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2024-11-16

【相撲編集部が選ぶ九州場所7日目の一番】豊昇龍、阿炎に引き落とされ土。阿武剋も敗れて全勝消える

きのうまで全勝できていた豊昇龍は、阿炎の引き落としにバッタリ。1敗が4人、大の里らが2敗で続き、優勝争いは分からなくなってきた

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阿炎(引き落とし)豊昇龍

予感が当たることも、たまにはあるものだ。
 
きのう、「優勝争いは、まだ予断を許さない展開が続きそうだ」と書いたが、果たしてその通りになってきた。
 
きのうまで全勝だった豊昇龍と阿武剋に土がつき、幕内の全勝がいなくなった。
 
この日、先に土俵に上がったのは阿武剋。今場所の番付で対戦圏内にいる中では最大の難敵と目される尊富士との対戦だ。
 
阿武剋は、初日からここまで、多少攻められることはあっても、体勢を崩されるケースはほとんどなく勝ち続けてきた。だが、さすがに、優勝経験者の当たりは違った。
 
尊富士は低く、速い立ち合い。阿武剋は少し当たり負ける形になった。そして尊富士は、二の矢の攻めも速い。すかさず左ハズで阿武剋の上体を起こし、攻めながら左を差し勝つ。そのまま一気に出て向正面に寄り切った。
 
そして豊昇龍だ。今場所は、宇良、若隆景、熱海富士と、このところ対戦成績がよくない相手からも白星をもぎ取ってきているが、この日の相手の阿炎も、この一年の対戦成績は勝ち、負け、勝ち、負け……と「ヌケヌケ」になっており、得意な相手ではない。ちなみに先場所は、立ち合いに変化されて敗れている。
 
もしかしたら、その辺が頭にあったのかもしれない。この日の豊昇龍は、立ち合い、ちょっと立ち遅れた。結果的には、これが致命傷。やや突っ込みが不十分な体勢で阿炎の突きを受けることになり、立ち合いでアゴを上げられてしまった。左足が流れたところですかさず阿炎の引き。この辺の呼吸はもはや阿炎の十八番だ。豊昇龍はバッタリ手をつき、あっさり勝負は決まった。

「しっかり先手を取ることしか考えていなかった。当たれば体が勝手に動くだろうと。先手を取ったので、あの動きができたと思う」と、阿炎はしてやったりだ。
 
豊昇龍は、「立ち合い合わなかった?」と聞かれ、「それを言ったら言い訳になるので。待ったかなと思わずにいけばよかったと思います。しょうがない。終わったことなので、あしたのことを考えていきたい」と、気持ちを次に向けていた。この日の負けは一瞬の立ち遅れなので、あすからに響くような内容ではないとは思うが、場所序盤のような立ち合いの集中力を取り戻せるかがカギだ。
 
7日目を終わって、1敗は琴櫻、豊昇龍、隆の勝、阿武剋の4人に。そして、きのう2敗となっていったん自力優勝の目が消えた大の里にも、再びその可能性が復活した。
 
あすが中日8日目の折り返し、というところで、再び3大関を中心とした優勝争いに形勢が戻っていきそうな感じになってきたが、さてこの後はどうなるか。
 
最近の取組編成では、9日目から急に平幕の好成績者が上位と当てられだす傾向があるので、おそらくそのあたりから隆の勝が連続で三役戦が組まれることになるだろう。そこでどの程度の星を残せるかが、後半の最初の焦点になろう。
 
大関陣がそこを乗り切って終盤までいければ、いよいよ13日目以降の直接対決によって雌雄を決するという流れになる。そしてもし、その終盤まで阿武剋なり尊富士が大関陣と同じぐらいの星勘定で勝ち進んでいれば、3大関に加えてプラス1のリーグ戦もあり得る、という感じだろうか。
 
なんとなく優勝争いの展開は見えてきた気はするが、では誰が勝ちそうか、と言われると、いやはや、まったく予想がつかなくなってきた。

文=藤本泰祐

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