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2024-08-30

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第21回「対決」その4

平成28年九州場所3日目、一文字四股名の先輩・勢が輝を投げ飛ばして貫禄勝ち

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令和2年当時、白鵬も、鶴竜も青息吐息の状態で、とても両者相譲らず、がっぷり四つの状態とはいえませんが、大相撲の歴史を紐解けば、ライバル同士が激しく歯を剥きあう、対決の歴史でもありました。
戦後も、栃若に始まって、柏鵬、北玉。
最近も、貴乃花、曙の貴曙、白鵬、朝青龍の青白など、なつかしく思い出されるファンも多いんじゃないでしょうか。
でも、そんな大相撲史に名前が残るような名力士、大力士だけでなく、多くの力士たちがさまざまなかたちで対決を繰り広げています。
そんな土俵の片隅で火花を散らしあった珍対決集です。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

勢いで上回る

最近は十両以上の関取の四股名も、戦国時代の武将の名前を織り込んだものなど、凝ったものが増えてきたが、中には漢字一文字という単純明快なものがある。令和2年当時の現役力士で言えば、「輝」と「勢」だ。
 
この一文字四股名の関取は、長い歴史を誇る大相撲界でも意外に少なく、優勝制度が確立した明治42(1909)年以降でもたった9人しかいない。平成28(2016)年九州場所3日目、こんな希少価値の四股名を持つ西前頭8枚目の勢(現春日山親方)と同9枚目の輝が対戦した。江戸時代の天保4(1833)年10月場所初日の「璞(あらたま)」対「錦(にしき)」以来、幕内では実に183年ぶり、明治42年以降では初の一文字力士対決だった。
 
この珍対決に大いに館内は盛り上がったが、結果は右からの掬い投げで先輩格の勢の勝ち。前項の金色廻しに続いてここでも引き立て役に終わった輝は、 

「自分としては一文字四股名はいいと思っています。改名前も一文字(の達)だったので」
 
とつとめて淡々としていたが、勝った勢は、

「流れがよかった。いい相撲が取れました。ま、輝よりも勢いがあった、ということでどうでしょう」
 
と四股名をもじってニコニコ顔だった。
 
ザブトン一枚、あげましょうか。

月刊『相撲』令和2年12月号掲載

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