プロレスがゴールデンタイムの地上波で放送されていた時代のスーパースターの一人、藤波辰爾の長男である玲於奈(れおな)が“LEONA”としてプロレスデビューをしたのは、いまから3年前の2014年11月のこと。日本もいまや芸能界などでは大物二世タレントが当たり前のように活躍しているが、プロレス界においてはまだまだ珍しい存在。それだけにデビュー当時のLEONAの注目度は高かった。
デビュー戦では父である藤波辰爾のつき人を務めていたこともある大物・船木誠勝と対戦。その後も父の方針もあり、LEONAはホームリングのドラディションで大物レスラーとのシングルマッチが続いた。丸藤正道、鈴木みのる、関本大介……普通だったらデビューしたばかりの新人がシングルで対戦できることはまずない大物との対戦は、言うまでもなく父の名前があればこそ実現したもの。
ビッグネームとのシングルマッチは当然実力差があり歯が立たなくても、経験という意味では今後の糧になる。プロレスラーとして成長するうえでもマイナスなことはないが、LEONAの大きな問題点は大物レスラー以外との試合経験が普通の新人に比べてかなり少ないことだった。ドラディションは父・藤波辰爾が興行をおこなっている団体だが、大会は年に数回。もちろんドラディション以外の他団体への参戦もしてきたLEONAだが、この3年間レギュラー参戦、月何試合とまとまった形であがる団体はなかった。
父親のレスリングスタイルにあこがれてこの世界に入ったLEONAだけに、派手なファイトではなくクラシカルで堅実なスタイル。デビュー前からイギリスのビリーライレージムでランカシャーレスリングに傾倒するなど、プロレスラーとして、ある程度の型はできていた。だが、それを実践するにはどうにも実戦が足りない。しかも新人にとってデビューから3年というのはさまざまなことをスポンジのように吸収できるかけがえのない時間。
普通の新人では経験できない経験をしてきたことはLEONAの大きな武器だが、普通の新人が経験していることを未経験という現実は大きなマイナス要素。だが、まだ遅すぎることはない。この8月からLEONAはかつて東京ドームで藤波辰爾とタッグを組んだこともある三沢光晴さんが作ったプロレスリングNOAHに定期参戦が決定。すでに8・6後楽園で初戦を終えているが、パートナーを務めた“方舟の象徴”丸藤正道から「0点」というシビアすぎる採点をされた。いままでのLEONAは“藤波二世”という肩書もあり、公の場で先輩から厳しいコメントが出ることは少なかった。
そんな中、丸藤が「0点」をつけたのは、それだけNOAHがLEONAに対して本気で向き合ってる証。お客様扱いで使うつもりだったら、「さすが藤波さんの息子」と無難に称えておけば済むのだから。NOAH参戦はLEONAにとって、早くも訪れたプロレスラーとしての正念場どころかラストチャンスかもしれない。その証拠にもっともLEONAを身近で見てきた父・辰爾は、「自分のレスリングを発揮できなければレスリング界から存在として消えていくしかない」と、NOAH参戦にあたり厳しいメッセージを息子に送っている。
一般的にはそろそろ新人色が抜けるはずのデビュー4年目を前にようやく訪れたLEONAの“新人時代”。この貴重な時間をどう使うかによって、プロレスラーLEONAの道が決まるといっても過言ではない。
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