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2026-06-16

【アメフト】大学スターQBはオンライン賭博常習者、NCAAは「永久追放」、裁判所は「出場OK」、そしてNFL転進へ

オンライン賭博常習が発覚し、転校したばかりのテキサス工科大を去って、NFLへの転進を明らかにしたQBブレンダン・ソーズビー=Getty Images

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2026年6月、米国のカレッジフットボールが、激震に見舞われた。オンライン賭博の常習者と判明した、あるスターQBに対し、NCAA(全米大学体育協会)は、永久追放処分を適用。QB側の訴えで裁判となり、地元の裁判所から、今季の試合出場を認める驚愕の法的判断がなされた。そして他の有力カンファレンスや大学から猛反発が起きた。結果として、このQBは、NFLサプリメンタル(補足)ドラフトへのエントリーを申請することになった。

QBは、テキサス工科大のブレンダン・ソーズビー。2024年1月生まれの22歳。191センチ、107キロの頑健な身体で、強肩とパス能力を備え、運動能力も高い。

カレッジ転校生QBの中では全米No.1評価
オンライン賭博常習が発覚し、転校したばかりのテキサス工科大を去って、NFLへの転進を明らかにしたQBブレンダン・ソーズビー。シンシナティ大時代は優れた成績を残していた=Getty Images


インディアナ大2年時の2023年にブレークし、翌年にシンシナティ大へ転校。過去2シーズンは連続でパス2800ヤードを超え、昨季は27TD(タッチダウン)で5INT(インターセプト)という好成績だった。昨年まで4シーズンでパス7208ヤード、60TD・18INT、ランでも1295ヤード22TDを記録した。


今オフに、テキサス工科大に転校。2026年のNIL報酬は600万ドル(約9億6千万円)で、全額が保証されていた。米スポーツ専門局ESPNは、今オフのカレッジ転校生QBの中では全米No.1と評価しており、2026年シーズンの結果が良好なら、2027年NFLドラフトの1巡上位指名が予想されていた。

アメリカンフットボール・マガジン編集部が4月に発行した「NFLドラフト候補名鑑」の中でも、来季ドラフト上位指名の筆頭候補として、名前を挙げていた。

4年間で9000件の賭博、自チームも対象にしていた
オンライン賭博常習が発覚し、転校したばかりのテキサス工科大を去って、NFLへの転進を明らかにしたQBブレンダン・ソーズビー。シンシナティ大時代は優れた成績を残していた=Getty Images


バラ色の未来が確約されていたように見えたソーズビーの暗黒面が暴露されたのは、今年4月。ちょうどNFLドラフトの時期だった。オンライン賭博の常習者であることが発覚したのだ。

本人が認めた、過去4年間で総額9万ドルという金額もさることながら、9000回以上という数が異常だった。インディアナ大時代に、自チームの試合に対して少なくとも40件の賭けを行っていたという。

ソーズビーは、NCAAから、アメフトだけではなく全スポーツにおける永久出場停止処分を受けた。NCAAの規定では、自身のチームや所属する大学の他のスポーツチームを対象に賭けを行った選手は、大学スポーツ全般への参加を認めないことになっていた。

NFLのスーパースター、QBパトリック・マホームズ(カンザスシティ・チーフス)を輩出した強豪テキサス工科大は、大きく揺れた。

テキサスの裁判所が「永久追放差し止め」判決
Big12の強豪テキサス工科大。ハイパーオフェンスが売り物で、パトリック・マホームズを輩出した


ソースビーは、この事案がギャンブル依存症によって引き起こされたとして、アリゾナ州のギャンブル依存症リハビリ施設に入所し、5週間にわたって入院治療を受けた。同時に、過去にNCAAとの訴訟を経験した弁護士や、テキサス州下院議長を擁する強力な弁護団を結成して、永久追放の処分取り消しを求めて訴訟を起こした。

弁護団は、NCAAが、大学競技がスポーツ賭博の対象となっていることを容認して、賭博企業との関係を築いていたことが、本件の主因であり、ソーズビーのギャンブル依存症や不安障害といった精神的な健康状態を考慮すべきだったと主張した。

6月8日、テキサス州のラボック郡地方裁判所が出した仮処分命令は驚くべきものだった。ソーズビー側の主張をほぼ全面的に認め、2026年シーズンは、開幕から2試合の欠場のみで、第3戦からの出場を容認したのだ。

NCAAは「学生アスリートのメンタルヘルス支援に尽力しているが、自身の競技への賭けなど、大学スポーツを欺き、競技の公正性を脅かす行為に対しては、引き続き断固として対抗していく」と主張し、控訴した。

他大学が猛反発、テキサス工科大との試合ボイコットも
Pac12から移籍した大学も数多く含む強豪カンファレンスBig12。テキサス工科大は2025年にカンファレンス優勝した


しかし事態を急展開させたのは、他大学の猛反発だった。ジョージア大とネブラスカ大の体育局は、今後、全スポーツにおいてテキサス工科大との試合を組まないことを公言した。ミシガン大は、テキサス工科大とのバレーボールの試合をキャンセルした。ミシガン大の所属するBigTEN(ビッグテン)カンファレンスは、テキサス工科大との全スポーツでの試合を、カンファレンス全体として拒否することについて協議すると報道された。

何よりも、テキサス工科大の所属する、Big12(ビッグトゥエルブ)カンファレンスの反応が大きかった。この問題を巡って今週中に、テキサス工科大以外の15大学の体育局長がBig 12コミッショナーを交えてオンラインで会議を行うことになった。

