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2018-03-23

トップリーガーが試合ごとに伸びる!プレーオフ特有の楽しさを味わおう。

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対バックス(写真)、対サハリンと一戦ごとに「チーム」としての成熟度が増している王子。日本勢唯一のファイナリストとして、ホームでどんな試合を見せるか 写真/山口真一

 3月23日には春の選抜高校野球が開幕するが、甲子園では「一戦ごとに選手が成長していく」という表現がよく用いられる。地方大会とはケタ違いの大勢のお客さんの前で、ワンプレー、ワンプレーに歓声が沸く中、高校球児はどんどんうまくなっていく。そして、そういう選手が多ければ多いほどチームは勝ち進んでいくのだが、それと同じ現象が氷の上で、しかもトップリーグの舞台で起こっている。坊主頭の球児と違い、選手はみんな、けっこういい年齢をした名門・王子イーグルスである。

 レギュラーリーグは5位で、プレーオフのファーストラウンドは敵地・日光での戦いだった。そこでの王子の戦いぶりを見て、驚いた人も多かったのではないか。パックを投げず、できる限り自分たちの管理下に置く試合運びはアイスバックスのお家芸だが、王子もまた同じように試合を進めていたからだ。特に3戦目は試合巧者ぶりが光った。1ピリこそ寄せの速いバックスFW陣のチェックに我慢のホッケーを強いられたものの、2ピリ以降、相手のエネルギーが落ちてきたと見るや得点を重ねて4対2で押しきった。

 桜井邦彦監督は「12月からバックス対策を考えてきた」と明かした。「勝つためには、バックスが嫌がることをやっていこうと。そう考えた時、一番嫌がると思えたのが、バックスと同じホッケーをやることでした。ウチは3シーズン続けてファーストラウンドを突破できていません。まずはここを勝ち抜きたかった。(勝てばセミファイナルで対戦する)サハリンのことは考えずに、バックスに勝つことだけを考えて練習してきました」

 王子は2勝1敗でセミファイナル進出を決めたが、ドレッシングルームでの歓声はひときわ大きかった。ひと昔前なら王子がバックスを研究し、対バックス用のホッケーをすることなど考えられなかったが、そんなところからも今は国内4チームの力が拮抗していることがわかる。

バックスを2勝1敗で退けた後、「サハリンで3連勝する気でやってきます」と語った主将の久慈。結果は3勝2敗、ギリギリでの勝ち抜けだったが、気力が充実していることは間違いない 写真/山口真一

 そして迎えたセミファイナル初戦。日光で「次に向けて勢いのつく勝ち方」(桜井監督)をしたはずの王子は、しかしサハリンにボコボコにされる。今季ワーストともいえる乏しい内容で、なすすべなく0対6で敗れた。インターネットで観戦したファンも多かったはずだが、この時点で王子の勝ち抜けを予想できた人はゼロに近かったのではないか。

 第2戦では先発ゴーリーが誰になるのか注目されたが、スタッフの判断は初戦に続いての成澤優太。前日、成澤は5点目を失った2ピリ限りで退き、3ピリを小野田拓人に譲っている。短期決戦だけに非常に難しい判断だが、2011-2012シーズンのバックスとのファイナルで、初戦KOの春名真仁を2戦以降も使い続けたように(初戦で春名の後を守ったのは成澤だった)、スタッフはエースGKを起用し続け、これに成澤は完封(3対0)で応える。

 1勝2敗とあとのない状況で苫小牧に戻ってからも、エース久慈修平らの活躍と、成澤を中心とした体を張った守りで僅差の試合を連取し、3勝2敗。完敗で始まったこのシリーズを勝ち越し、ファイナル進出を決めてしまった。いずれも1点差の厳しい試合だったが、終盤の献身的な守りは感涙ものだった。

 バックスとの試合を含め、王子にとって楽な試合は1つもなかった。しかし、厳しい試合を重ねていく中で選手が成長し、チームの成熟度は目に見えて上がっている。24日からはホーム苫小牧にハルラを迎えての2連戦。勝敗はもちろんだが、王子というチームがどう変容していくかに注目したい。そして願わくば、甲子園に負けない素晴らしい熱気が、白鳥アリーナにありますように。


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