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2024-11-26

【サッカー】サッカーにおける状況判断の重要性 三笘薫を育てた川崎F U-18の指導法 その3「守備とは」

チームの守備コンセプトは提示するが、「構え癖」をつけずに一人ひとりが能動的にボールを奪う意識を持つことで、よりチーム・個人の状況判断が求められる(Photo:土屋雅史)

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サッカーにおいて、判断が重要であることは言わずもがなである。指導のエキスパートたちは、目に見えない判断をどのように教えているのかを探る特集。川崎フロンターレのアカデミーは、三好康児、三笘薫など、のちの日本代表を多数輩出しているが、U-18チームでは、状況判断の指導において、どのようなアプローチがなされているのだろうか? 2020年から監督を務めている長橋康弘に、5つのテーマ別に、話を聞いた。この回では『③守備』について、本誌より引用する。
(引用:『サッカークリニック 2024年12月号』 【特集】図解つき!サッカーの優れた状況判断PART1:川崎フロンターレU-18より)

取材・構成/土屋雅史

①状況判断はこちらから
②攻撃はこちらから

|取られたら戻って、もう1回取りに行ってほしい

―守備時の状況判断については、どのように考えますか?

長橋 守備で構える際のコンセプトを選手たちに提示しますが、それを言いすぎると、ボールを奪うという、そもそもの大事なところが抜けてしまいます。難しいことを言う前に、まずは、ボールを奪うことがものすごく大事だなと思ったことがあったんです。ボールを取るためのチームとしてのコンセプトはありますが、うしろ主導というよりは、行けると思ったら、行って良いということで、そこのところは、選手に言う割合をちょっと変えました。

グループで守ること、グループでボールを奪うことを習い始めるのは、中学生あたりですが、日本人は真面目なので、そこを教えると、みんな「構え癖」がつくんです。中学1年生は、8人制から11人制になるタイミング。コートもボールも大きくなる中で、ボールを取りに行かずに構えるばかりになってしまったら嫌ですね。打ち合うことをやめずに、ボールをどんどん取りに行ってほしいですし、取られたら戻って、もう1回取りに行ってほしいです。

グループでボールを奪う部分ばかりになって、1人で奪う能力を削るのは良くないと思います。そこのところで、自分の考え方や求めるものが少し変わってきたかなと感じます。


3つのNGを意識させたうえで、チームでも個人でもボールを奪うことを目指す。川崎F U-18の攻撃は、守備からも始まっている(Photo:土屋雅史)

―守備時の状況判断において、大事なことは何でしょうか?

長橋 守備の場面では、「4-4-2」あるいは「4-2-3-1」で構えた際に、まずは、チームの中で方向を決めることを考えます。相手の展開がサイドに行った場合は、「そっちのサイドでちゃんとロックをかけられるのなら、フォワードの選手がサイドを変えられないように追った上で、全体がある程度スライドしながら、ボールサイドでボールを奪おう」と言っています。チームの中で方向を決めた上で、サイドでしっかりと仕留めようということです。

セットした際の奪いたい絵を提示していますが、それだけではわからないところがあるので、NGワードを3つ設けています。プレスに行った際にフォワードが入れ替わられると、同サイドに集めたものが一気に全部外された状態になるので、「入れ替わられる」のはNGです(図6)。


 図6
※図6の解説はこちら

それと、自分たちのライン間で相手のうまい選手に前向きになられると、ピンチに陥ります。これは、守備時のAゾーン、Bゾーン、Cゾーン、Dゾーンのどこにおいても同じで、「前向きをつくられる」のも、絶対にNGです(図7)。背後にシンプルに蹴られて、一発食らったことがあるので、3つ目として、「背後をとられる」のもNGです(図8)。


 図7
※図7の解説はこちら


 図8
※図8の解説はこちら

そういったことをチームのコンセプトにした上で、まずは、方向を決めて、ボールサイドでボールを奪うことを目指します。3つのNGを意識させた上で、「入れ替わりに注意しよう」「ライン間で前向きをつくられないようにしよう」「一発で背後をとられないようにしよう」という組み合わせをつくりながら守るイメージです。


-NAVIGATOR- 長橋康弘[川崎フロンターレU-18 監督](Photo:土屋雅史)


PROFILE
長橋康弘(ながはし・やすひろ)
1975年8月2日生まれ、静岡県出身。94年に、静岡北高校から清水エスパルスに加入した。97年に川崎フロンターレに移籍し、2006年に引退。翌シーズンから川崎Fで指導を始め、U-12チームのコーチやU-18チームのコーチなどを歴任した。18年からはU-15チームの監督を務めたあと、20年にU-18チームの監督に就任。日本サッカー協会公認A級コーチライセンスを持つ

『【フロンターレ式状況判断】テーマ別に見るJクラブユースの状況判断の磨き方』を掲載した「サッカークリニック2024年12月号」は
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