仮にこの場で、テキサス工科大との試合をボイコットする決定が為されれば、同大にとって致命的だった。

この間、テキサス工科大は「大学やフットボールチームではなく、1人のアスリートの救済を求めたものだ」と弁明し続けたが、空しかった。

テキサス工科大有名OBのソニー・ダイクスは、「カレッジフットボールにとって最悪の日」と表現した。現在はテキサスクリスチャン大フットボールチームHC(ヘッドコーチ)だが、テキサス工科大野球チームの出身だった。

ダイクスは「大学フットボールを指導すべき大人たちや人々が、実際には何の指導もしていないというのは悲しいことだ。本当に残念なことだ。誰もが自分の利益ばかりを優先している。カレッジフットボールにとって何が正しいかを考えている人は誰もいない」と語っていた。

ソーズビー、NFL補足ドラフトへ転進
「ソーズビーが4月のドラフトで指名が可能だったら1巡だった可能性がある」と某チーム関係者は語る=Getty Images


現地6月15日。ソーズビー側は「カレッジフットボールからの撤退」を決断した。NCAAに対する訴訟を取り下げることにした。裁判所による、永久追放処分の差し止めが失効し、彼は正式に出場資格を失うことになり、同時にNFL補足ドラフトへの参加資格を得ることになった。

テキサス工科大学のコーディ・キャンベル理事長は「ソーズビーとテキサス工科大学は、法的に極めて強固かつ正当な立場に立っている。しかし、NFLの補足ドラフトへの参加資格を得るための申請期限は6月22日で、この日までに係争中の様々な法的紛争をすべて解決し、彼の参加資格を確保する現実的な手段はない。これは、ソーズビーと彼の将来、そしてチームメートや本学にとって、唯一実行可能かつ公正な道である」と述べた。

キャンベル理事長はまた、テキサス工科大学が、ソーズビーとの契約に基づき支払われたNIL報酬の返還を求めないことも明らかにした。

NFL補足ドラフトとは?

NFLでは2023年以来、補足ドラフトは開催されていない。実際に選手が指名されたのは、2019年にアリゾナ・カージナルスが5巡でDBジェイレン・トンプソン(ワシントン州立大)を獲得したのが最後だ

補足ドラフトで指名された最後のQBは、2011年のテレル・プライヤー(オハイオ州立大)で、オークランド・レイダース(当時)が、3巡指名権を行使して獲得した。プライヤーはQBとWRで一定の活躍を見せた。

2026年の補足ドラフトを実施するには、リーグがソーズビーの申請を承認する必要があり、今年の夏後半のどこかの時期に行われることになる。

補足ドラフトの仕組みは入札制だ。チームは、欲しい選手がいた場合、「1巡」「2巡」などの指名順位を明示しコミッショナーに提出する。指名が競合した場合は、指名順位が高い方が優先される。同じ指名順位であれば、前年度成績が下位のチームを優先とした加重抽選に基づき、獲得チームが決まる。

選手を獲得したチームは、翌年のドラフトで同順位の指名権を放棄することになる

補足ドラフトが開催されたとしても、どのチームも入札を提出する義務はない。もし入札が1チームもなければ、ソーズビーはドラフト外フリーエージェントとなり、どのチームとも自由に契約できるようになる。

1980年代から90年代にかけては、補足ドラフトの利用は活発だった。QBではバーニー・コーザー、スティーブ・ウォルシュ、ティム・ローゼンバックなどが、1巡指名でNFL入りしている。

「1巡に値する才能」ソーズビー指名チームは現れるのか
オンライン賭博常習が発覚し、転校したばかりのテキサス工科大を去って、NFLへの転進を明らかにしたQBブレンダン・ソーズビー。シンシナティ大時代は優れた成績を残していた=Getty Images


ESPNのジェレミー・ファウラーによれば、ソーズビーは、「各チームにとってかなりの価値を持つ。ここ数週間、複数のチーム幹部が、彼が補足ドラフトで2巡指名に値する選手という点で一致している」という。あるAFCのチームの幹部は「仮に今年4月の通常ドラフトで指名可能だったなら、ソーズビーは1巡後半で指名されていただろうと予測できた」という。

別のNFCチームの幹部は「あらゆるパスを投げ分けられる、非常に優れたパス能力の持ち主だ。体格が良く、運動能力も高い。プレイブックに縛られず、ショートヤードやゴールラインの状況で、パスでもランでTDを決められる。ハイライトシーンも多い。もう少し安定感があれば理想的だが、間違いなく1巡指名に値する才能だ」と語ったという。

ESPNによれば、カージナルスが最も有力な候補となるという。ベテランのジャコビー・ブリセットとガードナー・ミンシュー、4月のドラフトで3巡指名のルーキー、カーソン・ベックしかいないからだ。ブリセットとミンシューは、過去、一定の成績を残して来たが、チームの勝利には結びついていない。

ニューヨーク・ジェッツも候補となる。トレードで獲得したベテランのジーノ・スミスを先発起用する意向で、今ドラフト4巡指名のケイド・クラブニクも擁しているが、将来性としてはソーズビーの方がはるかに期待が持てる。

マイアミ・ドルフィンズも候補チームだ。マリク・ウィリスと2年契約を結んだが、成功するかは未知数な部分もある。

12月で43歳となり、今季限りで引退を明らかにしているアーロン・ロジャースがエースQB候補のピッツバーグ・スティーラーズ、アキレス腱断裂からの復帰を目指すダニエル・ジョーンズを抱えるインディアナポリス・コルツなども可能性を持っている。

ただし、ソーズビーの特異なケースは、単なるタレント評価の問題ではない。

裁判所の法的な判断はともかく、NCAAフットボールがイジェクトした選手を、NFLがそのまま、プレーさせるとした場合。本人のギャンブル依存症からの立ち直り支援は重要だとしても、チームとして道義的、社会的な責任をどうするかという問題は残ることになるからだ。

アメリカンフットボールマガジン編集部は、この事案について注視していく。

【小座野容斉】

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