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2025-01-26

【相撲編集部が選ぶ初場所千秋楽の一番】「1日3勝」の豊昇龍が巴戦を制して大逆転V。綱取りでも大逆転起きるか⁉

優勝決定巴戦で、金峰山に勝った後、王鵬も寄り倒して大逆転Vを飾った豊昇龍。横綱昇進も大逆転で手にすることができるか

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豊昇龍(寄り倒し)王鵬

大逆転だ。
 
金峰山に星一つのリードを許して迎えた千秋楽。豊昇龍が本割、そして優勝決定巴戦と3連勝。これしかない、という展開で、見事に逆転優勝を飾った。
 
まずは本割の王鵬-金峰山戦。ここで金峰山が勝てば、すんなり金峰山の優勝だ。豊昇龍としては自力ではどうにもできず、他力本願の状況だが、王鵬が金峰山の突きをうまくイナして押し出し。この時点で金峰山と王鵬の優勝決定戦進出が決まり、豊昇龍にも可能性が開けた。

「チャンスが出てきたときに、”これで逃したくない“と思って(気持ちを)入れました」という豊昇龍に、ここでスイッチが入った。
 
そして本割結びの琴櫻-豊昇龍戦。豊昇龍はここで勝たないと決定戦への進出を逃すことになる。一瞬右四つ、左上手を取られて胸を合わされかけたが、落ち着いて左から攻めてモロ差しとなり寄り切り。優勝決定戦進出を決めた。
 
こうなると、今場所好調とはいえ相手の2人は平幕。負けるわけにはいかない。「何も考えずに、自分の相撲を取りたいという、その気持ちで土俵に上がりました」という豊昇龍は、まず金峰山戦、突っ張り合いにいかずに、張り差しから右の下手を取って投げで崩す、といううまい作戦の相撲で寄り切り。
 
続いては王鵬戦。押し合いの中で一瞬腰が入りかけたが、落ち着いて右四つに組み止め左上手。大きい王鵬に胸を合わされると楽ではないだけに先手で動き続け、いつも繰り出す右からの投げではなく、左からの投げで崩して、最後は寄り倒し。勝負が決まると、「ヨッシャ!」とばかりに土俵でほえた。
 
優勝決定戦の2番は、ともに、多少慎重なところを見せながらも、好調な力士を相手にペースを渡さず、引き出しの多さを見せて勝つ、という、上位力士らしい力を見せた内容だった。金峰山、王鵬も力をぶつけ、それを大関がはね返した、いい優勝決定戦だった。
 
この結果を受け、協会は豊昇龍の横綱昇進を横綱審議委員会に諮問することに。あくまでこれから議論されるということで、まだ昇進決定とは言えないが、その可能性は高まってきた。

「綱取り場所」と言われた今場所、9日目までに平幕相手に3敗を喫した時点では、もはや豊昇龍の綱取りは絶望的かと思われた。しかし、そこで立浪親方(元小結旭豊)にかけられた「楽しくやれ」という言葉に、自分が考えすぎていたことに気づき、同時に背中を押されたという。「結果は、ついてくればそれでいい」という思いに至った時、道は開けた。
 
もちろん、ここ2場所は準優勝、優勝だが、さらにさかのぼると、昨年7月、9月は9勝、8勝に終わっていることなどを不安視する声はある。ここ2場所は攻める相撲に変わって結果を出したが、それが続けられなければ、もともと反応と技のキレで勝負するタイプ力士なので、いっぺんに苦しくなる可能性もなくはないだろう。
 
ただ、長く一人横綱として君臨してきた照ノ富士が引退したという状況では、残った者の中から相対的に強い者が上に立つ以外にはなく、そこにあまり高いハードルを課していては角界の看板がいつまでたっても生まれない、ということも間違いないだろう。本当にここは、「どうすべき」ではなく、「どうするか」という問題だと思う。
 
照ノ富士が場所中に引退し、明確な世代交代は目に見えなかった今場所。しかし、次の時代は、いやおうなくやってくるのだ。上げてうまくいくか、いかないかなど、現時点では誰にも分からない。そこは潔く天に任せてしまう、というのも、一つの選択かもしれない。

文=藤本泰祐

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