1月22日に発売になった3月号には、昨年12月9日に開催されたJALホノルルマラソンのレポートを掲載している。編集部も取材を兼ねてフルマラソンに参加し、編集長のタカハシは自身初のフルマラソンに、斎藤は2011年以来7年ぶりのホノルルマラソン(フルマラソンは2012年以来6年ぶり)に挑戦した。
編集長のタカハシの初マラソン挑戦記は、連載「フルマラソン サブ4への道」の2~4月号に掲載しているので、ぜひ。ここでは、私、斎藤の完走レポにお付き合いください。
「これは長旅になりそうだな…」
そう思ったのは、まさかのスタート直後の3㎞地点。すでにふくらはぎに疲労を感じていた。過去の経験から推測するに、中間地点通過時くらいのパンパン具合。こんな状態で、絶対に走り切れるわけがない。
スタート直後からこんな状態になってしまった原因は明白だった。それは、単純な練習不足とスタートするまでに脚を使ってしまったこと。
クリール編集部への異動を受けたのが、2018年9月1日。きっと誰でもそうだと思うけれど、異動は突然のことで、そのときにはフルマラソンを走る準備など心身ともに一切していなかった。しかも、その時点で左足首捻挫、左足指骨折、左手首の靱帯損傷を受傷しており、治療期間を含めて過去1年ほど激しい運動は禁じられていたのだ。それでも、クリールに2012年まで在籍していた身としては、異動になったからには、機会があるのならば出し惜しみせず、12月のホノルルを走ろうと決めた。
つまり、練習期間は正味2カ月半。そんな付け焼刃的な練習で筋持久力を全く養えていない上に、ホテルからスタート地点までを歩いていくという選択をしてしまった。これがまた想像以上に遠く、45分もかかり、最後にはスタート1分前のアナウンスがかかって慌ててスタート地点まで走って向かう、というありさまだったのだから、スタートの号砲が鳴った時点で、「もう疲れちゃった」となってしまうのは当然のことだ。
キロ7分弱ペースで走り、5㎞ごとにウォーキングを入れてリカバリーを図りながら5時間ちょっと、ダイヤモンドヘッドの上りをすべて歩いても5時間30分以内で帰ってくる――。そんな青写真を描いていたが、それは3㎞地点であっさりあきらめた。
キロ7分で無理なら、キロ8分ペースで――。無理せず、でもできる得る限りの最速タイムで走るために、5㎞過ぎでそう決めた。って、制限時間がないホノルルマラソンなのに、ペース設定を決めちゃうあたりが、駄馬なくせにメンタルだけ無駄に陸上部だよなぁ…と自分で笑った。
肉体的につらい分、レースを楽しまなくてはやっていけない。いつも以上に沿道や景色に目がいった。まだ夜明け前のダウンタウンではムームーを着たサンタクロース夫妻(?)のクリスマスイルミネーションをじっくり見て、序盤から給水所の学生さんと目を合わせて“Thank you”と伝えながらカップを受け取る。レーススタートが5時なのだから、この子たちは何時から準備していたんだろう…。頭が下がる思いだ。7年ぶりのホノルルなので、ワイキキ通りも観光気分。モアナサーフライダーを過ぎた辺りで、サプライズ。オフィシャルアンバサダーの“まゆゆ”こと渡辺麻友さんとハイタッチ! ラッキー!
ホノルルマラソンの最も感動する私的ポイントは、16㎞過ぎの海に向かって走るときに真正面から朝日が昇るあの瞬間。ところが、ダイヤモンドヘッドを上り始めたときに右手から朝日が昇り始めてしまった。ああ、間に合わない。案の定、そのポイントに到達したときには空がだいぶ明るかった。それでも、朝日に照らされたオレンジ色の空間で走る何とも言えない感覚は心地良かった。
ハイウェーに上ったときには、もう脚は売り切れ寸前。ここからハーフ以上の距離があるのに、やっていけるか本気で心配になった。それでも、すれ違うランナーを見て気を紛らわし、4時間台で走るだろう編集長を探した(それがなかなか見つからなかった。その理由は本誌3、4月号の編集長連載をご覧ください)。
多くのランナーがつらいと口にし、私も過去に苦しめられたハワイカイの周回3㎞。今回も地獄を見るだろうと覚悟していたが、なんのその。以前よりチョコレートや果物を差し出してくださる私設エイドが本当に増え、ほぼすべてに手を伸ばし(!)、豪邸エリアなので沿道で応援してくれる大型犬も多くて、こちらもほぼすべてのわんちゃんをなでてパワーをもらった。
帰りのハイウェーでも、これからハワイカイに向かうランナーを見ながら走った。侍姿のランナー、おそろいの仮装をしているグループ…いろいろな人が走っているなと思ったら、見覚えのある顔が。行きの飛行機で隣になり、会話を交わした方だった。思わず、「飛行機で隣だった…」まで話すと、「あぁ!」と言って手を差し出してくれた。「頑張りましょう!」とがっちり握手。ホノルルを走らなければ、お会いしなかった方とランニングを通じてこうやって元気をもらえる――。なんだか不思議だけれど、素敵なご縁だ。
フィニッシュタイムは、5時間46分10秒。過去のフルマラソン12レース中、3番目に悪いタイムだった。それでも、私にとっては過去最高の会心レースで、ゴール時には思わず両手でガッツポーズが出たほどだった。それは、過去最高にホノルルマラソンを楽しめたからだ。
最後のダイヤモンドヘッドでも、げっそりのランナーが多い中、バンドに手を振ってこたえる余裕があり、頂点からは駆け下り、最後の直線も駆け抜けられた。何より、沿道やボランティアの人と触れ合い、その人たちにちゃんとお礼を伝えられる心の余裕が終始もてたことが誇らしかった。そして、そんなおおらかな気持ちで6時間弱を走り通せたことが、何よりうれしかった。
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