がかかったりするようなスポーツでなければ、無理のない範囲で続けてよいでしょう。
 お勧めのスポーツは水泳です。水の持つ浮力が働いてひざにかかる負担が少なくすみます。平泳ぎを除けば、変形性ひざ関節症が進んだ方でも行えます。特にクロールのバタ足はひざに負担がかかりにくく、大腿四頭筋を鍛えられるのでお勧めです。サイクリングもひざへの負担が軽く、大腿四頭筋も鍛えられます。
 ただし、大丈夫そうに思えるスポーツでも、間違ったフォームでやるのは注意です。ひざに負担がかかることがあるかもしれません。スポーツを行う前には主治医に相談してください。

最後に

 変形性ひざ関節症の症状はさまざまであり、治療法も人それぞれです。患者さんが置かれた環境も求めるゴールも違います。医師のサポートの下で治療法を選ぶことも重要ですが、「本人が主体的に治療を選ぶ」ことも同じくらい重要です。
 これまで37回にわたって、ひざの痛みにどのように対処していけばいいのかを考える際のヒントを紹介してきました。これらはすべて書籍「図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ『変形性ひざ関節症』」からの引用です。本書を参考に、ぜひ主体的に治療を選び、そして主体的に治療に取り組んでいただきたいと願っております。

プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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