5月29日、都内ホテルで開かれた記者会見において紫雷イオのスターダム退団がロッシー小川社長同席のもと発表された。イオは昨年まで「プロレス大賞」の女子プロレス大賞を3年連続受賞、スターダムの主要王座の防衛記録も保持する、文句なしの日本女子プロレス界の顔だった。
そのイオが自身を文字通りスターダムに押し上げてくれた団体を退団。同団体には6年間所属。ここでできることはやり尽くした感は否めず、次のステージへ歩を進めようとする気持ちが芽生えるのはトップレスラーとして当然の感情ともいえた。
会見6日前の5・23後楽園ホール大会では同じユニット“クイーンズ・クエスト”の後輩・渡辺桃に敗れ、ワンダー・オブ・スターダム王座から陥落。それまでV10の防衛記録を作っていたが、V11の更新ならず10歳も年下、18歳の新鋭に敗れた。そこで踏ん切りがつき、今回の決断の後押しとなったとしても納得はいく。
常々スターダム愛を口にして、エースとしての責務を果たしてきたイオがそこを飛び立つからには、当然、目指すはより高み。現状の日本女子プロレス界ではスターダムかトップを走ると見られており、そうなると必然的にイオが見据える先は国内ではなく世界。そして現在の世界のプロレスを見渡して、イオの実力と実績に見合う女子選手が活躍できる舞台はWWEしかないだろう。
思えば1年前にもイオにはWWE行きのウワサがあった。同時期に同じウワサのあったスターダムの後輩でありライバル・宝城カイリはウワサ通り、その後、WWE入り。現在はカイリ・セインとしてNXTの舞台で活躍。4月にはバトルロイヤルながらプロレス世界最大イベントの「レッスルマニア」にも出場した。
1年前のイオは6月から首の負傷で欠場していた。欠場中には日本公演をおこなったWWE両国国技館大会を観戦。そこではビジョンでWWE入りが正式発表されたカイリの姿を見ることにもなる。
この時期のイオは欠場明け、自分がどう復帰すればベストな選択になるか模索していた。WWE入りして大きな話題となったカイリに対するライバル心もあっただろう。その時期に取材した際の話では、どのリングにどのタイミングで復帰すればインパクトを残せるかを必死に考えていた。そこからは強いプロ意識の高さを感じずにいられなかったことをよく覚えている。
1年前の時点でもスターダムでやるべきことはやり尽くしている感はすでにあった。イオにとって選択肢はいくつもあるようで、WWE入りしたカイリに負けないインパクトのある舞台となると限られてもいた。
結果、イオはスターダムで復帰する道を選んだ。それは結果だけを見れば元通りとなるが、考えに考えた末の元通り。1年後の現在を見るとより高く飛び立つため、必然の“元通り”だった。この1年間はスターダムにとって“イオ抜き”開始までの猶予期間であったように、イオにとってもまたさらなる高いステージへ向かうために必要な準備期間でもあったのだろう。
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