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2024-07-16

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所3日目の一番】攻める横綱! 照ノ富士が左四つで若元春を圧倒し3連勝

鋭い立ち合いから若元春を圧倒した照ノ富士。やはり優勝争いの中心は、この横綱になっていくのか?

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照ノ富士(寄り切り)若元春

きのうの完璧な立ち合いの余韻が、体に残っていたのだろうか。
 
照ノ富士がこの日も思い切った「攻めの立ち合い」を見せ、左四つになりながらも若元春を圧倒、初日から3連勝とした。
 
この日の相手の若元春は、前回対戦した1月場所で、左四つから先手でうまく動かれて敗れた相手。今場所は大の里を破るなど連勝してきており、照ノ富士にとってもやりやすい相手とは言えなかったはずだ。
 
しかし、きのうの取組後、「(明生には)2連敗していたけど、相手うんぬんじゃなくて自分の体との闘い」と語っていた横綱にとっては、前回の対戦がどう、というよりは、やはりこの日も前日のような立ち合いができるかどうかがすべてだったのかもしれない。
 
この日も横綱は、相手の動きを恐れることなく、抜群の角度で思い切って当たる攻めの立ち合いを見せた。しかも、ただ勢いに任せて当たっていったわけではないところが、この横綱のうまさだ。左四つ得意の若元春に対し、自然に入る可能性の高い左は差しにいき、右だけをガチッと固めてまず当たった。若元春はまず左からおっつけて差す、という狙いに見えたが、照ノ富士は先に入った左を返して相手の右をバンザイさせ、右は差し手争いに持ち込まずに、差させながらも深く差すことは許さず、左右から若元春の体をホールド。四つこそ相手得意の左になったが、そのまま何もさせずに黒房下に寄り切った。

「当たれている感覚はありますね。初日に比べると全然。立ち合いにちゃんと当たることと、右から抱え込まないこと。先手を取っていれば、左(四つ)でも取れないことはないと思う。それだけしか考えていなかった」と照ノ富士。まさに思った通りの相撲だったようだ。少なくとも、今場所は相手を警戒して外から抱えにいくのではなく、自ら攻めて出る立ち合いに手応えを見出しているのは間違いなさそう。こうやって立ち合いから自分のペースで攻め切るということができれば、ヒザへの負担も少なくてすむ。

もちろん、「重みが出た感じ?」という問いに「まだちょっと違う。四股を踏んでも、足を下ろしただけで重さが真ん中に集中して、体が沈んでいくような感覚があるときは、本場所でも押されない。そこにはまだ入っていないから」と答えており、まだ両ヒザなどに不安を抱えていることに変わりはない。さらには横綱自身が「今場所は稽古が足りていない」と言っているので、15日間取るスタミナや、相手に動き回られた時のとっさの動きに不安を残すこともまた確かではある。が、この2日間の相撲を見ていると、もし、横綱が今の立ち合いを続けることができた場合、最初に横綱にペースを握らせず、動きの勝負に持ち込める力士がどれだけいるのか、と感じさせることも、また事実だ。

むしろ、横綱の立ち合いに変調をもたらす可能性を秘めるとすれば宇良や翔猿のような力士か、という気もするが、今後、照ノ富士の立ち合いがどう変わっていくかは、今場所の行方を決める大きなポイントになるだろう。
 
ここ一番の集中力ではやはり他の力士より一枚上、というものがある照ノ富士。今場所優勝すれば、名古屋では初めて(令和2年7月場所の優勝はコロナ禍のため国技館開催)、そして自身がずっと目標にしていた二ケタ10回目の優勝となる。明確な目標のある今場所は、今と同様の立ち合い一瞬の集中力を保ち続けられる可能性も結構あるような気がするが……。残り12日間は、それを通し続けるには果たして長いか、それとも短いか。

文=藤本泰祐

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