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2025-03-12

【サッカー】俺たちのトレーニングプランJクラブ編:ギラヴァンツ北九州 前編

(Photo:©GIRAVANZ)

僕の中では50%でも、コーチの中で100%なら、向かっていくところとしては問題ない

サッカークリニック4月号の特集「新時代のトレーニング計画法」の中から、今回はJクラブの取り組みを前・後編に分けて紹介する。J3優勝とJ2昇格を目指し、2025シーズンを戦っているギラヴァンツ北九州では、どのようなトレーニング計画で、強化が進められているのか? このチームを率いている増本浩平監督は、育成年代の指導経験が豊富だが、トップチームを率いる今、一週間のプランニングの仕方などの指揮官の考えは? 多岐にわたって迫る。
前編ではトレーニングの計画の意味や、プロと育成年代の違いなどを語る。

取材・構成/土屋雅史

(引用:『サッカークリニック 2025年4月号』-【特集】新時代のトレーニング計画法 PART2:俺たちのトレーニングプラン-より)

|オーソドックスなコアの部分を忘れない

─トレーニングを計画する意味をどのように捉えていますか?

増本 自分たちが立てたシーズンの目標がある中で、そこから逆算しながら、チームが1番躍動するために計画するものだと思います。

─計画は、育成年代のチームとプロのトップチームでは大きく異なりますか?

増本 育成年代を教える際は、その選手の3年間の大枠のイメージを持ちつつ、目の前の1年間でどう成長させていくかを考えます。育成年代の場合、公式戦がない週が出てきますが、プロは、対戦相手が違う試合が毎週ある中で、その試合で勝つためのトレーニング要素があります。そこが、育成とプロの大きな違いかなと思います。

─トレーニング計画を立てるときのポイントを教えてください。

増本 アカデミーにいた頃は、サッカーをずっと楽しんで、サッカーにずっと携われるような技術、判断、インテリジェンスをベースに考えることが多かったです。でも、松本山雅FCで反町康治さんと仕事をした際に、試合に勝つためには何が必要か、ここまでに何を身につけるべきか、そういったことのプランを立てたら、そこを軸に逆算していくことが大事だと学びました。

ちょっと前にバルサ(FCバルセロナ=スペイン)ブームがきて、ボールポゼッションが主流になりましたが、そのときは、育成のトレーニングの中に、華やかなものが、すごく多くなりました。でも、そこはサッカーの外側の部分で、コアな部分をしっかりと握らなければいけません。トレーニング計画にしても、オーソドックスなコアの部分を忘れないようにしています。

─トレーニングの計画を立てるのは好きですか?

増本 「好きだった」、ですかね。アカデミーでは、トレーニングを全部自分で考えて、負荷をこうしてということをやらなければいけません。でも、プロのトップチームにはフィジカルコーチがいて、ゴールキーパーコーチがいて、アシスタントコーチもヘッドコーチもいます。一人ひとりにそれぞれの役割があるので、やりたいことを共有する程度に留めています。

ここまででこうなるというイメージが自分の中にざっくりとある中で、トレーニング自体は、コーチたちにほとんど任せています。

─コーチングスタッフは、トレーニングの計画に関わりますか?

増本 フィジカル面は、フィジカルコーチがレイモンド・フェルハイエンのピリオダイゼーションに基づいてやっていますが、期分けの中で、負荷の強度や量をコントロールしていく計画を出してもらっています。その中で何をするかはコーチが考えますが、要所は僕が握っているので、大枠のところがブレなければ、変な方向には絶対にいきません。僕が意識しているようなチームに、だいたいなります。

自分がトレーニングを全部計画して、そこからでき上がるものは、僕の中ではある程度想像できます。でも、そこをみんなに分担してもらうと、僕の想像を超えてくる気がします。アイディアをどんどん出してもらって、そこから自分がインプットできるものがあれば、自分の成長にも彼らの成長にもつながります。当事者意識を持ってくれるだろうという感覚があるので、今は、僕が最後の決定権を握るような形でやっています。

|トレーニングメニューの作成基準


「シメオネ監督が話している『Partido a Partido』がベース」(Photo:©GIRAVANZ)


─トレーニングメニューの作成基準などは、どんなところに置いていますか?

増本 試合期になると、試合のフィードバックと次の相手への対策という流れがあります。「この前のゲームでは、こういうところが課題として出たから、こういうところをもっと伸ばさなければいけない」となった場合、それに対して、「トライする方法を考えなければいけない」とか「今は、勝ち点がいくつで、この試合は落とせないから、ここを強化しなければならない」ということになってきます。

次の対戦相手が決まっている中で、そこに対して、何ができるかに取り組むのがプロだと思うので、基準は、やはり試合になります。ディエゴ・シメオネ監督(アトレティコ・マドリード=スペイン)が話している「Partidoa Partido(スペイン語で1試合、1試合)」がベースです。


増本浩平
(ギラヴァンツ北九州監督)
PROFILE
ますもと・こうへい/ 1982年7月11日生まれ、神奈川県出身。ガイナーレ鳥取でプレーした2008年のシーズンを最後に、現役から退いた。09年に横河武蔵野FCジュニアユースのコーチに就任、11年から同ユースの監督を務めた。17年に松本山雅FCに移り、U-15チームの監督やトップチームのコーチなどを歴任。21年から鳥取でヘッドコーチの任にあたり、23年のシーズン途中からチームを率いた。24年から、ギラヴァンツ北九州の指揮官として、采配を振る(Photo:©GIRAVANZ)

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