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2017-07-03

ホームで連敗ストップ! 北海道コンサドーレ札幌・四方田修平の 「サッカーの楽しみ方」

6連敗中だった北海道コンサドーレ札幌は、7月1日の17節・清水エスパルス戦で7試合ぶりの勝利を挙げ、J2降格圏から抜け出しました。
今季3勝を挙げていたホームで4勝目。「ホームで強い札幌」が復活するのでしょうか?
同クラブを率いる四方田修平・監督は、サッカークリニック2月号(発売中)のインタビューに応えてくれていました。
今日は四方田監督が語ってくれた指導理念を振り返ってみましょう。インタビューの一部を紹介します。

我慢強さが求められる
アカデミーでの指導

――1999年のコンサドーレ札幌で岡田武史・監督の在任中はトップチームのコーチでしたが、岡田監督が退任してからはアカデミーでの指導に転身されました。

四方田 岡田さんが退任されるタイミングでクラブのほうから「U-18のコーチとして残って仕事をしないか?」と話をもらったのです。もともとは学校の先生になって中・高生などの選手を指導したい考えを持っていましたから、喜んで引き受けました。

――トップチームでの指導からアカデミーでの指導へ移りました。手法や意識面など、切り替えた部分などはありましたか?

四方田 技術的にもメンタル的にもおおよそ完成されたプロ選手よりも変化の大きな年代の選手に指導をすることになりました。ですから、より我慢強くならなければいけないですし、基本をもっと大事にしなければいけません。そして、サッカーだけではなく、人間性の部分についても育んでいかなければなりませんから、多くの部分で「使い分け」をしたつもりです。
 ただし、2015年シーズンの途中から再びトップチームを指導するようになり、「アカデミーではもっとこうしていれば良かったなあ……」と思うようなことはあります。「もっと我慢が必要だったのかも……」、「もっとあの部分を厳しく指摘すれば良かった」といったように。これは現在、札幌のトップチームにいる選手について、という意味ではなく、自分の中での一般論ですけれど。

――「育成型クラブ」と評される札幌のアカデミーは、ビッグクラブなどと比べてトップチームの強化につながる部分が大きいと思います。そうした現状を考えると、四方田監督が他クラブのアカデミーで指導した場合、その指導法に違いが生まれた可能性はあったと思いますか?

四方田 いえ、どのクラブのアカデミーを指導したとしても、私のやり方が変わることはないと思います。どの規模のクラブにとっても、アカデミーにおける指導の重みは不変だと考えています。トップチームに選手を輩出するのは、アカデミーの役割としては大事なことなのかもしれませんが、それ以上に、「預かった選手全員の将来に触れている」という重大さのほうが私の中では重いものとして受け止めています。

――そうして指導キャリアを重ねてきた四方田監督ですが、変わらずに抱き続けている指導哲学のようなものはありますか?

四方田 「選手が自分で判断してプレーをする」。この部分は常に大事にしたいと考えています。私もサッカーが好きですし、だからこそサッカーにずっと携われる進路を選んだわけです。サッカーは楽しいものだから私もそうした選択をしたわけで、やはりサッカーは選手にとって楽しいものであってほしいのです。サッカーは「やらされる」のではなく「やる」ものです。他人に決められたプレーをしなければいけない環境や状況だとつまらないですし、見ている人も面白くありません。
 もちろん、チームとしてプレーしなければいけないスポーツですから、規律などが大事であることは間違いありません。しかし、根底となる部分では選手一人ひとりの判断や個性を尊重したいですし、大切にしたいという気持ちはずっと持っています。

――そうした部分は指導者になられた当初から一貫して持っていたのでしょうか?

四方田 そうした意識は常に心の中にはあったと思うのですが、私が若いときはどうしても「自分が指導したことを選手に言い聞かせたい」という気持ちもどこかにありました。「自分がこの選手をこう変えた」、「自分がこういうチームをつくり上げた」という部分を見せたい気持ちも少しはあって、選手に自分の指導を押しつけていたこともあったのかなと、今振り返ると思うようなところはありますね。

勝利を目指しつつ、
自分を表現してほしい

――アカデミーでのキャリアがトップチームでの指導に活かされている部分はありますか?

四方田 現在の札幌のトップチームに活きている部分、という点に限定して言えば、アカデミーからトップに昇格した選手についてはおおよその性格を知っているというのはあります。そしてこれは私のほうの話になるのですが、私がトップチームの監督になったのは2015年シーズンの途中のことでした。それにもかかわらず、大きな違和感なく仕事をスタートさせることができたのは、アカデミー時代から接していた選手が多かったからだと思うのです。私がそうであったように、アカデミー出身の選手たちも私の性格や志向しているサッカーについても知ってくれていたでしょうから、私にとってはトップチームを指揮する初めての経験でしたが、スムーズなスタートを切ることができました。

――シビアなトップチームで指導を重ねる中で、先ほども話してもらった指導哲学の部分に変化のようなものが生まれた部分もあるのでしょうか?

四方田 いいえ。今のところその部分はまったく変わっていません。これからも変わらないと思います。選手が自分の判断でプレーをすることで、プレーしている選手本人も見ている人も、結果的にワクワクして熱くなってくる、そういうサッカーをやっていきたいと思い続けています。
 トップチームのサッカーはシビアに結果が求められると同時に、見ている人、応援をしてくれている人たちを楽しませるものでなければなりません。そうした観点からも選手が自分で、自分たちでプレーを判断していくゲームを目指していく必要があると思うのです。もちろん、勝つためにやっているわけですから、「勝利を目指す」という部分は大前提として持たなければいけません。しかし、勝利することに加えて「何を表現していけるか」、「何を見せていけるのか」という部分もしっかり意識してやっていかなければいけないと思っています。

――四方田監督自身はサッカーを楽しめていますか?

四方田 トレーニングや試合をしているときは正直、「楽しい」とはあまり感じていません。苦しい気持ちのほうがやはり強いと思います。監督を仕事としてやっている以上は、どうしてもそうなると割り切っています。アカデミーの監督からトップチームの監督へと立場が変わったことで、「勝敗」という結果のところはよりシビアに見られるようになっているでしょうし、自分でも見るようになっていますから。
 それでも、「サッカーはやっぱり楽しいな」と思うタイミングは随所にありますよ。例えば、試合に勝ったときには、勝利に向けて必死で準備してきた1週間の重圧から一時的に開放される達成感を味わうことができます。
 しかし、やはり私は指導者です。勝利はもちろんうれしいですが、日々のトレーニングの中で選手たちが前向きにメニューに取り組んでくれている様子を見ているときは、達成感というものとは少し違って、指導者として最も充実した気持ちになれるのです。仮に連敗中だったとしても、選手たちのそうした姿を見ることができれば、私は気持ちを切らせることなく、強い意志を持ってサッカーに取り組んでいけます。                                   

(取材・構成/斉藤宏則、写真/大橋泰之)

昨シーズンまで、J2で3年連続となる二桁ゴールをスコアしたFWの都倉賢。今シーズンもJ1クラブ相手に価値あるゴールを何度も演出している

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