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2026-06-09

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第38回「号泣」その4

平成22年名古屋場所の表彰式。優勝した白鵬への天皇賜盃の授与はなし。白鵬はこの事態に、目を潤ませながら優勝旗を受け取った

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勝って泣き、また負けて泣く。
平成25年秋場所、松鳳山や碧山が横綱日馬富士から金星を挙げ、号泣した場面がありました。
最近は、泣きたくてもなかなか素直に泣けない鉄仮面人間が増えていますが、力士たちはまだまだ心が純なんでしょうか。
過去にも実にさまざまな場面で、多くの力士たちが感情を抑えきれずに大泣きしています。
今回はそんな涙にまつわるエピソードです。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

賜盃のない悔しさ

土俵上では敵なしだった白鵬も意外に涙もろい。

アニキのように慕っていた元幕内龍皇の断髪式で、「龍皇関がいなかったら、いまの自分はない」と言って泣いているが、観衆の前で悔し涙をこぼしたのは後にも先にもこれ一回しかない。

平成22(2010)年名古屋場所は、野球賭博事件のあおりを受けて天皇賜盃やその他の表彰もすべて辞退し、優勝力士に贈られるのは表彰状と優勝旗だけで、NHKの中継まで中止という異例づくめの場所だった。

この前代未聞の異常な雰囲気の中、白鵬は前半から気迫あふれる相撲で第一人者ぶりを発揮。3場所連続の全勝で連勝記録を「47」まで伸ばし、14日目に早々と15回目の優勝を決めた。この連勝記録、双葉山の記録にあと6に迫る63まで伸びることになる。この優勝を決めた直後も、白鵬は、

「やっぱりいつもの優勝とは違いますね。やることはやったという感じですけど、もらえるもの(賜盃)はもらえませんから。もしこれが初優勝の人だったら、どんな気持ちがしたでしょうか。それを考えると寂しい」

と賜盃に対するこだわりを見せたが、千秋楽の表彰式ではその思いがさらにエスカレート。

「国歌を聞いているうちに改めて天皇賜盃がないと思い、悔しくなった」

と涙をこぼし、そのあとの土俵下での優勝インタビューでも、

「この国の横綱として、力士代表として、天皇賜盃だけは頂きたかった」

と声を振り絞り、再び目を真っ赤にした。これだけ優勝に対して強い思いを抱いているから、優勝回数も伸びたのだろう。白鵬の強さの秘密をかいま見せた涙だった。

月刊『相撲』平成25年12月号掲載

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