アメリカンフットボールの世界最高峰、NFLの王者を決める第59回スーパーボウルは、米ルイジアナ州ニューオーリンズのシーザーズ・スーパードームで日本時間2025年2月10日午前(現地9日夜)に行われ、NFC王者フィラデルフィア・イーグルスが、AFC王者カンザスシティ・チーフスを撃破して、7年ぶり2度目の王者に輝いた。チーフスは史上初となるスーパーボウル3連覇を達成できなかった。
イーグルスは2年前の第57回スーパーボウルでチーフスに35-38で敗れた雪辱を果たした。MVPにはイーグルスのQBジェイレン・ハーツが選ばれた。
第59回スーパーボウル○フィラデルフィア・イーグルス(NFC) 40-22 ●カンザスシティ・チーフス(AFC) 2025年2月9日、ルイジアナ州ニューオーリンズのシーザーズ・スーパードーム(観客数:65,719人 試合時間3時間36分)
得点経過は次の通り。
イーグルス【7-0】 1Q 残り6分15秒 QBハーツ1ヤードランTD(キック成功)=7プレー69ヤード, 3分25秒イーグルス【10-0】 2Q 残り8分38秒 Kエリオット 48ヤードFG =7プレー27ヤード,3分59秒イーグルス【17-0】 2Q 残り7分03秒 CBデジャーン38ヤードインターセプトリターンTD(キック成功) イーグルス【24-0】2Q 残り1分35秒 QBハーツ⇒WRブラウン12ヤードパスTD(キック成功) =2プレー14ヤード, 0分10秒イーグルス【27-0】3Q 残り5分18秒 Kエリオット 29ヤードFG=12プレー69ヤード, 6分42秒イーグルス【34-0】 3Q 残り2分40秒 QBハーツ⇒WRスミス46ヤードパスTD(キック成功) =1プレー46秒, 0分07秒チーフス【34-6】 3Q 残り0分34秒 QBマホームズ⇒WRワーシー24ヤードパスTD(2ポイントCV失敗) =5プレー90ヤード, 2分06秒イーグルス【37-6】 4Q 残り9分51秒 Kエリオット 48ヤードFG=10プレー40ヤード, 5分43秒イーグルス【40-6】 4Q 残り8分01秒 Kエリオット50ヤード FG=4プレー1ヤード, 1分41秒チーフス【40-14】 4Q 残り2分54秒 QBマホームズ⇒WRホプキンス7ヤードパスTD(2ポイントCV成功) =12プレー75ヤード, 5分07秒チーフス【40-22】 4Q 残り1分48秒 QBマホームズ⇒WRワーシー50ヤードパスTD(2ポイントCV成功)=1プレー50ヤード, 0:08秒
ブリッツゼロの4メンラッシュで、チーフスオフェンス破壊チーフスの最初のオフェンスシリーズ。3rdダウン9ヤード、イーグルスのビック・ファンジオDC(ディフェンシブ・コーディネーター)は、大型で、とてもアスレチックなCBクーパー・デジャーンを、チーフスTEトラビス・ケルシーにマンカバーさせた。
さらに、大型S、リード・ブランケンシップもケルシーに付けた。そして、チーフスのレシーバー全員をマンツーマンさせた。
チーフスQBパトリック・マホームズはホットラインのケルシーをプレーから除外された状況で、4メンラッシュでポケットを壊され、逃げまどいながらようやくパスを投げ、危うくインターセプトされるところだった。
これが予兆だった。このプレーと類似の状況が延々と繰り返された。マホームズも、結局は神の子ではなく1人の人間であることが証明されたスーパーボウルだった。
信じがたいデータがある。NFLが公表したネクストジェネレーションスタッツによると、 イーグルスはスーパーボウルで、チーフスのQBに、プレーの38.1%でプレッシャーをかけたが、ブリッツは1回も入れなかったというのだ。
2年前にイーグルスがスーパーボウルでチーフスと対戦した時は、NFL史上に残るシーズン70サックのディフェンスを持って臨みながら、QBマホームズを一度もサックできなかった。
しかし、今回のイーグルスは、ディフェンスのフロント4が、一貫して素早く強いプレッシャーをかけ、結果的に、この試合のほとんどを、7人のパスカバーでプレーできたという稀有な特権を得ることができた。
イーグルスは前半、チーフスのオフェンスをほぼ完全に止めた。チーフスはトータル23ヤード、ランは3ヤード、ファーストダウン更新はわずか1回だった。そして、今季第12週から8試合インターセプトが無かったマホームズから、2ドライブ連続でインターセプトを奪い、1本はそのまま「ピック6」、もう1本もその後のオフェンスがTDに結びつけた。
結局マホームズは、キャリアワーストとなる被サック6回、インターセプト2回、ファンブルロスト1回。勝敗が事実上決まった第4Qでも、全力でTDパスを狙いに行ったのは、もちろん現役最高のQBとしてのプライドだろうが、最悪の感触のままで今季を終えたくないという考えもあったのではないだろうか。
ディフェンス達人ファンジオが優れた素材を鍛え イーグルスの2023年シーズンは、後味の悪いものだった。11月まで10勝1敗の快進撃を続けながら、12月以降が1勝5敗。
プレーオフはワイルドカード初戦で敗退した。その間7試合で214失点、1試合平均30以上の失点で、ディフェンスの崩壊は明らかだった。
解決策の一つが、ディフェンスマスターの66歳、ビック・ファンジオのDC(ディフェンシブ・コーディネーター)起用だった。
さらに、ドラフト指名権1巡は22位ながら、ポジションNo.1のCBだったキニヨン・ミッチェル(トレド大)を獲得、さらに2巡40位でオールアメリカンの万能CBクーパー・デジャーン(アイオワ大)を指名する幸運に恵まれた。指名権上位チームがQB、WR、OTの獲得に集中したためだった。
もともとこの数年、カレッジフットボールでディフェンスによる王朝を築いていたジョージア大から、DTジェイレン・カーター、DEノーラン・スミス、DTジョーダン・デービスら、優れた素材をドラフトで獲得していた。
彼らが、厳格型コーチのファンジオによって鍛え上げられた。その最大の成果が、この大舞台で見事に披露された。デジャーンは、「ピック6」で、自ら22歳の誕生日を祝った。
イーグルスの前回のスーパーボウル制覇は、2017年の対ペイトリオッツ戦勝利だったが、ペイトリオッツがその前後のスーパーボウルを優勝していたため、結果的に3連覇を阻むことになった。2度の優勝が、いずれも王朝チームの3連覇阻止というイーグルス。スーパーボウルの歴史に新たに名を刻んだのは間違いない。




